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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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第四章 思惑との邂逅 プロローグ

新章スタートです。

引き続き、宜しくお願いします。まずはプロローグ!


 ―マラーナ王国

 国王が崩御した。それは王都の界隈では密かに囁かれていたものだ。ここ最近の様子はほとんど見ることも聞くこともなかった。それに加え第一王女の死去の件もあって、何かが王家に起きているのではないかと。


「ただまぁ、あの王家だからな。後ろ暗いことなんていくらでも出て来るだろう」

「へー、いいんですか? そういう事言っても」

「平気だよ。以前なら、それこそ衛兵らに連行されることもあったが、今はそういうことがなくなったからよ」


 宰相が代わってからというもの、王都内で生きる平民たちは目に見えて生活が楽になった。奴隷扱いだった者たちにも平民としての権利が与えられて、自ら職業を選択できるようにもなった。ただ、元奴隷ということで忌避されることは少なくない。

 そこで宰相が行ったのは俸給制度だった。元奴隷を雇った場合には、恩恵が与えられる。そうしたことで目に見えて元奴隷たちを雇う場所は増えていった。あくまで表面的に。結果として、平民たちから反感が起きて元奴隷と平民との軋轢は深まってしまう。結局身分は変わっても、待遇はさほど変化がない。


「それはいいことなんですか?」

「前よりはマシというだけだな」


 そういって笑う男。情報収集のために入り込んだマラーナ王都。何となく話が弾んだので、色々と聞き出していくと本当に色々なことを話してくれる。それはこの男だけではない。聞けば誰もが口を開く。隠すべきことなどないというように。今この場でも笑い声が上がり、先日国王が亡くなったというのが嘘のようだ。彼ら曰く、「偉い人がどうなろうと何も思わない」ということらしい。


「国王なのにですか?」

「病気になってたならいずれそうなるんじゃないか? そんな奴を治そうなんていうお人よしな医者なんてこの国にはいないって。治せなかったら罰せられるんだろ? そんな危ない道を通るなんて馬鹿のやることだ。だから医者なんてこの国にはほとんどいないんだよ」

「……そう、なのですか」


 国王という地位にある者を治せなかったら罰せられる。不治の病であろうとそこは重要ではない。自国の医者、特に特師医という立場にある者たちならば最後まで力を尽くすはずだ。その結果がどうなろうと、罪に問われることはない。当たり前のことだ。しかし、マラーナではそういう話ではないのだろう。王族に呼ばれて好き好んでいく医者はいないらしい。連行されれば、それは最期通告のようなものなのだから。


「お前さん、他国から来たのか?」

「はい。ルベリアから来ました」

「……そっか。あそこは良い国だって聞くからな、悪いことは言わねぇからさっさと帰った方が身の為だ」

「貴方方はどうしてこの国に留まっているんですか?」


 あまりこの国に未練があるようには見えない。未来がないと分かっている場所にいながらも、どうしてここを去らないのか。


「そりゃま……ここが俺の国だからな」

「え?」

「娘たちは外に出した。だがその瞬間から、親子ではなくなる。この国はな、平民が他国に自由に行くことは出来ねぇんだよ。他人にならないとならない」


 他人に成りすます。どこか悲痛な面持ちで語ったその内容に、思わず言葉を失った。同時に、どうしてそこまでして人を縛りつけるのかと、その在るべき形に疑問を持つ。このままではどこまでいっても、この国は衰退する道しかない。人が豊かでないならば、国として維持など出来ないはずだ。この国の宰相とて、それを承知のはず。奴隷制度を廃したのならば、行動の自由だって認めてもいいのではないのか。それとも、それが出来ない理由があるのだろうか。


「納得できませんが、貴方方は既に諦めているのですよね」

「そういうことだ。無駄なことはしない質なんでな。どうでもいいのさ。そのまま滅びてくれれば一番だがな。あははは」

「旦那ー、またそういうことを言って。本気に取られたらどうするんですかい」

「俺はいつだって本気さ」

「あんたはいつだってそうなんだから」


 笑いながら不吉なことを口にする。周囲に気を付けて話をしているわけではないので、周囲にも聞こえていた。この男がそういうことを口にするのは日常なのか、周囲にいる者たちもどこか呆れ顔だ。

 誰も彼もが受け入れている。否、諦めているのだろう。この先どう転ぼうとも、自分たちの状況が改善されることはない。国王が亡くなったことで、流れが更に動く。それを無意識に感じているのかもしれない。


「いずれにしても、王宮を探る必要はありそうですね。それと一度報告をした方がいい、ですか」


 王都での情報収集はここまで。ここで得た情報をまず伝える。その後で潜った方がいい。外から見た限りでは、王宮内に潜るのはさほど難しくない。難しいのは、宰相近辺だろう。


「それにしても、どこまでが真実なんでしょうかね。()()は」


 まだ笑いながら騒いでいる男たちを見ながら、そっとその場を去る。彼が去った後、酒場は先ほどの空気とは打って変わって鎮まり返った。


「……団長、これでいいんですか?」

「あぁ。あれがルベリアの諜報だとすればだがな」

「その確証はないでしょうに」

「それでもいいさ。いずれにしろ、他国の王族がここに来るのは間違いない。繋ぎを取っておいて、情報を流すくらいしか今の俺らには出来んだろう」

「騎士団長……」

「そう呼ぶな。俺はもう団長じゃない。ただの飲んだくれだ」



マラーナ側で新キャラ登場ですが、名前は後ほど……。


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