15話
王都帰還とエリナ登場です。お待たせしました!
今週はどこも寒くなりそうですね。。。皆様もどうか温かくしてお過ごしください(*- -)(*_ _)ペコリ
その翌日に、アルヴィスは王城へと戻ることが出来た。まだ夕方にかかる前だったこともあって、そのまま執務室へと戻る。そしてすぐに本棚からファイルを一冊取り出した。
「アルヴィス様、まずは先にお休みになってください」
「あぁ」
答えつつもアルヴィスの意識がそちらに向くことはない。そのままファイルを広げて、中を確認する。それは世界全体を現した地図だった。既に過去のものとなっており、現在の形とはだいぶ変わっているものだ。現在の世界地図は、機密扱いともなっているので書庫の奥にあり、アルヴィスであっても持ち出すことは出来ない。しかし、今のアルヴィスが知りたいのは過去の情報。機密扱いの地図ではなかった。
「そのようなものをどうされるのです? おおよそルベリア建国時のものですよね?」
ルベリア王国が建国された当初の地図。国の大きさとしては、今よりも少しだけ小さかった。同じく隣国のマラーナも今よりも小さい。各所に国の領土ではない箇所が点在している。アルヴィスは己の頭の中にある情報を引っ張りだした。
「恐らくは……ここ、か」
「?」
アルヴィスの目線が1つの場所を指していた。それは、現在マラーナ王国内にある森だ。王都よりもさほど離れていない場所にある。現在の地図では詳細は描かれていないが、こちらの地図には小さな湖と大きな穴が描かれていた。
「ここがどうかされましたか? 今は、マラーナ王家所有の場所だったはずですが」
「そうだ」
「……まさかとは思いますが、ここに行きたいとでもいうわけではありませんよね?」
エドワルドの声色が不穏なものに変わったことで、アルヴィスは意識をエドワルドへと戻した。その表情は強張っている。それが不安だというエドワルドの心境を物語っていた。アルヴィスはフッと笑いを漏らす。
「そんな顔をしなくていい。それが出来ないことくらいは俺だって承知の上だ」
「ではなぜそのようなことを確認しておられるのですか?」
「確認しておきたかった。ただそれだけだよ」
そこへコンコンと扉を叩く音が届いた。エドワルドが動くのを見て、アルヴィスは再び地図へと視線を落とす。
「……だがここに何かがあるのは間違いなさそうだ」
墓所でルシオラが視せてくれたもの。それが真実だとアルヴィスは確信に近いものを持っていた。何故かは説明できない。ただそうだと知っているのだ。
そっと己の胸の上に手を置く。
「この感覚が警告だとしても、今は動くことが出来ない。だがきっとそれは近いのだろうな」
マラーナとの国境付近に注意を促すことと、あちらのより詳しい状況を知ること。その為には、ある程度近衛隊へも共有が必要だが、納得させるだけの情報がない。
「あいつに頼むか、不本意だが」
「アルヴィス様」
「エド?」
横から名を呼ばれて顔を動かすと、思ったより低い位置にあった深い青色の瞳が目に入った。それはアルヴィスの最愛の女性のものだ。それに驚き目を見開く。
「エ、リナ?」
アルヴィスが名を呼ぶのとほぼ同時にエリナがアルヴィスへと抱き着いてきた。未だに驚きが勝っているものの、しっかりと手を回してくるその身体をアルヴィスは抱き締め返す。
「……」
「……エリナ」
何も声を発しないエリナに何かあったのかと不安が過る。顔色を窺おうと身体を離そうとするが、エリナは一層力を込めてしまう。仕方なくアルヴィスは、エドワルドに視線だけで指示を送った。エドワルドはエリナと共に来ていたサラを促して、二人で執務室を出ていく。
二人きりとなった執務室で、アルヴィスはもう一度エリナに声を掛けた。
「何かあったのか?」
「……」
「エリナ」
「……いたかったのです」
小さな声で囁かれた言葉に、アルヴィスは何と返すべきか一瞬戸惑った。出発する時もそうだったが、エリナを不安にさせてしまっていたらしい。アルヴィスはエリナの膝裏に手を入れると、エリナを抱き上げた。
「きゃ」
「これでエリナの顔が見られる」
「アルヴィスさま」
ほんのり頬を赤く染め、エリナはアルヴィスの首に腕を回す。抱き上げた身体を寄せながらアルヴィスもエリナの首元に顔を埋めた。
「寂しい思いをさせてすまなかった。ただいま、エリナ」
「はい。お帰りなさいませ、アルヴィス様」
同時に顔を離したアルヴィスとエリナは、そのまま唇を重ねる。もう一度顔を離した時、漸くエリナは笑みを浮かべてくれた。




