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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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12話

今年最後となる投稿になります。

本年も作品を読んでいただき、ありがとうございました。

来年もよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ


 遠征も最終日に差し掛かった。本来の近衛隊が行う遠征自体は、既に終わっている。あとはアルヴィスの用事を残すのみ。

 向かう先は、王家の墓所。いずれにしても護衛として近衛隊が来ることになるので、遠征の行き先に追加することについても何も言われることはなかった。むしろ別途予定を組み直すべきという声があったほどだ。だが、そうそう長いこと宮を空けることをアルヴィスは是としなかった。それはエリナを一人にすることと同義だから。


「ここか……」


 木々の隙間から丸いドームのような建物が見えたかと思うと、その奥には神殿が建てられている。大聖堂のそれよりは小さい。建て直しなどは一切されていないはずのそこは、不思議と朽ちることなくその姿を保てているという。ルベリアの建国時には既にあったらしく、それ以上の情報は伝えられていなかった。それが意図的になのか、長い年月の果てに捨て置かれてしまったからなのかはわかっていない。

 その周りを囲む石造りの壁へと来ると、アルヴィスは立ち止まった。暖かな風がアルヴィスの頬を撫でていく。


「ここが王家の墓所、ですか」

「あぁ。俺も本物を見るのは久しぶりだ。元々、決められた時でしか訪れることが出来ない場所だからな、俺たちでさえも」 


 アルヴィスたち王家に連なる者でも、たとえそれが国王であってもそれは変わらない。頻繁に来る場所でもなく、生涯に一度来るか来ないかという場所だ。アルヴィスが知っているのは、偶然でしかなかった。()()()()そういう機会があっただけなのだから。

 皆が足を止めて、建物を見上げる。資料で見ていても、ほぼ全員の近衛隊が初めて見るもの。見入ってしまっても仕方がない。


「しかし、アルヴィス様」

「エド?」

「こうも入口が開いたままですと、不用心ではないのでしょうか?」


 エドワルドの指摘はもっともだろう。門が閉じられているわけでもなく、誰かが立っているわけでもない。常に開かれている。これでは誰でも入ることが出来るのではないかと思われても仕方がない。


「試してみるか?」

「え?」


 見た方が早いと、アルヴィスはルークへと視線を向ける。すると、心得たとでもいうようにルークはレックスの肩を押した。


「俺ですか?」

「行ってみればわかる」


 ルークに指名された形となったレックスが、困惑したままで敷地内へと入ろうと一歩足を踏み出した時、レックスは何かにぶつかったように弾き飛ばされてしまった。更には、足を抑えてうずくまってしまう。


「痛てぇ」

「「……」」


 一体何が起きたのか、周囲の誰もがわかっていなかった。否、アルヴィスとルークだけは知っていたのだが。


「アルヴィス様、今のは一体何だったのですか?」

「……ここには王家の者以外立ち入ることは出来ない。それ以外の者が立ち入ろうとすれば、レックスの様になる」


 説明をしながら、アルヴィスは先ほどレックスがぶつかっただろう場所へと手を当てた。だが、アルヴィスの手は何かに当たることなく敷地内へと誘い込まれる。そのまま一歩足を踏み入れれば、阻まれることなく先へと進むことが出来た。


「アルヴィス様っ」


 慌ててエドワルドがアルヴィスへ向かって手を伸ばす。だが、その手はアルヴィスに触れる前に見えない壁に阻まれてしまった。


「エドっ⁉」

「っ……」


 最早反射と言っていい行動だ。アルヴィスが驚き目を見開くが、エドワルドが首を横に振ったことで安堵の息を漏らした。


「エド、それにルーク、近衛隊の皆も暫く待っていてほしい」

「はっ。お気をつけて」

「あぁ」


 彼らに背を向けて足を動き出そうとして、アルヴィスは止まる。そして振り返り、アルヴィスは後ろ側に立っていたジラルドへと声を掛けた。


「ジラルド……お前は付いて来い」

「え……あ、あぁ……はい」


 アルヴィスはその反応を見ることなく、前を向いて歩き始める。名指しされたジラルドは、当人にしては珍しく困惑を隠すことなくあたふたしながらも敷地内へと足を踏み入れた。当然だが、ジラルドが壁に阻まれることはない。


「……アルヴィス、僕が何故」

「お前は俺の従僕だ。エドたちが入れない以上、その補佐として入っても不思議ではないだろう。尤も、お前に期待しているのはそういうことじゃないが」

「じゃあどうして――」


 ジラルドが声を荒げようとしたその瞬間、突風がアルヴィスとジラルドを襲った。と同時に、周囲に重苦しい気配が現れる。


「この空気は……?」


 周りを見渡してみれば、エドワルドたちの姿はもう見えなくなっていた。それほど奥まで歩いてきたわけではない。建物へ向かって真っすぐに進んだだけだ。姿が見えなくなるということは普通に考えてあり得ないことだろう。

 ふと、腕に重さを感じて見てみると、震えたジラルドの手がアルヴィスの腕を掴んでいた。


「ジラルド?」

「こ、怖いわけじゃないっ! ただちょっとこう……近い方がと」


 一応は、この雰囲気が普通ではないという感覚があるらしい。ただ恐れるようなものではないのだが、得体のしれない者に対して抱く恐怖というものは誰でもあるものだと割り切るしかないのだろう。ほんの少しだけ連れてきたことを後悔し始めたアルヴィスだった。



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