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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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閑話 近衛隊と騎士団の長たち


「妃殿下は随分と吹っ切れたみたいだな」

「ですが、あの方をそのまま王都に滞在させるのは些か不安が残ります」

「……廃嫡される以前の様子を見る限りは同意だ」


 ここは近衛隊の詰所。ルークとディン、そして騎士団長のヘクターが今後について議論している最中だ。実は先ほどまでアルヴィスがおり、彼からもたらされた情報がジラルドの今後についてだった。アルヴィスが言うには、エリナはジラルドに対して特に何の感情も抱いていないという。

 ジラルドは既に廃嫡されており、何の権限も持たないただの王家の血を持つ男児だ。生涯幽閉しておいても構わない存在でもある。しかし、それを守られていると見る人間がいることもまた事実。少しばかり風向きが変わりつつある今のルベリア王国内において、ジラルドの処遇はあまり納得できるものではなくなってきているということらしい。


「各令嬢たちからの意見も踏まえて、最終的には王太子殿下の判断にお任せすることとなる」

「あぁ、令嬢側の希望だそうだな」


 ヘクターに頷きつつ、ルークは頭を掻いた。アルヴィスは己の生誕祭において、エリナの懐妊を発表した。その後、貴族へ側妃や愛妾を不要だと通達している。この件について表立って意見をしてくる連中は現時点ではいない。それは事前に開かれたエリナのお茶会の影響に加え、アルヴィスがルシオラの名を出したことも大きい。

 アルヴィスは女神ルシオラの契約者として知れ渡っている。そのルシオラが唯一人を夫君としていたことから、アルヴィスも同じようにただ一人を妻とすると言われれば、大きな声で否定することなど出来ないというのが実情だろう。それに、これを好意的に受け入れているのは女性たちだ。そういったこともあって、最終決定者に国王ではなくアルヴィスを望んでいるということらしい。

 尤も、アルヴィスはあくまで己がそうだというだけであり、一夫多妻制自体を否定しているわけではない。他の貴族たちへそれを強要するつもりはないようだが、同じような考えを持っている者たちにとっては大きな力となるはずだ。


「アルヴィスも無関係じゃないことだ。それは任せるとして……妃殿下の意見を取り入れるか、見習いとして送り込むかだな」

「申し訳ないが、妃殿下の意見では甘いと言わざるを得ないだろう。そもそも、現実を理解させるというのであればだが」


 働かせるという点については同意できる。しかし、その過程が生温いということだ。令嬢たちの意見では現実を知り、どれだけ愚かなことをしたのかをその身で感じて欲しいはず。ジラルドが起こした結果、エリナたちの環境は変わった。良い方向に変わったこともあるが、だとしても許されることではない。


「従僕という形で、殿下に同行させるのはいかがですか?」

「ディン?」

「レオイアドゥール、一体何を言って――」

「元王子殿が何をしていたのかは、聞いたことしか知り得ません。ですが、現在殿下が行っていることをどれだけ行っていたのかと思いまして」


 生まれた頃より王太子となるべく育てられ、立太子してからも何年も経っている。心構えはもちろんのこと、その土台もアルヴィスよりも恵まれた環境にいた。以前、塔でジラルドはアルヴィスに言い放ったらしい。


「あの人はこう殿下に言ったらしいですよ。『いいよな、お前は王太子なんだから』と」

「……なるほど」

「ハスワークが、未だに憤っている件です。殿下はさほど気にされていないらしいですが」

「気にしていないというのもあるが、それ以上に考えることが多くて忘れてるんだろうさ」

「かもしれません」


 それでもアルヴィスを何よりも大事にしているエドワルドからすれば、忘れられない言葉だ。つい我を忘れて口を挟みそうになったが、アルヴィスに制止されたため何も言えなかったと悔しそうに話していた。エドワルドの身分では許されないことだが、それでも何も言わずにはいられなかったと。


「確かにそれは良い考えかもしれんな。あの人に、同じことが出来ると思っている人間はこの王城にはいないだろう」

「それなりに優秀ではあるんだが、苦手なことは放置していた人だからな」


 近衛隊長としてルークは関わりがあった。幼い頃から知っており、その傲慢さもプライドの高さも王族としてならば許容範囲内だ。ただ、人から指摘されるのを嫌う傾向があり、リティーヌと比べられるのと同じくらい、ジラルドにとっての鬼門だった。出来ないならば出来る人間がやればいい。それがジラルドの在り方でもあった。それをとってもアルヴィスとは違うものだ。それが悪いわけではない。時として、ジラルドの在り方が必要となることもあるだろう。任せきりでは困るが。


「己の今の立場と、それによって殿下がどれだけ苦労したのか。それを知ってもらうのも、良い機会かと」

「なるほどな」


 外の現実の前に、己の立ち位置を改めて知れと。確かにジラルドには必要なことかもしれない。許可がされるかどうかは置いておいて、提案として挙げる程度なら構わないだろう。


「俺に異論はない。鍛錬にも来るというのならば、我ら騎士団も助力させてもらおう」

「……今のアルヴィスに本格的な鍛錬はさせていないがな」

「既に殿下ではない相手だ。王太子殿下と同じような扱いをする必要などあるまい?」

「そうかい。まぁそういう点で、こちらからは意見として挙げておくとするか。ディン、午後にでも執務室に向かうと伝えておいてくれ」

「承知しました」



誤字脱字報告ありがとうございます!

前回、多すぎました・・・すみません。。。指摘してくださった皆様、ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

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