14話
前回のが200話だったみたいです(;^ω^)
感想を読んで気づきましたw
#お祝いコメントありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ
ここまでお付き合いいただいて、本当にありがとうございます!!
記念的なものを前回もやったので今回も何か考え中です。
そしてコミカライズ第一巻が重版決定しました!
嬉しい限りです!
この先も頑張りますので、どうかよろしくお願いします!
エリナが主宰したお茶会から暫くして、二度目となるアルヴィスの生誕祭の日を迎えた。
「エリナ体調は大丈夫か?」
「大丈夫です。フォラン特師医からも問題ないとお墨付きを頂いておりますから」
「ならばいいのだが……」
既に支度を終えて控室に来ているアルヴィスとエリナ。前回の国王生誕祭と叙勲式を欠席したこともあって、公的な行事に妃として参加するのは結婚式以来となる。そのこともあって張り切っている様子のエリナだが、安定期に入ったとはいえ大切な身体だ。言葉で「大丈夫」だと聞かされても、どこか不安に感じてしまうのはアルヴィスが男だからなのか。
「クスクス、アルヴィス様は心配性ですね。本当に大丈夫です。それに、辛いと感じたらちゃんと下がりますから」
「……わかった」
「うふふふ」
渋々といった様子で頷いたアルヴィスに、エリナは口元を押さえながら笑う。これは昨日から二人の間で何度もされているやり取りだ。エリナが心配であるアルヴィスと、大丈夫だと言い張るエリナ。普通の女性ならば「しつこい」と糾弾されてもおかしくないのだろうが、エリナはどこか嬉しそうに見える。
「そろそろ怒ってもいいところだと思うんだが」
「怒りませんよ。だって、それだけアルヴィス様が私とこの子のことを想ってくださっている証ですから。私はとても嬉しいのです」
「稀有な女性だな、本当に君は」
「アルヴィス様だって同じです。男性は、女性の仕事だって放置される方も多いと聞きます」
「まぁそういう側面もあるのは知っているが……無理だろ?」
実際、男には何も出来ない。任せるしかないことだ。ただ覚えておかなければならないのは、その仕事は命がけだということ。子どももそうだが、女性だって死に至る可能性がゼロではない。貴族女性で死亡率が少ないのは、万が一の時でも医師に診てもらえるからという理由だ。平民であれば、その確率はもっと上がる。エリナの妊娠が発覚してから、そういった医学書にも目を通すようになったのだが、知らない方が良かったのではないかと時折後悔したくなる。
知ってしまった以上、見て見ぬ振りは出来ない。己が傷つくのならば全く構わないのだが。
「自分の性格が恨めしいとこれほど思ったことはない」
「私もアルヴィス様がお怪我をする度に、不安でその御身の代わりになりたいと何度も思っておりますよ?」
エリナがアルヴィスの顔を覗き込むようにして顔を近づけて来る。アルヴィスが想っていることは、そのままエリナだって同じようなことを想っているのだと。そう言われているらしい。アルヴィスが返せば、同じことがエリナからも返されることだろう。これまで幾度となく行ってきたやり取りに、アルヴィスは苦笑した。
「全く……これではいつもと同じだな」
「ふふふ、そうですね」
そうして二人で笑いながら顔を合わせていると、控室の扉が開かれる。アルヴィスとエリナは扉の方へと身体を向け構えた。すると、そこから現れたのは国王と王妃の二人だ。
「伯父上、それに伯母上」
「待たせてしまったか、すまないな二人とも」
「いいえ俺たちもそれほど待っていませんから」
そうしてアルヴィスの前まで来ると、国王はゴホンと咳払いをする。
「改めてになるが……アルヴィス誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
「お前も22歳か。早いものだな」
「去年から考えると、むしろ遅いようにも感じます」
「昨年は色々とあったから、な……」
あの日から一年が経った。濃すぎる一年だったせいで、一日一日が長く感じられる。アルヴィスからすれば漸く一年といったところだ。
「おめでとうアルヴィス、それにエリナもありがとう。私も随分と二人には迷惑をかけてしまって」
「お気になさらないでください王妃様。そのおかげで今の私たちがいるのですから」
「ありがとうエリナ。それより体調は大丈夫なの?」
「はい。順調だとフォラン特師医から」
「そう、良かった。数か月後が楽しみね」
にこやかに会話をする王妃とエリナの横で、国王はアルヴィスだけに聞こえるように話しかけて来た。
「例の件、余の耳にも入ってきた」
「……」
「お前がそういうつもりならば余はこれ以上何も言わん」
「伯父上?」
「……女神の逆鱗に触れるような真似はしないということだ。お前も考えたな」
どうやらヴィズダム侯爵から国王へと話が伝わったらしい。つまりは令嬢が父へ報告したということ。その上で引き下がることを決めたのだろう。
「何もしないという事は、後押しはしないというだけですか?」
「そうだ。側妃が必要だという考えは変わらん。だが、二人が本気だという事は理解した。お前が相当頑固だということもな」
「……父から何か話でもありましたか?」
突然の容認。疑ってしまうのは無理もないと思う。この件について、アルヴィスは両親や兄へ伝えたことはない。しかし、国王に対して意見をいうというのならば弟である父が何かしら動いた可能性もある。そう考えて尋ねたのだが、国王は首を横に振った。
「ラクウェルからは特に何も言ってこん。そもそもアルヴィス、何も伝えてないのではないか?」
「はい」
「であろうな。お前が一度としてラクウェルを頼ったことはないと聞いておる。一度として、だ」
「……」
「使えるものは使え。それが父や兄だとしてもだ。今回のようにな」
「肝に、銘じます」
「うむ」
そう告げると国王はエリナと話す王妃へと視線を向ける。アルヴィスもつられるようにそちらへと身体を向けた。すると国王はどこか遠くを見るかのように呟く。
「今回は余の負けだ。引き下がろう。王妃にも伝えておる。ただ……キュリアンヌはわからんがな」
「キュリアンヌ妃、ですか?」
「何やら思うところがあるやもしれん。そろそろリティーヌの嫁ぎ先も決めなけばならんしな」
「そう、ですか」
国王がリティーヌの嫁ぎ先を決める。それはそれで一波乱がありそうな予感だ。素直に受け入れるとは思えない。
「リティの嫁ぎ先……」
「お前が近衛にいるままならば、そういう道もあったのかもしれん」
「確かに俺ならば王家にとって都合はいいかもしれませんが、外聞的には宜しくありませんでしたね。王女が降嫁するには身分的に釣り合いません」
「爵位ならばどうとでもなる。お前が嫌う方法だろうが……」
リティーヌが誰か不本意な相手に嫁ぐというのならば、たとえ嫌な手段だとしてもアルヴィスとて受け入れただろう。それでリティーヌが生き生きと好きなことが出来るならば、いくらでも防波堤の役割を果たしていたはずだ。尤も、そのような未来は既に無くなっている。
「何があろうとも、お前はリティーヌの味方をするのだろう?」
「当然です。たとえ相手がキュリアンヌ妃でも、それは変わりません。きっとエリナも同じだと思います」
「そうか」




