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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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閑話 友人のお茶会後で

 

 友人であるエリナが開いたお茶会も終わった後、ハーバラは王太子宮へと招かれていた。エリナが普段過ごすことが多いというサロンに来ると、そこは落ち着いた雰囲気でどことなくエリナの学生寮と雰囲気が似ている。


「本日はお招きありがとうございました、エリナ様。とても楽しかったですわ」

「そう仰ってもらえたなら嬉しいです」

「性懲りもなく絡んできた人もおりましたけれど、それはそれで懐かしかったですもの」

「ハーバラ様ったら」


 クスクスとエリナと笑いあう。こうしてのんびりとした時間を過ごすのは久しぶりだ。最近のハーバラはというと、常に誰かと話をする時には気を張っていることが多かった。その道を選んだのはハーバラ自身。腹の探り合いなどもあるが、令嬢が商売に口を出すだけで「生意気」だの「碌な物がない」だのと、難癖をつけられてきた。

 その点、令嬢相手というのは優しいものだ。とりわけ彼女のような存在は。


「とはいえ、あの方が妃候補に名乗ることを考えていたのには驚きましたけれど……口約束ですらないことを持ち出してくるのは変わっていませんのね」

「えぇ」


 今回のお茶会の趣旨の一つ。それに彼女は見事に引っかかったわけだが、いい加減現実を見た方がいいと思ったのはハーバラだけではないだろう。エリナとアルヴィスの仲の良さをあんな風に見せつけられても尚、間に入れると思う猛者がいるならばもう一度教育をやり直すべきだ。

 複数の妻を持つことは確かに認められてはいる。だが、その前に人として仲が良い夫婦を引き裂くような真似を進んでしようと考えることが間違っているのではないだろうか。アルヴィスが求めているのならばまだしも、望んでいないのならば退くことこそが忠義のはずだ。


「まぁいいですわ。また何かするようならば、私も黙っていませんから」

「ありがとうございます。ハーバラ様も私がお力になれることがあれば、何でも言ってください。頼ってばかりではなくて、私もハーバラ様のお力になりたいですから」


 エリナも本当に変わらない。今回の問題の当事者の一人であり、心穏やかであるはずがないのにハーバラのこともちゃんと気にかけてくれる。こういう人だからこそ、次期王妃として敬おうと思うのだ。

 何かエリナに力を貸してほしいこと。宣伝という意味では学園時代から十分に力を貸してもらっている。それ以外にエリナにお願いしたいことと言えば……。


「ではエリナ様に、一つだけお願いがあるのですが」

「はい、何ですか?」

「……王太子殿下の侍従を務めていらっしゃるハスワーク卿とお話させていただきたいのです」

「え?」


 ほんの少し打算を含めてエリナに告げると、エリナは目を大きく開いて驚いていた。それはそうだろう。アルヴィスの侍従である彼は貴族ではない。ハーバラの商売にも縁はないだろうし、彼とハーバラの接点など一回キリである。そう、アルヴィスが学園を訪問した時の一度だけ。あまりに予想外だったのか、エリナからは暫く反応がなかった。


「驚かせてしまいました?」

「えっと……エドワルド・ハスワーク卿、のことですよね?」

「そうですわ」


 念のためかエリナが再確認をしてくる。困惑しているエリナに、間違いないとハーバラは強く頷いて見せた。


「それはその……そういった意味で」

「驚かれるかもしれませんが、将来をという意味で彼を候補に入れているのは事実です」

「でも、ハスワーク卿は爵位がありませんしその……」

「私にとっては爵位よりも、私のことを認めてくれる殿方という方が大事なのですわ」


 エリナが気にしているのは、ハーバラがランセル侯爵家というルベリアでも高位に分類される貴族家出身者ということだろう。男爵ならともかくとして、伯爵位以上の令嬢の婿として爵位がない男性を迎えるなどと普通は考えない。


「ですが……いえ、わかりました。アルヴィス様にお願いしてみます」

「ありがとうございます!」


 相手は欠片もハーバラのことを意識していない相手。そして恐らく、いや確実に彼は将来を共にする相手を欲してはいない。縁としては貴族に連なるものの、彼自身は貴族の生まれではなく平民だ。それでも王太子の侍従という立場から、彼はいずれ爵位を持たされる可能性が高い。そういう打算的な想いがあるのも違いないのだが、個人的にも彼に興味がある。彼ならばきっとハーバラを裏切るような真似はしない気がするのだ。

 まずは商人としての取引を持ち掛けてみよう。その上で彼はどういう反応をするだろうか。考えるだけでハーバラはワクワクしてきた。まだ会えると決まったわけではないというのにだ。


「ハーバラ様?」

「楽しみですわ」


 学園で会った黒髪黒目の彼を思いだす。アルヴィスと親しそうに会話をしていた彼。ハーバラとはどういった会話をしてくれることだろう。

 エリナはハーバラの様子に困惑していたのだが、そのことにハーバラは気づくことはなかった。




いつも誤字脱字報告ありがとうございます!!


気温の差が激しい毎日ですが、皆様体調にはお気をつけてお過ごしください(*- -)(*_ _)ペコリ

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