閑話 母の真意とは
本日は二話更新です、一話前の方が本編になります(;^ω^)
今回の閑話少しわかりにくいかもしれません。。。
ここは後宮のとある場所。そこには珍しい二人が揃っていた。
「こうして二人だけで水入らずの時間というのは、何年ぶりかしら?」
「そうですね。確かジラルド殿が学園に入られた頃だったかと記憶しております」
「そう、そんなに前だったのね」
相対している二人、それは王妃であるシルヴィと側妃であるキュリアンヌだった。周囲にいる侍女たちも二人の会話は聞こえていない位置まで下がっている。だからこそ、こうして腹を割って話が出来るのだ。
「陛下から聞きました。王女殿下をアルヴィスに嫁がせようとしていると」
「少し風を吹かせたいと思っただけなのです」
「どういう、意味かしら?」
王妃は眉を寄せる。側妃という立場にいてもキュリアンヌは何か自ら行動することなどこれまでなかった。ジラルドが王太子だった頃は、徹底的にリティーヌの姿を表に出さないようにしていたが、それはキュリアンヌ自身も同様だった。彼女は表舞台に立つことを厭い、後宮の中だけが彼女の生活圏だったのだ。
「妃殿下と良好な関係を築ける相手というのであれば、あの子ほどの適任はいないでしょう。かの侯爵家の令嬢よりずっと妃殿下の為に動けます」
「……エリナは筆頭とはいえ公爵家の令嬢。正妃に公爵令嬢で王女殿下を側妃になど通常考えることではないでしょう?」
「私の実家へ養子にしてから嫁がせればよいのです」
キュリアンヌの実家は伯爵家。家格を見れば確かに側妃としては良いかもしれないが、だが現実的ではない。リティーヌの名は、王女として知れ渡っているのだから。
「そうすれば、後宮ではなく王太子殿下の宮で生活することになります。後宮よりよほどあの子は自由になれるはずですから」
「そう思うのならば、何故王女殿下を閉じ込めたままにしておいたの? もっと早くに降嫁させてあげるという選択肢もあったのではなくて?」
「……王女として降嫁することは、あの子の為にはなりません」
王妃にはキュリアンヌが何をしたいのか。その真意が測りかねていた。何を考えているのか。全く変わらない表情からはそれを読み取ることは出来ない。
「私はただ、母として出来ることをするだけです。その結果がどうなろうとも……」
「キュリアンヌ、貴女……」
「一つだけ誤算だったのは、陛下が想像以上に事を急いているということだけです。尤も、それはシルヴィ様のご実家にも言える事ですが」
溜息をつきながら吐き捨てられた言葉にはどこか呆れが滲んでいる。
この時のキュリアンヌは己の考えのその根本が違っていることに、まだ気が付いていなかった。




