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22話

明けましておめでとうございます!

本年もどうかよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ


という事で新年最初の投稿です!


 

 あの日、アルヴィスがトーグをこの手に掛けてから一月以上が経った。アルヴィスが目を覚ますとエリナが魘されていたのも先日のことだ。次に目を覚ましたエリナは、寝ぼけていて何も覚えていない様子だった。


「私、何か粗相をしてしまったのでしょうか?」

「……いや、何もしてない。気にしなくていいから」

「でも」


 エリナからしてみれば、目覚めてみると周囲の視線がやけに温かく感じられる。もしかして寝ている間に何かしてしまったのではと気が気ではないらしい。しかし、アルヴィスはもちろんのこと、侍女たちも教えてはくれなかった。微笑まれていることから、悪いことではないのだとわかっているかもしれないが、それでも落ち着かないということだ。


「それより、体調はどうだ? 少し熱があったようだが」

「あ……」


 アルヴィスがそう問いかけながら、エリナの額へと触れた。アルヴィスの体温が低いのか、エリナの体温が高いのか。もしくはその両方か。いずれにしても、アルヴィスの手の方が冷たいのは確かだ。温かく感じるその体温に、アルヴィスは眉を寄せた。


「今日は寝ていた方がいい」

「大丈夫です。ほんの少しだけ疲れが出たのかもしれませんし」


 エリナは笑みを見せているが、それをそのまま言葉通り受け取ることは出来ない。いつもよりも力がないように見えるからだ。


「エリナ」

「本当に大丈夫です。このくらいで休んではいられませんから」

「……」


 結局エリナはその日の執務を休むことはなかった。特師医の診察も受けたが、疲労がたまったのだろうということで暫くは様子見と言う報告を受けている。専門家の言葉だ。特師医が言うのならばそうなのだろう。




 そうしてエリナの様子を気にしながら数日が経過した。


「アルヴィス様、そろそろお戻りになられてはいかがですか?」

「そうしたいのはやまやまだがな」


 アルヴィスが処理していた書類は、行事予定と近衛・騎士団の編成表だった。再来週には国王の生誕祭が開かれる。国王の生誕祭ということで、祝いのパーティーなどが開かれるのは当然なのだが、騎士にとっては一大イベントとも言える儀式が行われる日でもあった。それは、叙勲式が行われることだ。

 昨年はジラルドが起こした問題のこともあり自粛すべきという国王が決定され、国王の生誕祭と一緒に見送られてしまったもの。今回は、一年越しに行われるという事で例年よりも華やかな舞台になることだろう。この叙勲式、アルヴィスも騎士団から近衛隊へ移籍する時に勲章を与えられた場でもあった。当時は身贔屓ではないかという不信感が強かったので、あまり嬉しいと思った記憶がない。お祝いされることを避けるように式を終えたら直ぐに退場したはずだ。

 しかし多くの騎士たちにとっては名誉ある場。そこで叙勲される騎士たちは、これまでの功績から考慮される。一年を飛ばしたこともあって、二年間の功績から選ばなければならない。この采配はアルヴィスに委ねられているため、誰かに手伝ってもらうわけにもいかなかった。


「二年分というのは、大きいな」

「そうかもしれません。そういえば、騎士団の討伐遠征も増えていますね」

「あぁ……」


 報告を見れば一目瞭然だった。近衛隊も訓練として王都近郊に出ることはある。騎士団はそれに囚われないため、王都を離れることも多い。そうなのだが、今年は特に出動回数が多かった。それだけ騎士団の手を借りなければならない状況があったということ。アルヴィスの脳裏に、マラーナの状況が過る。魔物が増えているというマラーナ。昨年のこともあり、隣国とはいえ警戒する相手という意識が強くなってしまっている。そのマラーナでは、現在その影響が人々の生活を脅かすまでに広がりつつあるという。

 そこまで考えてアルヴィスは首を横に振った。アルヴィスが手を出すべき領分ではないのだから。そう気持ちを切り替える。


「アルヴィス様、どうかされましたか?」

「何でもない」


 気に留めておく必要はある。建国祭までには、この件については騎士団と詰め合わせて状況確認をしておきたいところだ。出来れば、アルヴィス自身の目で確かめておきたい。とはいえ、今は動くことが出来ない。騎士団長であるヘクターへ任せるしかなかった。

 もしアルヴィスの懸念が当たっているとすれば、そう遠くないうちに騎士団に同行する必要もありそうだ。ふぅと息を吐くと、改めて書類へと目を通す。


「騎士団に偏ってしまうのはある程度仕方がない、か」


 騎士にとっての名誉。出来れば公平にとは思うものの、それだけ騎士団が危険を冒してまで任務を遂行してくれている証でもある。決して近衛隊が楽をしているという意味ではないのだが、端から見ればそう受け取れなくもない。アルヴィスにとってはどちらも古巣ではあるものの、距離が近いのはどちらかと言うと近衛隊だ。専属護衛たちを筆頭に苦労を掛けている自覚があるからこそ、何かしら目に見える形で評価を与えたいところではある。


「だが実際与えようとしたところで、ディンを筆頭に断られそうだな」

「どうしてですか?」

「俺が独断でしたこととはいえ、彼らはそれを認めた。結果として俺が怪我を負ったことで、その責任を少なからず感じているだろう」


 どのような状況であろうとも、結果を重く見ている彼らのことだ。失態だととらえているに違いない。


「そういう意味では、今回近衛に対しては引き下げが正しいだろう。伯父上も認めないはずだ」

「そうですね」

「……この辺りが妥当だろうな」


 話をしている間にもアルヴィスは手を動かしていた。器用だとよく言われるが、王立学園では並行作業など当たり前のようにやっていたことなので、苦にはならない。どちらかといえば、話をしながらの方が頭の中が整理されることの方が多いので、効率が良かったりする。平民だが友人であるリヒトは同意してくれたが、シオディランには全く理解してもらえなかった。今となっては懐かしい思い出だ。


「そろそろ戻るか」

「……予定時間は大幅に過ぎていますが。妃殿下が心配をされているのではないですか?」

「先に寝ているように伝えている。それに朝は顔を合わせているから大丈夫だ」


 時間はほぼ深夜に近い。最近は遅く帰ることも多いため、エリナには待っていないように伝えていた。朝の食事だけは共に摂るが、会話らしい会話はあまりしていない。エドワルドもそのことは当然知っており、エリナとの時間が少ないことを心配しているのだ。


「ですが――」


 そこへコンコン、と扉が叩かれる音が聞こえた。この深夜とも言える時間に王太子の執務室を訪れるなど、王太子宮関係者以外にはいないだろう。エドワルドが扉を開ければ、顔を出したのはサラだった。


「夜分に失礼いたします」

「サラ? 君がここに来るのは珍しいな。どうした?」


 エリナ付であるサラは、常に彼女の傍にいる。よほどのことがない限り、彼女の傍を離れることはない。


「申し訳ありません。ただ、どうしてもエリナ様がアルヴィス様へお話したいと申しておりまして」

「まだ起きているのか⁉」

「何度もお休みいただくようにとお伝えしたのですが、やはりエリナ様の口からお伝えした方がいいだろうと」

「どういうことだ?」


 エドワルドと顔を見合せるが、エドワルドも何のことだかわかっていないようで怪訝そうな表情でアルヴィスを見返すだけだ。そろそろ帰るつもりだったので、戻るのは問題ない。いや、問題はある。エリナが起きているということだ。


「急ぎ戻る」

「はい」


 戻る旨を伝えるためサラを先に返すと、片付けをしてアルヴィスは足早に王太子宮へと帰る。そうしてそこでエリナから聞かされた言葉に、アルヴィスは言葉を失った。




気が付いてくださった方もいらして嬉しいです。


今年もアルヴィスとエリナを見守っていてください!!

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