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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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13話

 

 それから二日。何とか自力で起き上がれるようになったアルヴィスは、ソファに座ってディンらの報告を聞いていた。


「ヴェーダの組織の統括者は、殿下を襲った者でした。他の者たちと同様に拘束してあります。ただ……妃殿下の誘導をした子どもはヴェーダの者ではなく、孤児院の子どもでした」

「……そうか」

「残念ながら、そのまま解放するというわけにはいきません。ひとまず子どもは、拘束はせずに別室にて監視下に置かせていただいております」


 その子どもは、ヴェーダの者から手伝いをすればお金が貰えると言われたらしい。孤児院では、子どもが働きに出ることを表向き良しとしていない。それでも、少しでも孤児院の為になるならばと、こっそりと小遣い稼ぎをする子どもは珍しくないらしい。街の人々も多少ならばと、ある程度の年齢に達した子どもにお店の手伝いをさせることはあり、孤児院からも半ば黙認されている状態だった。

 だが今回に限ってはそうはいかない。その子どもは、王家の者を害する手伝いをしてしまったことになる。更に、当人も妃であるかどうかの確認をしていることから、知らなかったでは済まされない。


「その子どもは何と話している?」

「妃殿下であることを確認した後に、渡された白い袋を握りしめるようにと言われていたそうです。そこまでで仕事は終わりだと」

「庇うことは、難しいな」


 子どもは使い捨てだった。それはわかるが、王族と知りながらも事を進めたという点に置いては共犯と言われてしまっても仕方ない。年端も行かない子どもだとしても。もしかすると、それ自体もトーグがアルヴィスに仕掛けたものかもしれない。トーグの望みは、アルヴィスが苦しむことなのだろうから。


「すべて織り込み済み、ということか」

「殿下?」

「いや、こちらの話だ」


 その後、詳細な報告をしてディンは部屋を出て行った。残されたアルヴィスは、立ち上がると窓際へと移動する。リュングベルの街並みを眺めながらも脳裏を過るのは、過去のことだ。既に割り切ったこと。夢にも出てこなくなったというのに、このタイミングで再び思い出させられるとは思わなかった。


「忘れるな、ということなのか。それとも許さない、か」

「アルヴィス様」

「っ⁉」


 いつの間に部屋に戻ってきていたのか。エリナがそっとアルヴィスに上着をかけてくれた。まだ万全ではないからか、エリナの気配に気付くことは出来なかったのでアルヴィスは驚く。


「申し訳ありません。お話が終わったと教えていただきましたので」

「そう、か」

「……」

「……」


 二人の間になんとも言えない沈黙の時間が流れる。間違いなく、先程の呟きはエリナにも聞こえていただろう。迂闊だったのはアルヴィスだが、それも良い機会なのかもしれない。いずれにしても、この状況に巻き込んだ以上、いつまでも黙っていることは出来ないのだから。

 アルヴィスは再び窓の外へと視線を向けた。


「巻き込んでしまって、すまなかった」

「え?」

「今回の件、君が巻き込まれたのは君が俺の妻となったからだ。あいつにとってはそれが重要だった。だから――」

「謝らないでください」


 アルヴィスの言葉をエリナが遮る。思わずアルヴィスがエリナを見ると、彼女は微笑んでいた。その様子に、アルヴィスは息を呑む。


「謝らないでください、アルヴィス様。私はこれからも何があっても、貴方の傍で支えると誓いました。どのような目にあったとしても、この気持ちが変わることはありません。それに謝るというのならば、私の方です」

「エリナが?」

「私が、甘さを見せずにいたならば……アルヴィス様にお怪我をさせることはなかったかもしれません。あの時、安易な行動を取った私が悪いのです」

「それはそうかもしれないが、だが……いやこれ以上は堂々巡りか」


 エリナの言うことも一理ある。その行動が相応しいものではなかったという点では、お互い様ということだろう。どちらにしても、あとでエドワルド辺りに説教されることは目に見えている。


「まだまだだな……俺も。かといって、黙っていることも出来ないだろうな」

「あ……」

「聞きたい、だろう?」


 何を、とは告げなくてもわかっているだろう。エリナは、ゆっくりと縦に首を振る。いつかは話さなければと考えていた。あの時、エリナが知りたいと望んでいることを知った時から。それがこうも早いとはさすがに思っていなかったが、これも潮時というやつなのかもしれない。


「どこから話せばいいのか迷うところではあるが……」


 まだアルヴィスが公爵家の屋敷で過ごしていた時のこと。周囲からの期待に欺瞞を感じ、兄や両親から距離を取りたくて逃げていた時期。屋敷を抜け出して街に出て、夜まで帰らなかったこともある。そんな時は、父の第二夫人であるレオナによくかくまってもらっていた。


「アルヴィス様が、ですか?」

「……あの頃の俺は、自分の存在が疎ましかったんだ。公爵家の次男、王弟の息子、正妻の第一子という立場が」

「それは」

「生まれた家は変えられないし、今更どうにもできないことだ。でもどうにもできないからこそ、だったのかもしれない」


 困ったように笑うアルヴィスは、ベッドへと腰を下ろす。すると、エリナも隣に座った。


「父にも母にも、ましてや兄にも何も言うことは出来なかった。両親は兄ばかりを見ていたし、俺はただそれを見ているだけで、幼い頃は会話らしい会話も多くなかったと思うな」

「ベルフィアス公爵閣下が、ですか?」

「……母の子である俺と父の前の恋人の子である兄。兄を後継だとするために、両親は俺を優先することは出来なかったから仕方ないんだ」

「ですが――」


 何かを言おうとするエリナの言葉を遮るように、アルヴィスはポンとエリナの頭に手を乗せる。

 両親は傍に居なかったが、その代わりにアルヴィスの傍にはエドワルドやイースラ。ナリスたちがいた。寂しくなかったかどうかはわからないが、一人ではなかったのは確かだ。

 それでもどこか渇きを覚えていたのだろう。そして、エドワルドが学園へ入学するためアルヴィスの傍を離れていった頃。その時に出会ったのが、彼女だった。


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