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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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156/381

8話

いよいよ今週に第三巻とコミック1巻が発売されます!

楽しんでもらえるといいのですが;

 

 アルヴィスたちはひとまず警備塔まで戻った。街へ戻ったサレイルたちの連絡待ちだ。万が一、何かが起きたというのならば下手に街に戻るよりもここの方が安全だというディンの判断だった。

 現時点においてアルヴィスは冷静さを欠いている。ならば年長者であるディンに任せるのが一番。アルヴィスがそう指示をした。


「アルヴィス」


 窓枠に寄りかかるように身体を傾けながら、アルヴィスは外を見ていた。二階にあるこの部屋は貴賓室というもの。警備塔に滞在している間、アルヴィスにと用意された部屋である。窓から階下を見下ろせば、動き回っている騎士たちが見えた。その様子に溜息をつきつつ、名を呼ばれて顔をレックスへと向ける。


「何だ?」

「……行かないのか?」


 どこへ、など聞く必要もない。いつになく真面目な顔で問うレックスに、アルヴィスは苦笑した。


「俺が行って解決するならばそうする。だが、事はそう簡単じゃない。目的がエリナなのか。それとも俺なのか。もしくは王家に対するものか。考えられる事由は少なくない」


 目的がアルヴィスならば、直ぐにでも動きたい。しかし、現時点では何もかもがわからないままだ。フォルボード侯爵領で起きたことなので、この責任を問われるのはフォルボード侯爵。そこから考えられるとすれば、元フォルボード侯爵へ不満を持っている輩という可能性もゼロではない。何より、エリナはフォルボード侯爵の血縁である。相手の目的がわからない状態で、王太子であるアルヴィスが動くことは出来ない。


「だが何か心当たりはあるんだろ?」

「レックス?」

「そういう顔をしているよ、お前」


 そう指摘され、アルヴィスは窓から離れるとソファーへと腰を下ろした。そしてそのまま膝に肘を突けるようにして手を組むと、顔を俯かせる。

 心当たり。あるとすれば、最初に市場へと向かった時に感じた視線。それだけだ。視線を受けることなど当たり前のことで、逐一気にすることじゃない。なのに何故か気になった。あの時、その正体を追っていればもしかしたら結果は違ったのだろうか。


「……たらればの話をしてもキリがない。それはわかっている」

「あぁ」

「だがあの時、俺は()()()()()()視線を感じた。それがもしかしたら、とそう思う自分がいるのは確かだ」

「ここへ来たことはないんだよな?」

「ない。それだけは間違いない」


 だから知り合いなどいるはずがないのだ。だというのに胸が騒めく。何か見落としているとでもいうのだろうか。


「だが、お前は目的が自分だと考えている。そういうことか?」

「確証はない。それに万が一そうだとしても、俺が先陣を切るわけにはいかないことくらいわかっている」

「だな。こう言うのはあまりよくないが、まだ妃殿下は代わりが利く。だが王太子(お前)の代わりはいない」


 個人の話をしているわけではない。エリナという人間に代われる者はいないが、妃殿下という立場に代われる人間はいる。レックスが言いたいのはそういうことだ。


「そのくらいエリナも理解している。彼女は俺以上にその立場にあることの覚悟をしているはずだ」

「まっ、そうだろうな」


 だからこそ無事でいて欲しいと願う。これ以上、エリナに辛い思いをして欲しくはないと。すると、コンコンと扉を叩く音が届いた。アルヴィスは顔を上げる。


「殿下、失礼いたします」

「入れ」


 声の主はディンだ。許可を出せば、扉を開けてディンが部屋へと入ってきた。アルヴィスの前へと来ると、その場で膝を突く。


「サレイルらからの情報をお伝えいたします」

「頼む」

「妃殿下とフォルボード侯爵夫人は予定通り観劇に向かいました。その帰り、馬車へ飛び出してきた子どもがおり、妃殿下が馬車を降りて声をおかけになったそうです」


 馬車を降りた。そのことにアルヴィスは眉を寄せる。王太子妃として取るべき行動ではない。それをあえてしたのは相手が子どもだったからなのか。それとも別に理由があるのか。


「アムールが制止しましたが、妃殿下は子どもの傍へと歩み寄り、その直後子どもの手から煙が湧いたとのことです。濃い霧のようなものが発生し、視界が回復した時には妃殿下の姿はなかったと」

「……子どもは?」

「同じく消えていたそうです」


 それが意味することは、子どもが仕掛人だということ。命令されたのかどうかはおいておいて、フォルボード侯爵家の馬車だと分かった上で飛び出してきたのだろう。


「フォルボード侯爵夫人は?」

「妃殿下がいないことにショックを受けて、現在は寝込んでいるようですが休んでいれば大丈夫だと」

「そうか」

「それとアムールの証言では、子どもは妃殿下のことを確認していたようです。妃であるかどうかを」

「っ⁉」


 フォルボード侯爵夫人を害することなくエリナを攫った。さらに、妃であることを確認した。そこから導き出される答えは、その目的が王太子妃だということ。エリナ自身ではなく、妃が目的。であればエリナが攫われた原因は……。


「俺、か」

「……」


 ディンは否定も肯定もしなかった。ただ険しい表情を見せているだけだ。


「けど、お前はここに来たこともないんだろ? 何でお前なんだ?」

「……」


 そうそこがまだわからない。実際、全くアルヴィスとて身に覚えがないとは言い切れはしない。公爵家次男として生を受けた時点で、あずかり知らぬところで恨みを買っている可能性もある。面と向かってアルヴィスに嫌悪してきた人間もいないわけではないし、何より自分を恨み亡くなった人間がいることを知っている。だが、このタイミングでこの街で事を起こす理由がわからなかった。


「それなのですが、可能性の一つとしてヴェーダという快楽主義者が集まる組織があるそうなのです」

「ヴェー、ダ?」


 アルヴィスはその名前に冷や汗が垂れるのを感じた。聞き覚えのある名だったからだ。全身が冷える。そんな感覚がアルヴィスを襲う。そんなアルヴィスの様子にも気付かず、ディンは話を続けた。


「連中はただ面白そうというだけで犯罪を行う連中なのですが、例の子どもと接触している仮面の男がいたという目撃情報が」

「ディンさん、その仮面の男がヴェーダの人間ってことですか?」

「ヴェーダの人間は所属している証として共通の指輪をしているらしい。仮面の男がそれをしていたのを見ていた人間がいた」

「何かタイミングが良すぎる話ですね。まるで目撃して欲しいみたいな」

「それもあるが、一方で罠である可能性も否定できない」


 目撃して欲しい。ということは、エリナを助けに来いという彼らからのメッセージ。間違いなく罠だ。レックスとディンの会話を聞きながら、アルヴィスは目を閉じて深呼吸をする。

 ヴェーダの人間からのメッセージ。たとえ罠だとしても出向かないわけにはいかない。もしアルヴィスが考えている通りならば、アルヴィスが行かなかった場合エリナの無事は保証されない。彼らは迷いなく相手を手にかけることが出来る。

 己が取るべき行動は何か。アルヴィスは必死に頭を回転させた。


「殿下?」

「……ディン、居場所はわかるか?」

「妃殿下の救出は我らで行います。殿下はここで――」

「わかっているかどうかを聞いている」


 アルヴィスの圧にディンは一瞬怯んだ。そして、立ち上がるとアルヴィスへ一枚の紙を差し出す。


「ここです」

「……夜までに準備を進めてくれ。指揮は俺が取る」

「アルヴィス、お前――」

「我儘を言っているのは理解している。戻ったら謹慎でも何でもやってやるさ。だが、これだけは譲れない」


 拒否は許さない。これは王太子としての命令だった。目を見張ったディンだったが、レックスへと目配せすると、再び膝を突く。レックスもそれに倣う様にディンの隣で膝を突いた。


「承知いたしました」



また勢いのまま書いてしまった。。。

誤字脱字あったらごめんなさい。。。

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