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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第一部

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136/380

36話

活動報告にも書きましたが、4/25に本作の書籍版第2巻が発売となります。

ここまで頑張れたのは読んでくださっている皆様のおかげです。

本当にありがとうございます!!

 

 アルヴィスがその足で向かったのは、今までアルヴィスたちがいた本邸から少しだけ離れたところに建てられている別邸だ。別邸の前には、侍女が一人待機していた。アルヴィスが来るのを待っていたのだろう。アルヴィスの姿が見えたところで、侍女は深々と頭を下げる。


「レオナ殿は?」

「はい、中にいらっしゃいます。ご案内いたします」

「頼む」


 侍女の案内で訪れたのは、別邸内にあるサンルームだった。中庭が望める場所で、レオナはここが気に入っているらしい。中へ入ると、レオナが中庭を眺めながら椅子に座っていた。フワリとした藍色の髪が風になびいている。侍女がレオナの下へと近づき、声をかけた。


「レオナ様、アルヴィス殿下がいらっしゃいました」

「わかりました。ありがとう」


 ゆっくりと立ち上がったレオナは、アルヴィスのところまで歩いてきた。アルヴィスの前で止まると、腰を折り深々と頭を下げる。


「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんでした。ご結婚おめでとうございます、アルヴィス王太子殿下」

「ありがとうございます、レオナ殿」


 アルヴィスがそう返すと、レオナはゆっくりと頭を上げた。こうしてレオナと会うのは何年振りだろうか。領地でも滅多に別邸からは出てこないレオナ。少なくとも学園入学後に顔を合わせたことはない。五年以上ぶりだった。



 侍女は手際よくティーカップなどを用意すると、頭を下げてここを出ていく。残されたのは、レオナとアルヴィスだけとなった。


「お久しぶりです。お元気、でしたか?」

「はい、私は相も変わらずでございます。オクヴィアス様もよく気にかけてくださいますから」

「そうですか」


 レオナとオクヴィアスの仲はとても良好だ。二人とも政略結婚でベルフィアス公爵家へ嫁いできた。使用人たちの話からすると、嫁いできた当時から仲違いなどはせずにオクヴィアスからレオナへと関わっていったらしい。庶子だったマグリアを引き取り、育てたオクヴィアスだ。レオナに対する対応もオクヴィアスらしいと納得もできる。


「王太子殿下も――」

「レオナ殿、ここではいつも通りアルヴィスで構いません」


 アルヴィスの身分は確かに王太子。レオナがそう接してくることは容易に想像ができた。だが、ここはアルヴィスの実家でもある。この場は王族の一人としてではなく、ベルフィアス公爵家の人間として、家人として扱ってほしい。これはアルヴィスの我儘だ。


「……承知いたしました、アルヴィス様」

「ありがとうございます」


 アルヴィスが微笑むと、レオナも仕方がないといった風に頬を緩ませた。

 こうしてレオナと二人でお茶を飲むのも久しぶりだ。否、こうしてレオナと共にいることも随分と久しい。


「わざわざ私などの下へお出でになることはございませんのに」

「王都にレオナ殿がいることも珍しいですが、そもそも俺がここに、ベルフィアス公爵家へ来ることはそう簡単ではなくなってしまったので……会える時に会っておきたかったのです」

「アルヴィス様」


 第二夫人という立場から、レオナは正妻の子であるアルヴィスと積極的に関わろうとはしなかった。それについては、ラナリスも同様だろう。だが、レオナがアルヴィスと関わらざるを得なかったことがあった。今のアルヴィスからすればあまり思い出したくない記憶の一つ。アルヴィスが、俗に言う反抗期だった頃の話だ。

 当時、アルヴィスは己の立場を理解し始めていた頃だった。レオナが第二夫人として公爵家へ来たのもちょうどその頃。レオナの実家は伯爵家だったが、宰相であるザクセン侯爵と親しかったらしく、その縁で王弟であるラクウェルの元へ嫁いできたという。

 嫁いできたばかりのレオナに、アルヴィスはよい感情を持っていなかった。ただでさえ、アルヴィスの存在が周囲を騒がしくしているというのに、そこに更に争いの種を巻くつもりなのかと。レオナとて好きで嫁いできた訳ではない。だが、そのようなこともわからないくらいにはアルヴィスは子供だったのだ。

 レオナに突っかかったのは、一度や二度ではない。それでもレオナはそんなアルヴィスの態度に何も言わずに黙って受け止めてくれていた。その態度すら気に障り反抗していたのだが、今となっては苦い記憶でしかない。


「レオナ殿には迷惑ばかりをかけていました。きちんと感謝も伝えず、申し訳ないと思っていたのです」


 アルヴィスとレオナは表立って交流をしてきたわけではない。それもヴァレリアが生まれる頃には終わっていた関係だ。二人の間に何があったかなど、知る人はそれこそレオナの世話をしていた侍女たちくらいだろう。尤もレオナのことだから、公爵家当主である父ラクウェルに報告していた可能性はあるが。

 アルヴィスの言葉に、レオナは首を横に振った。


「迷惑などかけられてはおりません。それが私の立場でしたから。それに、子が大人に迷惑をかけるのは当然なのです」


 レオナが、子が親にではなく大人と告げたのは意図的だ。あの時のアルヴィスには、両親に甘えるという考えがなかった。公爵家として後継がマグリアだと外にも示すためか、ラクウェルもオクヴィアスもアルヴィスよりマグリアを優先していたため、甘えることなど出来なかったと言った方が正しいだろう。


「それでも、ありがとうございました。レオナ殿がいてくれたおかげで、今の俺があると思っていますから」

「アルヴィス様……勿体ないお言葉です」



すみません、今回は短めです。アルヴィスの過去については、また後々ということで。


誤字脱字報告、いつもありがとうございます!!


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