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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第一部

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閑話 令嬢たちの卒業式

ちょっと短めの閑話です。

 

 とうとうこの日が来た。というか漸くこの日を迎えることが出来たというべきか。目まぐるしく過ごした三年間の学園生活の最後の日をエリナは迎えようとしていた。今日は、王立学園の卒業式の日なのだ。

 昨年の学園生活は、エリナ自身楽しいと心から思えるようなものではなかっただろう。だが、今年は違うものとなったことに深い感慨を覚える。

 王城へ教育という名目で向かうこともあったが、最後の一年ということで学園生活を優先することになったのも大きいだろう。学園内での交友関係は、卒業後も大きな力となる。特に、卒業後に結婚をして程なく王太子妃となるエリナにとっては。


「いよいよ卒業式ですのね」

「そうですね。卒業は嬉しいことですが、ハーバラ様を始めとした皆さまとお別れするのは少し寂しいです」


 卒業後の令嬢たちの選択肢は然程多くない。中には王城へ勤める道を選ぶ者もいるが、多くは領地へと帰還する。実家を手伝う者や、結婚する者。王都に残るのは一部の令嬢だけ。卒業式は別れの日でもあるのだ。

 ハーバラは、以前から行っていた事業に本格的に関わるようで、結婚式の後は領地へと戻る予定らしい。暫くはそちらにかかりきりになるため、次に会える日がいつかはわからない。


「エリナ様にそう言っていただけるのはとても嬉しいですわ。私も寂しい気持ちは同じですもの。最後の一年は、本当に楽しかったですから」

「……ハーバラ様」

「嘘ではありませんわよ? 今は、少し踏ん切りがつきましたから。彼のことも」


 そう話すハーバラは無理をしている様子ではなかった。破棄された令嬢たちの中でも、一際仲が良かった婚約者だった彼との別れは、ハーバラに深い傷を与えてしまった。でも、今はハーバラの表情からはそう言ったかげりは見られない。


「感謝もしています。あの人に」

「え?」

「……正直、彼と結婚していたらここまで仕事に対して責任を持てなかったのかもしれませんから。あの件があったから、両親を説得もできました。家族全員からの賛同を得ることが出来て、そしてこれからも開発をできるようになったのは、例の事件があったからです」


 ハーバラの両親からすれば、傷ついたハーバラを少しでも立ち直らせようとした行動だったのだろう。彼はハーバラのやることを認めてくれていたが、父親はそうではなかった。だが、これからは表にも立って仕事ができるという。令嬢らしくはない生き方だが、それでもハーバラらしいと言えた。


「結婚についても父を言いくるめましたし、暫くは仕事をするのに必死になりそうです。これからが楽しみだとも感じてますの」

「本当に楽しそうですね。ハーバラ様、良かったです」

「エリナ様も、これからが楽しみでしょう? 大変かもしれませんが」


 楽しみだと言われ、エリナの脳裏にはアルヴィスの顔が浮かんだ。ハーバラ同様に、エリナもリリアンには感謝している。ジラルドとの結婚では得られなかっただろう生活が、これから待っているのだ。

 この一年、最初は儀礼的な会話や手紙のやり取りしか行わなかったアルヴィスとの関係。それが変わったのは、アルヴィスの生誕祭だった。アルヴィスが負傷し、エリナは己の気持ちに気付くことが出来たのだ。ジラルドよりも過ごした時間は短い。それでも、エリナはアルヴィスに惹かれた。

 ただの婚約者から、アルヴィスを意識するように変わったのは初めて城外へ出た時だ。王太子という地位にいながら、護衛も付けずに外出したアルヴィスの姿は、エリナにとって新鮮に映った。ジラルドは常に王太子という地位をほのめかして周囲を使っていたが、アルヴィスにはそれがない。あの時、本当ならばエリナは止めるべきだった。それができなかったのは、アルヴィスの元騎士という言い分に安心感を覚えたからなのかもしれない。

 そうして外出した二人は、市場を歩いたり店をまわったりした。お互いに他愛ない会話もして、贈り物をもらった。この時のアルヴィスは、きっと婚約者に対する義務のようなものだったのだと思う。それでもエリナにとっては、特別なことだった。今では一番の宝物となっている。そのペンダントは今もエリナの首に下げられていた。エリナは特別な宝物であるそれにドレスの上からそっと触れる。


「大変ですが楽しみです。王家に嫁ぐというよりも、あの方の花嫁になれることを嬉しく思っています」

「少々気苦労が多そうな王太子殿下ですが、あいつよりは断然エリナ様とお似合いです」

「ありがとうございます」

「王都を離れますが、何かされたらいつでも駆け付けますのでご連絡ください。下の兄が殿下と友人なので、色々と力になれると思いますわ」

「ふふふ。その時はお願いします」


 そんな風に笑い合いながら、二人は式典が行われる講堂へと入っていくのだった。







漸く婚約編もそろそろ終わりが見えてきました。

これも読んでくださっている皆さまのお蔭でございます。

本当に感謝しています。いつもありがとうございます!!

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