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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第一部

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11話

 

 謁見の間から己の執務室へと戻ったアルヴィスを出迎えてくれたのは、エドワルドだった。


「お帰りなさいませ」

「あぁ」

「騎士団よりこちらをお預かりしました。只今、お茶をお持ちします」


 その手に持っていた書類をアルヴィスへと手渡すと、部屋を出て行く。椅子にも座らずに、直ぐ書類へ目を通す。騎士団からエドワルドを通して渡してくるとなると、緊急性が高いものだろう。


「これは報告、か」


 騎士団から上がってきた報告書。簡潔にまとめられた内容には、リリアンの様子と諜報員が得た情報が記載されていた。

 リリアンについては然程大きな問題は起きていないようだ。時たま不満を漏らすことはあるが、リリアンの上官として付いている女性は騎士団詰所内を取り仕切っている人物でとても厳しいことで有名だった。事情が事情故、信用の置ける人物に付けるのがいいと判断した結果である。アルヴィスも知っている人物だが、正直にいって苦手な相手だった。ある意味で修道院に行くよりも、リリアンにとっては過酷な状況なのかもしれない。


「相変わらず、厳しい人だ」

「アルヴィス様?」


 そこへエドワルドが戻ってきた。トレーにはお茶の用意がされている。出て行ったままの状態でいたことを不思議に思ったのだろう。首を傾げていた。


「何故お立ちのままなのですか。座って読めば宜しいのに」

「悪い。さっと目を通すつもりだったんだが、懐かしい人のことを思い出してな」

「…‥左様でしたか」


 カップを置き、紅茶の準備をするエドワルド。それに倣うようにアルヴィスもソファーへと座った。改めて書類へと視線を落とす。

 リリアンについては、現状維持で気に留める必要はなさそうだ。泣き言を言おうが、アルヴィス以外に首輪を外すことは出来ない。更に、アルヴィスが会いに行く予定もない。今の自分に置かれている状況を受け入れることしか、リリアンには出来ないはずだ。それでいて今なお、反抗することが出来る精神は褒めていいのかもしれない。

 マラーナについてもやはり大きな動きはない。だが、例の伯爵については雲行きが怪しくなってきているようだ。ロックバード伯爵は、当主を息子に譲り隠居するらしい。宰相の指示によって。表向きは、これまで国に尽くしてきた功労を称して、南方にある小さな領地を下げ渡すためそこに移り住むということだ。だが、実態は左遷に近い物だろう。政治に関わることの出来ない場所に追いやられてしまうのだ。

 このことから察するに、マラーナ宰相がこの前の事件に関わっていたことは間違いないだろう。目的はまだわからないが、何かしらの思惑を抱いているようだ。その中には、ルベリアの内政干渉があったということだろうか。ジラルドが王太子であった時には干渉してこなかったことを見るに、リリアンの件が引き金になった可能性もある。今ならばルベリアを御せると。実際は全て失敗しているわけだが、こうした隙を今後は見せるわけにはいかない。

 一通り目を通した書類をテーブルの上に置いた。一区切りついたのがわかったエドワルドが、カップに紅茶を注いでくれる。


「そういえば、アンブラ隊長からも伝言を預かっております」

「たい、ルークから?」

「はい。明日以降、お時間が取れる時にこちらに伺いたいとのことでした」

「明日以降か……」


 直ぐにスケジュールの確認をする。執務室にいる時間帯ならば、いつでも問題はない。かといっていつでもいいということを伝えれば、困るのはルークの方だ。部下であった時ならばいざ知らず、今はアルヴィスが上司となる。気持ち的には未だルークを隊長と呼んでしまいそうになる。呼び方は、騎士団長からもきつく直すようにと言われていた。でなければ、いつまでも抜けないと。


「明後日の午後一からだな」

「わかりました。そのようにお伝えしておきます」

「頼む」


 明日は、式の打ち合わせのため後宮にいく。執務室にいない時間帯の方が多くなってしまうため、避けた方がいいだろうという判断だ。明後日ならば、一日執務室にいるため多少の融通は利くだろう。


「式、か……」

「そういえば、あと二月ですね。エリナ様がご卒業されるのは」

「そうだな」


 二か月後、王立学園の卒業式がある。卒業式には、アルヴィスは参列しない予定だ。来賓としてはアルヴィスではなく国王がいく。それは恒例のことだ。よって、卒業式の日も仕事をしているだろう。

 卒業式の後、エリナはリトアード公爵家へと戻る。その一週間後には、式を迎えてエリナは王城に住まいを移すのだ。

 既に迎える準備は整っている。ドレスなどは当日のお楽しみだと、実物は目にしていない。だが、王妃や母が満足していたので問題はないのだろう。こまごまとした調整は残っているものの、ほぼ準備は終わっているのだ。アルヴィス自身、特に式に対する想いはない。しかし、女性にとっては特別なものだろうし、エリナには憂いを残すような真似はしたくないとは思っていた。


「あっという間ですよ、きっと」

「わかってるさ」







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