揚羽の堕落
「ねぇお兄さん、私とイイことしない?」
今日もまたナンパ漬け。今日は魔法使い狙い。反応可愛いんだもの。
胸元の開いた淫らな布を纏い、ターゲットを狙い撃ち。
「いや、その…」
狼狽していようと関係ない。
「えぇ、嫌?」
酔ったフリをして胸を押し付け上目遣いで問う。これで落ちなかった男はいない。
近くの建物へと足を伸ばす。今日もまた獲物ゲット。獲物を捕らえるところから快感は始まるのよ。
あたしは生まれてから大学を卒業するまで男と喋ったことは無かった。女子校ってのもあったけど、それ以上に、母親の男に対する嫌悪が強かった。まあ、いわゆるヤリ捨てであたしが生まれたってとこ。そりゃ男嫌いになってとーぜんだよね。母親はあたしにも男を寄せ付けなかった。あたしに好きな人ができると、あたしを殴りつけたこともあった。
だけど、大学の卒業記念に、友達と沖縄に旅行に行った時、あたしは初めてナンパをされて──オトコを知ったの。そこからあたしの人生はガラリと変わった。
今まで抑制されてた分が、全部はじけたの。あぁ、これが私が求めてたものだって。そこからあたしは今までの道から逸れてったわ。
体の奥へ伸びる快感に溺れる。ねぇ知ってる?アゲハ蝶って、蜜を吸う時に羽をばたつかせるのよ。今のあたしに似てると思わない?
こんな甘い蜜を吸わないなんてこと出来っこないわ。私の生きる道はこれなんだって、気付いてしまったのだもの。
今宵もまた、哀れな揚羽がまた1羽と散っていく。