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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
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おじさんの逃走

更新は時間がかかってしまうと思います

居酒屋を何とかでた2人


『さあ、どうやって帰って貰おうか』


勿論、亜紗美に言い寄られている事に悪い気はしない


だが、自分が大学を出たばかりの若い女の子と付き合うなど想像も出来ない。


「今から勇輝さんの家にいきます」


足取りも怪しくなった亜紗美は怪しいロレツで、、、しかし視線はしっかりこちらを見ながら手を繋いでくる


「明日は大事な仕事が有るから、今日は帰ろう」


視線をタクシー逸らし手を挙げて止める


「まだ返事が有りません」


腕にしがみついてくる。


胸が押し付けられて動揺する


「次のお休みに映画に行くんでしょ。その時に話そう」


問題の先延ばしは仕事と同じだ、、、、、。


「次のお休みは逃がしませんからね」


タクシー運転手の『早くしろよ』


と、感じる視線をを受けながら


財布の中から残り少ないお金を渡す


「明日は遅刻しないようにね。おやすみ」


後部座席に亜紗美を押し込みタクシーから離れる。


扉が閉まると同時に窓が開けられる


「大好きですから」


おじさんは周りの視線が気になり、顔が少し引き攣る。


何かお互いに言おうとしたが、タクシー運転手の苛立ちが勝利したらしく


行き先をまだ聞く前に車は動き出した


亜紗美の不満そうな表情がチラリと見えたが、おじさんは安堵の顔を全力で表現していた。




『さて、自分はタクシーに乗るお金も怪しいし』


そう思いながら漫喫にでも泊まる事を考えながら携帯を見ると


《今日、亜紗美と残ってましたか?私も手伝いたかったです》


沙都美からメッセージが入っていた。


『どこでこんなに早く情報を集めるんだか』


おじさんは少しビックリしたが、女子の情報網をこの歳になると何度か経験しているので


冷静に努めて返信した


《たまたま彼女も貴則君の仕事が残ってたみたいで、手伝って貰った訳じゃないよ》


コンビニで下着を購入してなるべく安い漫喫に入って行った。




朝になり新しいシャツを買うか悩みながら会社に着くと


既に沙都美が席に座っていた。


チラッとこちらを見て


「昨日と同じシャツですね」


視線を外しながら言ってきた


動揺を隠しきれずに


「漫喫に泊まってさ、、、シャツ買うか悩んでるところでさ。解ったって事はやっぱり匂う?」


沙都美はもう一度視線をこちらに向けて。


「勇輝さんの着ているシャツやネクタイは毎日チェックしています。匂いもいつも良い匂いしかしません」


予想外の返答に目が泳ぐ


「昨夜は仕事が終わらなかったのですか?それとも、亜紗美とどこかに行ったのですか?」


この間、沙都美の視線はずっと勇輝を見ている


昨夜の亜紗美の


『沙都美さんは絶対勇輝さんの事が好きです』


と、いう言葉のせいで動揺はさらに膨らむ


「え、え、ええと」


「亜紗美に告白されましたか?」


畳み掛けるような質問におじさんは限界だ


その時に貴則が部屋に入ってきた


「おはようございます」


空気を全く読もうとしない貴則がこの時ばかりは救世主に感じた


「おはようございます」


沙都美は貴則に挨拶をして自分のデスクに目を落とした



始業時間になると誰よりも早く上司の所に行き資料を見せる


上司は形だけ確認したふりをして


「早く進めろよ」


形だけ言葉を発する


「では行ってきます」


自分の机に戻り出かける用意をする


亜紗美が眠そうに仕事をしているのが視界の端に入ったが出口に迷わずに向かう


部屋を出てエレベーターへ向かうと何故か沙都美がこちらを見ずに立っている


視線が合う事も無いのでエレベーターのボタンを押して待っていると背後から声を掛けられる


「質問の答えを頂いてません」


「え、え、ええと」


「今夜、終わるまで待ってますから」


「いや、今日は全く時間がよめなくて」


「昨日はそう言って亜紗美と出掛けたんですよね?」


「いや、それは仕方なくで、、、。」


「待ってますから」


女子の技の一つ、哀しげな声でおじさんの心を揺らしにかかる


そこにエレベーターが到着し、おじさんは安堵の表情


「急ぐから、ごめんね」


そう言ってエレベーターに乗り込む、、、、と、何故か沙都美も乗ってきた。


中には他に2人乗っていたが、沙都美は御構い無しに


「取り敢えず17時にメッセージさせて頂きます」


ダメ押しに動き出した


「ちょ、ちょっと金欠なんだよね」


これはかなりの事実で有る


扉が開くと、沙都美とホールの端に行き


「いや、、、、ちょっと、、、ねえ」


「待ってますから」


「取り敢えず、、、、今日のこの難関な仕事をこなさせて。連絡するから」


「わかりました。連絡が無ければこちらからします」


おじさんは着替えていないシャツに更に汗をかきながら足早に建物を出て駅に向かった。


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