表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
41/55

優しい雨

まるでミストサウナに居る様な


霧雨の中を傘もささずに帰っていた




あの日もこんな天気だった


もう逢わないと告げられたあの日


その言葉が信じられなくて


外に飛び出して彼女の家の前まで行った




あの時以来


霧雨た夜は嫌いだ


胸の苦しみが一気に思い出される




会社を出ようとした時


亜紗美に話しかけられた


たあいのない話をしていた


帰ろうと促し駅まで一緒に歩いた


ホームで電車に乗ろうとすると


また、何気なく話し続ける亜紗美がいた


電車が2本行った後に


「やっぱり、お茶でもして帰りませんか?」


「えっ?、、、やめとくよ」


「、、、、今日の勇輝さん、、、ひと昔に多かった表情をしています。大丈夫ですか?」


「、、、そ、そうかな?いつも通りだよ。。。大丈夫。大丈夫だよ」


そう応えている勇輝の表情を


亜紗美は心配そうに見ている


ずっとコッチを見ている亜紗美の視線から逃げる様にホームに入って来た電車に乗り込んだ


「じゃあ、明日ね」


「、、、はい。何かあったら連絡下さい。話し相手にはなれると思います」


扉が閉まりやがて亜紗美は見えなくなった




亜紗美は勇輝が見えなくなって


しばらく考え事をしていたが


自分の乗る電車が来たので慌てて乗り込んだ


スマホの画面をしばらく眺めていたが


やがて思い切った様にメールを打ち出した


《隙を見せたら私は一気に攻めますからね。


沙都美さんが今日何してるかは知りませんが、いつもよりオシャレな服装だったので勇輝さんとデートするもんだと思ってました。


ここは先輩だからって遠慮は出来ません》


送信して一息つく


『沙都美さんはこの内容をどう受け取るかわからないからなぁ。

よく斜め上の解釈をされて私が凄い悪い人間みたいに言われるし、、、。

まあ、今回の内容は悪い様に取られてもいいか。

服装の件についてはどう言い訳するかわからないけど、明らかに普段着では無かったんだから。

女の勘、、、たぶん、、、』


女性の見ている景色は男性とは全く違うものだ


珍しく就業時間近くに会社に戻った亜紗美は


帰り際の沙都美が


出社の時と違う服を着ていた事も


化粧がいつもよりしっかりされていた事を


ちゃんと見ていた


勇輝は全く気付いていなかった


貴則なら気付くかも知れないが


それは目的が違うので今回は関係がない


亜紗美は勇輝が何かしら知っているのかと思い


何度か接触してみた


すると最近ではすっかり見なくなっていた昔の硬い表情で周りをあまり見ていない感じだった


チャンスかも!と、全く思わなかった訳では無いが


それよりも純粋におじさんの事が心配になった


先日、とても苦しそうな顔をしていて


それを沙都美が看病して回復していると思っていた


すると今日は沙都美がおじさんと別行動をするのにオシャレをしている


頭の中の誰かが


『あれは男性に会いに行く女性の行動だ!それも、お目当ての男性に会う時の』


と、亜紗美に言った


そんな沙都美を見たあと


おじさんの表情を見て


『これは、勇輝さんは知っているのかも!』


そう感じた


と、同時に


『勇輝さんを元気付けてあげたい』


と、素直に思っていた






帰宅してご飯も食べずに


動画ばかり見ていたが


何も頭に入って来なかった


スマホはあえて見ない様にしていた


連絡が有っても


無くても


どう反応していいかが解らなかった


時計を見ると11時だ


『シャワーでも浴びるかな』


スマホが気になったが


机に置いたままシャワーを浴び始めた


男のシャワーなんて長く時間をかけても15分も有れば終わる


ゆっくりしていたつもりだったが


やはりそんなに長くはかからないものだ


タオルで身体を拭きながら炭酸水を飲む


『もう、このまま寝よう』


そう思って歯磨きを始めた時


電話が鳴った


沙都美からだった


少し躊躇したが


それと同時に心が少し安心した


スマホを手に取り


何を言われるのか、、、


再び緊張して通話開始のボタンを押す


「どうしたんだい?」


「勇輝さん、なんでメール返事くれないんですか?寝てました?」


「ああ、、、友達とゆっくりしてるだろうと思って、、、ウトウトしてたよ」


スマホを見たくなかったとは言えず嘘をつく


「私、絶対に行くって言いましたもん。今駅なんであと少しで着くと思うので待ってて下さい」


そう言って電話が切れるのかと思うと


沙都美は話し続ける


おじさんは心が苦しくなり


「歯磨き中だから電話切るね」


そう伝えて一方的に電話を切った


『どういう心境なんだろう?さっきまで男と会っていたのに。電車の中で《今夜は有難うごさいました》とか、俺に送った様に送っているんだろうに、、、、何を考えているか全くわからない』


ベットに腰をかけて考え込んだ




 

沙都美が部屋に着いたらしく


インターホンが鳴る


『どんな顔をすれば良いのだろう』


そんな事を考えながらドアをゆっくりと開けた


部屋に入って来た沙都美の優しく男を引き込む表情を見ると


思わず抱きしめてしまった


『ああ、俺はこの子に惚れてしまっているんだな。この胸の中にこの子がいる事が幸せで、それで癒されているんだ』


「どうしたんですか勇輝さん。私もシャワー浴びたいです。それまで待って下さい」


そう言って離れようとするがギリギリ離れない位の力加減で対抗して男心をくすぐる


そのままベットに押し倒して沙都美を激しく求めた


始めこそ抵抗していた沙都美だが


しばらくすると受け入れておじさんはより引き込まれていった




シャワーを再び浴びて服を着ている


沙都美が入れ替わりにシャワーを浴びに行った


さっきまでより心は落ち着いている


勿論、柳沢との事は何も解決していない


それでもおじさんの心はどうにもならない状況からは脱したみたいだ




シャワーから出てきた濡れた髪の沙都美は


より魅力的だった




髪を乾かしている沙都美を見ているおじさんはやや沙都美の腰の辺りに手を触れながら心を落ち着かせている




ただ


普段お酒を全く飲まない沙都美


キスをした時に沙都美からアルコールの香りがした事


それが新たにおじさんを不安にさせていた








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ