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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
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色々な思い

会社に着くと貴則がスグに寄ってきた


「ちょっと良いですか」


「えっ、やだ」


素直な気持ちが口から出た


「いいですから、こっち来て下さい」


おじさんの意見は全く気にせずに空いている小部屋へ連れていかれた


「勇輝さん、亜紗美と付き合う気は無いですよね」


『歳の差が、、、』と言おうとしたが


沙都美と付き合ってる事が知れたらその時に恥ずかしいと思いやめておいた


「向こうがこんなおじさんに興味持たないよ」


「そうですよね、絶対俺の方がいいですもん」


ちょっと殴ってやりたくなったが、そこは大人の余裕で『だって俺は亜紗美くんに告白されたもん』


「俺が惚れられて無いからといって貴則が好きとは限らないだろ」


「えっ?なんでですか?そんな事は無いと思いますよ」


『ダメだ、コイツのライオンズハートには何を言っても、、、更にストーンヘッドだな』


「菊池さんがいるんだろう」


「はい。でも、それがなんで俺が惚れられない理由に?」


「いや、もう、、、お前は凄いよ」


「えっ、やっぱりそうですよね。俺って凄いんですよ」


「、、、、亜紗美くんがお前に惚れていたとして菊池さんはどうするんだ」


「アイツは何とか次を見つけると思いますよ。人気ありますし。それよりも経理の陣内が沙都美を狙ってるみたいですよ。勇輝さん勝てますか?」


「陣内が?いや、アイツはお前らの年代だと出世しそうな方だよな。勝てないかも」


「頑張って下さいよ。俺、陣内に負けたく無いんで奴の心に傷を付けてやって下さい」


『いや、ライバル心は出世争いだけでいいだろ』


「お前って、本当に自分に正直なヤツだな」


「よく女に言われます。そこが魅力なんですかね」


「そうかもね」


もはや適当に返答するしか無かった


「さあ、早く仕事しますよ勇輝さん」


『いや、お前の所為だよ。。。。あとな、、、まずは「おはようございます」だ』






さっきの会話で少し気になる、気になっている


『陣内、、、優秀なヤツだと聞いた事が有る。大丈夫か俺』


考えても仕方が無いのだが


沙都美が席にいない


今日は柳沢さんに会いに行っている


今の仕事の詰めをしてくる予定だ


スマホを取り出しメールをする


《陣内って知ってる?君を狙ってるらしいよ》


移動中であろう沙都美からすぐに返信が来た


《聞いた事が有ります。大丈夫ですよ、私は勇輝さんのモノですから》


そんな一文で心が暖かく落ち着く


《有難う》


《そこは有難うじゃ無くて、愛の言葉で返して下さい》


『難しいなぁ、、、正解探し』


おじさんは上司の方に次の仕事の大枠を話に行く

相変わらず関わりたく無いのか「任せる」の言葉しか貰えないが、報告もなしに仕事を進めるわけにも行かずに平行線の話をしていた





お昼休みになっても沙都美はまだ戻って来ておらず、1人寂しく公園でパンを食べている


さっき送ったメールの返信はまだ来ず


『珍しいな、いつもすぐ返信が有るのに』


そんな事を考えながらコーヒー牛乳を飲んでいた


昼休みも終わろうとしているので会社に戻ると、やはりまだ戻って来てはいなかった


しかし、仕事自体はたくさん抱えている為


仕事に取り掛かるしか無かった


14時を過ぎた頃、沙都美が会社に帰って来た


「スミマセン、遅くなってしまいまして」


「随分かかったね。問題でも有った?」


「いえ、、、」


何か気不味そうだ


「どうした?」


「柳沢さんにランチに誘われまして、断ったんですが断りきれず」


「ああ、そういう事ね」


「スミマセン」


「いや、良いんだけど。そういう時は連絡1つ入れるべきだと思うよ」


心の中ではこれは私情かどうか悩みながら言っていた


「スミマセン」


「まあ、次回からはちゃんと連絡入れようね」


「わかりました」


そう言って席に沙都美が戻って行った


スマホを見ると、まだ沙都美からの返信は来ていなかった


『見てないのかな?』


そんな事を考えながら仕事に取り掛かろうとすると


部屋の入り口に陣内が立っていた


席に着いた沙都美に何か話している


あまり関わらない人に愛想の良い沙都美が笑顔で応えている


ちょっとジェラシー


『中年の嫉妬はみっともないな』


そう思い仕事をした





仕事が終わり帰る準備をしていると


視線の先で沙都美がスマホを触っている


誰かにメールを送っている様だ


『帰りのお誘いが来るのかな』


そんな事を考えて机を片付けていた


気付けば隣に沙都美が居て


「わ、ビックリした」


「何ですか?私が可愛すぎてですか?」


「自信あるね」


「勇輝さんに言うのは有りじゃ無いですか?」


「まあ、そうだね。で、どうしたの?」


「一緒に帰りましょう」


「いいけど、方向違うよ」


「じゃあ、ご飯食べて帰りましょう」


周りに聞こえないかヒヤヒヤしているおじさん


「わかったから、ちょっとここじゃマズイよ」


さらに小声になって怪しい中年


「元々、一緒に仕事してるんですからご飯位普通ですよ」


「まあ、そうだね」


「今日はご飯食べたら帰りますね」


「え、、、うん」


「なんかヤラシイ事考えましたね」


「考えて無いよ」


沙都美は囁く様な小声で


「今日は家に帰って、明日洋服たくさん持って来ますね。いつでもお泊まり出来る様に準備です」


そう言って先に部屋から出て行った沙都美だった


周りを見渡すと


何となくコチラを気にしている者もいるが


そこまで関心を持っている人は居なそうだった


『亜紗美くんはまだ戻って無いしな』


おじさんは部屋の出口に向かって歩き出した





会社の外に出ると沙都美が待っていた


スマホを取り出して何かしていた


「勇輝さんに返信していなかったので今しちゃいました」


「いや、もう話してるでしょ」


「いいじゃ無いですか。いきましょう」


「何食べるの?」


「ファミレスでいいですよ。色々と有りますし」


「そうだね、駅の向こうのファミレスに行こうか」


前を歩き出した沙都美か振り返り


「手を繋げないのが残念です」


「まあ、公認カップルでも会社の前で手を繋ぐのは辛いと思うよ。見てる方も、繋いでる方も」


「そうですか?私は平気ですけど」




ご飯を食べた後、暗がりに連れていかれて


長くキスをされた時には


すっかり気分が高揚してしまっていたが


今夜は頑なに沙都美は家に帰っると言っていた


なぜなら綺麗なパンツが無かったからだ


名残惜しそうにおじさんを見る沙都美は


やはり表情や仕草で男心をくすぐるのが上手く


別れ辛くなったおじさんは隣の駅までゆっくり2人で歩いていた


途中、手を繋ぎながら

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