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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
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おじさんの驚き

沙都美の振り返りながらの視線に気付かないフリをしていて亜沙美も存在に気付かなかったが、


貴則の大きめの声でわざわざ話す自慢話が聞こえたので


「亜沙美が戻って来たのかな」


と思ったが、振り返って貴則の顔が視界に入ると気分が悪くなるので、資料を見ながら気付かないフリをしていた。


貴則は仕事が出来ないワケでは無いのだが、本人が思っている程には優秀では無い。

歳を重ねて経験を積んで行けば、いずれ出世をするとは思うが決して良い上司になれる人材では無い。


「亜沙美、今から飲みに行こうぜ」


断られる事など想像もしていないメンタルで貴則は亜沙美の肩に手を乗せている


亜沙美は困った顔をしているが、貴則は


「照れている」


ぐらいに思っているハートの強さだ


昨年は頻繁に沙都美を誘っていた

何回かは食事に行った様だが、それ以上は無かったというのが周りの噂だ


話の流れは何が食べたいかに進んでいる様だ


「今夜の約束は延期かな」


資料に目を落とすフリをしながら会話を聞いていた


他の男性社員も加わり何人かで飲みに行く話に変わっていく

貴則は迷惑そうだが、他の女性社員も加わりどうやら話がまとまりそうだ


おじさんの自分に明らかに一応誘います的な声がかけられたが

仕事が終わりそうも無いとお断りをした。



飲みに行く一団が出て行き静かになったフロアで明日先方に持って行く資料を作る


1時間位経った頃、周りの様子を見る様に振り返ると


亜沙美が自分の席に座ってこちらを見ていた


「・・・・・・」


悪戯っ子の様な笑顔をこちらに向けながら


「終わりそうですか?」


と、声をかけてくる


驚きのあまり返事を戸惑っていると


「明日の朝までにやらなきゃ行けない仕事が有るって言ってスグに戻って来ちゃいました」


今朝見た丈の短いワンピースに着替えた亜沙美は隣の席に移動して来た。


「その仕事を指示したのは貴則さんなんですけどね。忘れてたんですかね」


さっきの悪戯っ子ぽい笑顔がおじさんには眩しい

椅子に座ったまま近づいて来て


「終わりそうですか?どこに行きましょうか?」


椅子が引っ付きそうな程に亜沙美は距離を縮めてきた亜沙美の心地よい香りが疲れたおじさんの頭の中に広がった。


資料は明日の朝少し無理をしたら完成する程度には進んでいるが、一応上司に見せてから外出したい。


そんな様子に気付いた亜沙美は


「まだ待てますよ。手伝える事が有れば手伝いますし」


「あと30分位待てる」


時間が遅くなる事に申し訳無い気持ちになりながら


「明日にする?」


と、聞いてみると


「大丈夫です。なんなら今日も明日もでも歓迎です」


苦笑いしながら資料作りを再開すると、亜沙美は自分の席に戻り自分の仕事を始めた。


暫くすると亜沙美は出来上がった資料をプリントアウトしはじめた。


「貴則さんに会議用の資料も頼まれてて」


そう言って、やっと終わりそうな亜沙美の肩の力は抜けていた。




自分の資料が完成してお客さん用にプリントアウトしようとしたら、亜沙美がプリンターの色々なところを開けていた。


「どうした?」


近づいて行くと、紙が詰まってしまった様だ。


「結構ガッツリ詰まってしまって」


今時の複合機は滅多に詰まらない分、詰まった時は大変だ。


「まあ、頑張って治しましょう」


そう言って亜沙美を手伝い出すと


「もうすぐ終わってご飯だったのに」


と、薄っすら涙を浮かべている


「大袈裟だなぁ」と思いながら色々なところを触っていると


「付き合って下さい」


反対側を覗きながら言ってきた


「今夜、遅くなっても終電までなら付き合うし。明日も安いお店なら付き合うよ」


沙都美に声を掛けられている事も気になっていたが。。。


「違います。私を彼女にして下さい」


「⁇」


言葉が全く出なかった。


その時、亜沙美は自分の真横に移動して来ていた。

その距離は、さっきの椅子の距離の比ではなかった。



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