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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
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帰り道のおじさん

《ナプレ》でピザを美味しく食べ幸せ気分なおじさん


その隣には、そのおじさんの腕を軽くもって寄り添う様に歩く細身の20代半ば女性


不倫カップルに見えなくも無い


周りの視線は気になるが


断固として言いたい


自分は独身だと


そんな下らない事を考えながら駅への地下通路を歩く2人


「このままお家に行ったらダメなんですか?私、自信無くしちゃいますよぉ」


「いや、本当に部屋がヤバいんだ。女の子に見せれる状況じゃ無いんだ」


「片付け、一緒にしましょうか?」


「いや、遠慮しとくよ」


沙都美はやや膨れた様な顔をして可愛さを出す


この子にハマりそうなおじさんは


《あざとい》から


『可愛いかも』


と、受け取り方が変わって来ている


沙都美がさらに近付き腕に胸を密着させてくる


正直歩きづらいが、勿論そんな事言えるはずも無く


やや興奮しながら歩く


心の中では


『ホテルに行こうか?』


と、何度も呟いている


腰抜けなおじさんは


その一言が言えない


沙都美も本当はもう一度ホテルに誘いたい


だが、キスを自分からした事に


プライドも有って


『今度は言って欲しい』


と、思ってしまった


改札が見えて来て


2人の歩くスピードはやや遅くなる


どちらも言いたい事が有るのに口に出さず


会話はさっき食べたピザの話になってしまった


改札の前で2人は立ち止まり


本当に言いたい事を口に出さず


当たり障りの無い会話を続ける


しばらく話していたが


沙都美はやはり我慢できず


「帰るんですか?」


甘い声と表情でおじさんの脳を溶かす


『ホテルに行きたい』


この歳でそれが言えない


違う


言えなくなったままの


そんなおじさん


「帰ろうか」


そう言いながら


自分でも感情の無い喋り方だと思う




川辺で対岸を見て


カップルが幸せそうに過ごしている


僕は1人なのに


今日も会社で嫌な事が有ったのに


晩御飯はコンビニのおにぎりなのに




しかし


近づいて見てみれば


彼女は泣いているかも知れないし


別れ話をしているかも知れない




全てはかも知れない


人は人を喜ばせ


傷付けて


傷付けた事に


自分が傷付き


その人が笑顔になってくれれば


こちらも癒され笑顔になれる




人との繋がりが


心を揺さぶり


感情が生まれる




それをずっと避けて来た自分


人を喜ばせる余裕


人を傷付ける勇気


それを取り戻さなければ




近付いて


この生暖かい空気を思い出した


近付いて


女性と触れ合う喜びを思い出した


そして


忘れようとしていた心の奥を思い出した




沙都美はおじさんの声を待っている


『自分はまだサヨナラを出来てない人がいる』


「今日は、、、まだ、、、帰るよ」


「まだ?どういうことですか?」


「まだ、、、ケジメが必要かなと、、、今、君とここで離れるのはサミシイ。もう少し一緒に居たい。。。そう思ってる。でもね、、、、、僕はねもう少し近付いて見なきゃいけないモノが有るんだ。勿論、君の事も」


「近付いて見なきゃいけないモノ?」


「そう、人から逃げてばかりだったから。今、君からも逃げようとしているのかも知れないけど、もう少し一緒に居たいと思ってる事は本当だし。。。もっと沙都美くんの事が知りたい。。。また、今日みたいなデートみたいな事してくれるかい?」


沙都美は柔らかく微笑んだ


「もちろんです。でも、デートみたいな事じゃなくて、、、ちゃんとデートです」


可愛らしく妖しい少女か大人になる様な笑顔に


心が吸い込まれる事を受け入れているおじさんがそこにいた

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