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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
24/55

懐かしく無い街

今週も投稿しました


よろしくお願いします

実家の有る駅で降り


ロータリーに出る


あまり懐かしくは無い風景だ


仕事を始めてすぐに一人暮らしを始めたおじさんは


あまり帰ってくる事は無かった


年に数回母親には会うが


もっぱら母親が父親を連れて会いに来る


街並みは家を出た時とはすっかり変わり


同級生達もほとんどこの街には住んで居ない


まあ、知る範囲ではだが、、、




駅前のコンビニに入り飲み物を買う


実家には甘いジュースや炭酸水は置いていない


父親はもっぱら母親にお茶やコーヒーをいれて貰い


お菓子を頬張っている




裏路地に入り歩いていると懐かしい畳屋がまだ閉店せずにやっている


子供の頃からよく覗いていた


知り合いというわけでは無いが少し嬉しい気分になった


裏路地を抜けると大きな公園に出る


おじさんは少し胸が苦しくなった


遊具はすっかり変わってしまっている


公園も昔より綺麗に整備されている


それでも、、、


彼女の事を思い出す


虫も出てこない寒い冬のベンチ


コンビニのおでんを食べながら見た桜


汗だくになりながらふざけ合った人口の川


喧嘩をして


黄色く染まったイチョウの下で泣いていた君


おじさんは早歩きになりながら大きな公園を抜けて奥の裏路地に入った


そこに有った駄菓子屋は無くなって綺麗なビルになっていた


しかし、その先には冷房の無い焼肉屋


夏にどうしても食べたくなり


2人で行ってその暑さに笑い合った


廃れた商店街


小さなスーパーの様な食品店


もう、実家はすぐそこだ


足早に、、、いやひょっとしたら少し走っていたかも知れない


実家の有るマンションの前に気づけば立っていた


色々な事が頭に浮かび上がり


少し立ちくらみがした


道の反対側に有る段差に腰をかけ


目を瞑る


彼女に言われた優しい言葉


いつも自分からは手を繋ぐ事が出来ない変なポリシーを持っていた自分に


腕を組んで来たり


ポケットに手を入れて来て


指を絡めて来てくれた


いつも優しくしてくれていた彼女を思い出す


『愛されていると信じていたのに』


そんな想いが溢れてくる


[人の気持ちを信じる


それは人に期待してるという事


人を決めつけているという事


人は自分にとってこう有るべきだと、、、]


何度自分に言い聞かせただろうか


もう、何年前の事だと思っているのか


生きていてくれたら


もう少し素直に恨めたのに


心から憎めたのに


自分の気持ちが


彼女をどう想いたいのかも解らない


それでも、、、それでも、、、


1人では生きられなくて


人にすがって、もたれ掛かって


何とかやってこれた


『もう一度、人の気持ちを信じたい。


でも、、、怖いんだ』


実家を目の前にしておじさんは佇んでいる


色々と考えて落ち着いた頃


携帯には沙都美からのメールが来ていた


《お茶でもしませんか、勇輝さんの好きな甘い物食べに行くのも良いですね》


今はこの誘いに、この子にすがってみたい気持ちだった


メールに返信をし


実家のドアノブに炭酸水とお菓子を掛けて


駅へと再び歩き出した

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