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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
22/55

いつも通りの朝と唇と

いつも読んで頂き有難うございます

いつも通りの朝だった


しかし、亜紗美の機嫌が良い気がする


いつもコチラを見て視線が合うと表情が強張っていたが、今朝は目が合うと笑顔で返して来た


それが気になって仕方が無い


沙都美はおじさんの所に近付き仕事の話をする


頼りなさ気だが、確実な返答が返って来る


『勇輝さんはもう少し自信を持って発言すれば確実に出世するのに』


そんな事を思いながら、最後に気になっていた事を聞く


「昨夜は亜紗美と何か有りました?」


「別に何も無いよ、、、」


そうパソコンを見ながら応えたおじさんの表情は見れなかったが、何か腑に落ちない沙都美だった




いつも通りの朝だ


沙都美と部屋の入り口で挨拶をする


「おはようございます」


チラッとコチラを見る沙都美


「おはよう」


大丈夫、今日は沙都美の自信の有りそうな目を見ても心が動揺しない


自然と身体の力が抜け柔らかい表情で他の人にも挨拶が出来た


そうすると、何故か皆んなからの挨拶もより明るく感じられ


いつも通りの朝なのに視界が明るく感じられた


『さあ、貴則さんと今日も外回り頑張るぞ』


「貴則さん、今日も頑張りましょう」


「お、おう」


いつもより少し元気になった亜紗美の勢に貴則は戸惑っていた





いつも通りの朝、、、では無い


もう、頭の中はグチャグチャで有る


『沙都美君も亜紗美君もどうしたんだろう。ちゃんと良い人を探せば良いのに。こんなおじさんは少し関わったら「やっぱり違う」となるんだから』


パソコンを見ながらそんな事を考えていた


沙都美が近付いて来て仕事の話をする


「この件は新しい資料は柳沢さんにメールしちゃっても良いですか?」


「そうだね、、、いいよ、、、いや、、、向こうからの連絡が来てからにしよう、、、多分、、、その方がインパクトを与えれると思うんだよね」


「わかりました」


その後何点かの質問に応えて席に戻るかと思った時


「昨夜は亜紗美と何か有りました?」


『えっ?何か特別な能力を持っているのか、この子は⁇今は振り向いちゃいけない、、、冷静に応えろ』


「別に何も無いよ、、、」


肩に凄く力が入っている


「そうですか、わかりました」


そう言って沙都美は席に戻った





沙都美は柳沢に連絡を取るつもりだったが、後にする事になったので


勇輝の仕事で無い普段の仕事をこなす事にした


お昼頃になりメールをチェックすると柳沢からのメールが有った


それを読んでCCで入っていたおじさんに質問をしようとしたが、席に居ないようだ


「沙都美さん、柳沢さんて方から電話なんですが、、、勇輝さんが席を外してると伝えたら沙都美さんに代わって欲しいと言われまして」


後輩が電話がある事を伝えて来た


「わかった、私が出るわ」


柳沢からの電話は自分の資料はどうかという質問だった


『送って来てまだ30分経って無いのに。この人は出来る人なのか?マイペースなのか?』


話を聞いていると、自分の提案にかなり自信が有るらしい


『何がしたいのだろう?私にアピールしても仕方ないのに、、、勇輝さんに話さないと、、、ダメじゃ無い?』


戸惑いながら柳沢の話を聞いていた


しかし、そこは流石の沙都美で有る


相手が話していて気持ちが良いように考えて返事をしている


「そうなんですか!凄く考えられてますね!」


兎に角、柳沢は話していて気持ちが良かった


やっと電話が終わった頃におじさんは部屋に帰って来た


電話があった旨とメールの件を伝えると


席に着いてメールの内容と送られて来た資料を見ながら考えている


すると、おもむろにパソコンを開き何かを始めた


5分後


「沙都美君」


そう言ってコチラを見る


「今、朝言ってた資料を少し修正したから確認して。これで話が結構進むと思うよ」


そう言ってこっちを見て笑う


沙都美はその笑顔を見て胸が疼いた


そして、普段引き攣った笑い方が多いおじさんの柔らかい笑顔を写真に撮りたいとさえ思った


「どうした?」


「なんでもないです」


少し、ボーっとして返事をしなかった沙都美を変に思ったおじさんは首を傾げていた


「作戦勝ちですか?」


「多分ね」


そう言ったおじさんは軽く笑ったが、さっき程の自然な笑顔では無かった




「お昼に行きましょう」


「いや、、、あの、、、」


「今日はパンを買って公園で食べましょう」


そう言っておじさんを外に連れ出す


「明日には給料出ますね」


「そうだね、、、」


「ご飯行きましょうね」


「安めのところでお願いしたいね」


「私も払いますよ。でも、安いところで全然大丈夫ですよ」


「それだと助かるよ」


「安いところの方が回数行けるじゃ無いですか」


「何回も行くの?」


「はい」


「それはちょっと、、、」


「なんでですか?」


「いや、、、ちょっと、、、」


「酷い、唇を奪ったのに」


沙都美は笑いながら言う


「いや、奪ったのは君だろう」


周りを見ながら少し焦っているおじさんが愛おしい


「キスした事は事実ですからね」


「そうだけど」


「次はどうなるのかなぁ〜」


「おじさんを揶揄うんじゃないよ」


「からかってません」


そう言いながらパン屋でパンを買い2人で公園で食べていた


「今日は一緒に歩きましょうね」


「おじさんに痩せろと?」


「違います。勇輝さん細いじゃ無いですか」


『いや、中年はお腹が出て来るのだよ』


「早く帰って自分のやりたい事やったら?」


「じゃあやりたい事やります」




残業を短めに終えて駅に向かって歩いていた筈だった


「勇輝さん、コッチですよ」


そう言って腕を引っ張る沙都美


「いや、電車に乗るし」


そうすると小声で


「これがやりたい事です。。。キスした事、誰かに言っちゃおうかなぁ」


「ちょっと、、、」


「行きますよ」


腕を引っ張りながら隣の駅へと歩き出す


『どうしてこうなった?』


おじさんは何か話している沙都美に返事をしながらそう考えていた


「話、聞いてませんね」


「えっ、聞いてるよ」


「聞いてません、、、こうしてやる」


そう言って正面から抱きしめて来た


「こらこら、人に見られるよ」


「ここまで来たら会社の人はいません、、、嫌ですか?」


身長の高い沙都美の顔は目の前に有る


涙は浮かべていないが亜紗美とはプレッシャーの力が違う


「嫌じゃ無いけど、、、」


「じゃあ、キスして下さい」


「いや、ちょっと、、、出来ないよ」


「してくれないと離れませんよ」


「、、、、、」


そっと目を閉じて待っている沙都美


『いいのか?ここでキスしていいのか?したく無いって言ったら嘘になる。。。でも本当にいいのか俺?』


頭の中で格闘していると


「いくじなし」


そう言って沙都美は肩のあたりに頭をもたれかけて来た


「そうだね、意気地なしだね」


「離れてあげないもん」


「そんなに刺激するなよ。おじさんも若い子にそんなに迫られたら大変なんだよ」


「我慢してるんですか?」


「我慢してるよ」


肩から顔の前に沙都美の頭が移り


「我慢って事はしたいって事ですよね」


そう言って嬉しそうな顔をする


「、、、、、したく無いわけじゃ無いけど」


「、、、すればいいのに」


そう言って凄く可愛い表情をする


正直、女性が得意で無いおじさんはもう限界で有る


「明日も一緒に帰ってくれますか?そうしたら離れてあげます」


そう言って首に手を回して来た


更に顔が近付いて、キスされるのかと軽く身を引きそのままの状態で応える


「わかった、一緒に帰るよ」


そう言うと、沙都美は首筋に軽く唇を当ててキスして来た


腕を首から離しておじさんの唇を指で触る


『逃げなかった』


沙都美は心の中でガッツポーズをした。


事実、おじさんは軽く身を引いただけで顔は沙都美を見たままだった。唇にキスしようとしたら簡単に出来たので有る


指でおじさんの唇をなぞりながら


「明日はコレ、、、貰えますかね」


「あげないよ」


首をスッと横に向け指を外した


その表情は感情が読み取り辛かった




再び歩き出した2人は何も無かった様に他愛の無い話をしながら歩いていた


隣の駅に着き


2人は別々の電車に乗った


電車に揺られながらおじさんは自分の唇を触った


『俺は、、、キスされたかったのか?』


そんな自分に戸惑いながら


さっきまでの沙都美の顔を思い出していた



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