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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
21/55

帰り道は情熱的に

「こらこらこらこら、会社の最寄りの駅だぞ」


「もう、皆んな帰ってたじゃ無いですか?」


「寄り道して呑んで帰るヤツもいるだろ」


「そうですね。じゃあ、見つかっちゃいましょう」


「ダメだ」


そう言って亜紗美を引き剥がす


「ずーと、勇輝さん不足だったんですよ」


「なんだそれ」


おじさんの乗る電車がホームに止まろうとしている


「じゃあ、俺は帰るからね」


そう言って、電車に乗ると


なぜか亜紗美も一緒に乗っている


「何してるの」


「途中まで付いて行きます」


「えっ?」


「お話位させて下さい。それとも泊めてくれるんですか?」


「泊めません。家に入れません」


「ケチ」


なんか、最近よく聞く言葉だ


「勇輝さんの家って誰か遊びに来たりしてないですか」


何か聞きたそうな顔をしている


「沙都美君どころか誰も家に上げてないよ」


「そうなんですか」


何故か少し嬉しそうにしている


「まさか俺が沙都美君を家に泊めていると思ってたの?」


「なんか最近の沙都美さんから自信が感じられて。悔しくて、、、色々と考えちゃいました」


おじさんはもはや何も言う気がせず、亜紗美の話を聞きながらただ頷いていた


貴則との仕事の話


沙都美君の話


取引先での話


ただ、色々と話を聞いて欲しいのだろう


そうこうしているうちに、乗り換えの駅に着いた


「じゃあ、俺はここで乗り換えだから」


「本当に家に行ったらダメですか」


「ダメだよ」


「そうですか、、、私、、私いつでも覚悟は出来てますから。ちゃんと準備しておきます。いつでも誘って下さい」


降りたホームで顔を真っ赤にして、やや大きめの声でそう言った


周りはビックリした様に亜紗美とおじさんを交互に見ているが、誰一人足を止める事なくエスカレーターに吸い込まれていく


「ちょっと流石に恥ずかしいよ」


「なんでですか、、、言ってる私の方が恥ずかしいに決まってるじゃ無いですか。ちゃんと受け止めて下さい」


「わかったよ。考えとく。だから今日は帰りな」


亜紗美が戻る為の方向の電車がホームに入ってきた


亜紗美の背中にそっと手を当てて、帰るように促す


「迷惑ですか?」


「迷惑じゃ無いよ、、、ただ、こういうのに慣れてはいないよ」






頬が少し赤い


胸の鼓動はいつもより強く感じる


興奮しているのだろう


『久々に勇輝さんとちゃんと話せた。アピールもちゃんと出来た。沙都美さんとの差はそんなに無いはずだ』


座席に座ってスマホを触っているが実際は何も見てはいない。


SNSの写真をただスクロールしているだけだ


実は勇輝が住んでいる街の駅はまだ知らない


教えて貰えないのだ


沙都美もまだ知らない様だったが、知っていても教えてくれないし「知らない」と答えるだろう


元々、2人はもう少し仲が良かった


入社したばかりの亜紗美の事を沙都美はよく面倒をみていた


入社して2ヶ月くらいして亜紗美が周りの人達と話す様になり、お酒を呑んで帰る様になってきた頃から


沙都美は亜紗美と距離を取り出した


沙都美が呑まない事もあって一緒に行く事は無かった


ある時から話しかけても素っ気ない返事しかしてくれなくなり、基本的に向こうから話しかけてくる事も無くなった


しかし、亜紗美は入社して「サミシイ時に凄くお世話になった」という思いも有り


1日に1度は話掛けようと試みていた


会話にならない日も多かったが


時々、笑顔で話してくれる事があった


それをずっと考えていると、甘い物の話と勇輝さんが関わる事だと気付いた


その日から普段は気にもしていなかったおじさんの事をよく見る様になった


いつも人より目立たない様にしていて


困っていたら手伝うわけでは無いが声を掛けて


よく1人残って仕事をしていた


女性にあまり話しかける事は無く


話しても仕事以外の話はしていなかった


そうこうしているウチに自分もおじさんに話し掛けてみる様になり


返事に感情があまり無かったので『冷たい人だな』と思っていたが


何回か話し掛けているウチに、こちらの今まで話した内容はちゃんと覚えていて


こちらが困っていた事は


いつの間にか問題では無くなっていた


そのお礼を言ってみても


返事は素っ気なくあまり女性と関わらなくしているだけな感じがしていた


数ヶ月経ったある日


「亜紗美、これ持って」


と、久しぶりに自分から話し掛けてきた沙都美が鞄を渡して来た


「??」


な顔をしていると


「勇輝さん、きっと帰りたがってるから。私達で帰してあげよう」


「勇輝さん、、、」


「気になってるんでしょ。毎日ずっと見てるよ」


「沙都美さんだって、よく勇輝さんの事見てるじゃ無いですか」


「亜紗美ほど関わりに行けてないけどね」


こんな会話をしていて


亜紗美は自分が毎日の様に勇輝の事を考えている事を


『これは恋なのかも』


と、気付き出した時であった


「沙都美さんは勇輝さんの事好きなんですか?」


「さあ、どうだと思う?ひみつ」


そう言って女性が見ても可愛いと思う笑顔を作った


「これはライバルが強すぎるです」


「んっ?」


「その笑顔を向けられたら、誰だってクラッて来ちゃいますよ」


沙都美は先程と違い半笑いの顔になり


「毎日、何を見てるの?そんな事でコッチを見てくれる人だと思う?私だって頑張って存在のアピールを何度もしてるわよ。ただ、今だにどうやったら効果的か解ってないから困ってるのよ」


そう言いながらエレベーターを降り、おじさんを探す


一階のホールには居ないらしく外に別々に探しに出た


そこにパンを食べているおじさんがいた


こちらに気付く様子が少し離れた同じ壁にそっともたれておじさんがこちらに気付くのを待った


そうこうしているウチに亜紗美もやって来て


おじさんを2人の掛け合いでうまく誘い出し食事に出かけるのであった



その帰り道、沙都美と亜紗美は暑苦し程におじさんの事を話しながら電車に揺られていた

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