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Mousse chocolat framboise 〜 おじさんのお話 〜  作者: カフェと吟遊詩人
20/55

希望と絶望と

読んで頂きありがとうございます



これで、一度過去のお話は終了予定です

勇輝と秋寛はかなり長い時間を今のカフェで過ごしているので場所を変える事にした。


2人で居酒屋に移動して水野さんを待った


水野さんを待つまでに秋寛は既に飲み始めていたが勇輝はお酒に弱い事も有るが、心ここに在らずの状態でお酒どころでは無かった


水野さんが付いたのは店を変えて30分後位だった


現れたその姿は学生の時ほど若々しくは無いが、新妻の雰囲気が出ており色気が感じられたが


その顔は無表情で勇輝を見るなり、その表情はさらに固くなっていった


「久し振りぃ」


秋寛は陽気に話しかけたが、水野さんは軽く表情を緩めたのみで


勇輝の方を強く見ていた


「なんか、顔、、、暗くなったね」


水野さんがやっと言葉を口にした


「そう、、かな」


「試験はどうなったの?」


「今年がラストチャンスかな」


「そう。頑張ってね」


表情はほぼ変わらない


たまらず秋寛が


「メールの件なんだけど」


と、話し始めると


「私は試験なんて受けなきゃ良いのにって思ってたよ」


と、唐突に言い放った


「えっ、なんで?」


「なんでもよ」


「それはやっぱり沖川さんは本当は勇輝の事を好きだったって事」


しばらく水野さんは黙っている


2人も何も言葉は発せれ無かった


1分位沈黙が有っただろうか


「本当は言いたく無いんだけど、勇輝君が試験を受ける事であの子は色々と悩み考えていたのよ」


「、、、、」


「そして、悩み疲れていた時に、、、会社ですごく優しい先輩があの子に告白して来たの」


「えっ?」


「最初は当たり前の様に断ってだんだけど、あまりに紳士的で優しかったらしく。。。そのうち勇輝君の事を相談する様になったりして距離が近づいて行ったみたい。。。そして、、、もう一度告白されて、、、ちゃんと別れを言ってからじゃ無いと付き合えないってなって、、、」


水野さんは苦しそうに言い辛そうに話している


「、、、その人と向き合って、、、、、その人が仙台に移動になって、、、、、その人とちゃんと向き合うには、、、」


水野さんの呼吸が乱れている


「向き合うには、、、勇輝君との関係をちゃんとしなきゃとなって、、、、メールを送って、、、勇輝君と別れたみたい」


「それで、、、、仙台に行って、、、、病気が見つかって、、、、、コッチに戻ってきて、、、、、、入院してたんだけど、、、死んじゃって、、、最後、、、バチが当たっちゃったなんて言ってて、、、」


言葉にならない位に水野さんが泣き始め、、、2人はこれ以上何も聞けなくなってしまった





水野さんが落ち着いた頃


3人で


「天国の沖川さんに」


と、秋寛の音頭で乾杯をして別れた






次の日、秋寛が連絡も無く家に来た


「大丈夫か?」


「大丈夫だよ、、、変な期待をしてた分。。。傷付きはしたけど。。。なんか、彼女を恨む事がちゃんと出来て楽になった気もする」


「そうか、、、」


「勉強は出来そうか?」


「わかんないけど、、、ラストチャンスだから」


「駄目だったとしても、、、俺の取引先とか、、、紹介してやるから、、、思いっ切り頑張れよ」


「ありがとう」


そう言って秋寛は帰って行った




窓のに写る自分を見ながら考え込んでいた


『俺が会計士を目指した事はダメな事なのか?普通に就職するという現実が嫌で夢を見た事はダメな事なのか?俺はやはり愛されて無かったのか、、、』


どれ位振りだろうか。。。涙が頬を伝う


『俺は哀しいのか?悔しいのか?情けないのか?』


自分の感情すら分からず、時間だけが過ぎて行く


『あの、「愛してると」言ってくれた夜。その次の日には別の男の事を考えていたって事か』


『いや、違う。「愛してる」と言った言葉が俺じゃ無い人に言ってたと言う事?嘘だったって事?』


『なんで、今さらアイツの事で泣かなきゃいけないんだ、、、俺は、、、俺は、、、あの夜、、人生で1番幸せだったんだ。人生で1番人を信用出来た。。。』


涙が止まらない


「うぐっ」


嗚咽する


『そんな夜が明けたら、絶望に落ちて、、、もう誰の愛も信じれなくなって、、、、』


『まだ、アイツに心を揺さぶられなきゃ行かないのか?」』


『なんで、、、なんで、、、なん、、死んだんだよ。文句の一つも、、、せめて、、せめて言わせろよ』


止まる事のない涙は、会えなくなったあの日以来、、、いや、それ以上の涙が勇輝の袖を濡らしていた


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