それぞれのやり方
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沙都美はやはり優秀だ
ひょっとしたら貴則は自分より沙都美の方が仕事が出来る事に気付いて、自尊心が傷付くのが嫌で距離を取ったのかも知れない。
まあ、はなから沙都美は相手にしてなかったみたいだが
おじさんが沙都美に仕事を頼むとその周りの仕事ごと持って行ってくれる
しかもミスがほぼ無く完全に任せる事が出来る
おじさんは自分がやるべき事に集中して一気に仕事が動いていく事を感じていた。
柳沢さんと電話で今後の仕事の進め方などを相談していると、次の仕事の件は柳沢さんの先輩が担当に代わる事になったらしい。
柳沢さんは別件で仕事をすでに抱えているらしい。
窓口が別々になり少し面倒になったが、今のところ沙都美のフォローでうまく仕事は進んでいた。
亜紗美は貴則を乗せるのが上手いのか、貴則の仕事が持ち前のポジティブさで上手く行っている様だ。
貴則のプレゼンや段取りは破茶滅茶らしいが、先方はその勢いを信じて仕事をしてみようと思うらしい。
亜紗美も必死になって食らい付いて、仕事をドンドン吸収している様だ。
だが、亜紗美も貴則の様に勢いで仕事をする様になりそうで周りの人間は少し困っている。
『ウチの部署、今調子いいなあ』
おじさんはそんな事を思いながら沙都美の作った資料をチェックしている
『うーん、見やすいなぁ』
沙都美の方とチラッと見ると、こちらを見て笑顔を返してくる
見る人が見たら付き合ってる様な感じに見えるだろう。
残業も終わり、沙都美と駅に向かう
心なしか2人の歩く距離が近い
少し気不味くなっておじさんが距離を取ろうとすると近づいて来る
「誰かに見られるよ」
そう沙都美に告げると
「それは、見られなければ近付いて良いって許可が出たって事ですね」
「そういう意味じゃ無くて、、、」
自分でもビックリした。2人の距離よりも人目の方を気にしていた事に
「今夜、勇輝さんの家に行って良いですか?」
「、、、ダメです。おじさんを揶揄うんじゃ無いよ」
「揶揄ってる様に見えますか」
「君みたいに綺麗な子が近付いて来る事が信じれる程、良い人生を歩いてきてないよ」
「私が綺麗?そんな事はないですけど。。。。じゃあ、今から最高の人生が訪れるって事ですね」
「凄いね。自信が」
「今まで失恋もして来てますし、綺麗な自信は有りませんが。勇輝さんを幸せにする努力を誰よりもする自信は有ります」
「ありがとう」
「真面目に聞いて下さい」
「取り敢えず、僕達は残念ながら逆方向。この改札を越えたら別々の家路だよ」
そう言いながら改札に入る
「本当に行ったらダメなんですか?」
「明日、同じ服着てたら皆んなに言われちゃうよ」
「勇輝さんと疑われるなら全然良いんですけど」
「君の評価は嬉しいけど。周りの僕に対する評価はもっと低いよ。現にこの年でまだ主任だよ」
「私は勇輝さんが1番です」
「ありがとう。ほら電車が来たよ」
「私が見送りたいです」
「女の子が何言ってるんだい。早く乗りな」
寂しそうに電車に乗った沙都美は見えなくなるまで小さく手を振っていた
電車を待っていると沙都美からメールが来ていた
《今度は服持ってチャレンジします》
苦笑いしながら返信しようとしていると
階段の上から貴則と亜紗美が降りて来た
「勇輝さん」
亜紗美が嬉しそうに近寄って来る。貴則は少しムスっとした顔をした。
『そう怒るなよ貴則。俺だって今の状況は意味がわからないんだ』
「勇輝さん、今日も遅いんすね」
「貴則達も遅いんだな」
「そうなんですよ、、、、今日も、、」
貴則の自慢話が始まった
勇輝の乗る電車がホームにやって来たが
気の利かない貴則は話を聞いて欲しそうだ
電車に乗ろうと話を遮ろうとするが、亜紗美と2人で話を続けようとする
仕方なく電車をやり過ごすと、すぐに2人の乗る電車が来た
するとパッと話を止めて電車に乗ろうとする貴則
『このやろう』
心の中で言ってやったが面倒臭いので口には出さない
「あっ!忘れ物しちゃいました」
亜紗美が一度乗った電車を降りる
「えっ?会社に戻るのか?」
「貴則さん、スミマセン。先に帰ってて下さい」
貴則の乗った電車の扉は閉まり、ホームに2人が残された。
亜紗美はおじさんの顔を見て小さく舌を出し
「作戦成功です」
そう言うと、驚くほどのスピードでおじさんを抱きしめた