涙に濡れた頬と朝
少し短いです
読んで頂きありがとうございます
気付けば寝ていたらしい
デスクには少しヨダレの跡も有る
いや、これは涙の跡だな
目元が濡れている事が何となく恥ずかしくてシャツの袖で慌てて拭う
『なんで今更こんな夢を見るんだろう』
『最近、恋愛っぽい事をしているからかな』
『、、、、、、』
やや口に出しながら考えていると
背後から声がした
「おはようございます。何をブツブツ言ってるんですか?」
部屋の入り口に沙都美が立っていた
「んっ?もうそんな時間?」
「いえ、勇輝さんに会う為に早く出勤してきました」
そう言ってパンと飲み物を差し出してくれる
勇輝の好きな雪印のコーヒー牛乳が袋に入っていた
『なんか、夢を見たからか懐かしいな。彼女もよく買ってくれた』
「どうかしたんですか?やっと私の顔を好きになってくれました」
気付けば沙都美の顔を見ていたらしく、慌てて目を逸らす
昨日の事を思い出しながら
「有難う。給料が出たらお礼するね」
「約束ですよ!昨夜はスッポかされましたからね」
「あっ!ごめんね」
「仕事だから我慢します」
「有難う」
「でも、、、」
「なに?」
「キスしてください」
「、、、、、、」
「あの、言う方も恥ずかしいんですけど」
「何をからかってるんだか」
からかわれている訳では無い事はわかっているが、その場をはぐらかす為に気付いて無いふりをして、貰った朝ごはんを食べだす
「ケチですね」
聞こえるか聞こえないかな声で沙都美はそう言い
背後から勇輝の頭を抱きしめた
小さな胸が後頭部に感じられ恥ずかしい気持ちになる
「今朝はこれで我慢してあげます。食べ終わったら仕事の指示お願いしますね」
そう言いながらなかなか離れようとしない
「誰か来ちゃうよ」
焦りながら言葉を絞り出すと
「亜紗美が来ないかな。見せつけてやるんです」
「コラコラコラ」
そう言いながら沙都美の手を優しくどける
「顔を洗って、歯を磨いてくるよ」
何とかその場から逃れて顔を洗いに部屋を出た
顔を洗い歯を磨いてスッキリはしたが、おじさんは体臭が気になるお年頃だ
汗拭きシートなど持っている訳もなく、ペーパータオルにアルコールを染み込ませて身体を拭く
シャツにも何となくアルコールをふりかけてみた
『加齢臭しないかな』
そんな事を考えながら部屋に戻るとすでに何人かが出社して来ていた
「おはようございます」
おじさんは部屋に入りながら挨拶をしデスクに戻る
「おはようございます」
部屋に亜紗美が駆け込んでくる。いつもと変わらない時間に出社してると思われるが少し焦っていた。
沙都美はそれを見、少し余裕すら感じる雰囲気で亜紗美の顔を〈見て〉
「おはよう」
とだけ言っていた。
何故か悔しそうな顔をした亜紗美はデスクに座りパソコンに向かった