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プロローグ

 日差しが厳しい真夏の日。

 俺は購買で買ったヨーグルトを飲みながら、学校の屋上の端いた。

 

 購買で買ったヨーグルトを飲みながら、外の景色を眺める。

 それは、俺のつまらない学校生活の中で数少ない嗜みの一つだ。


 物心ついた時から、父はいなかったし、小さいときに母も死んだ。

 父は家を捨て、母は何とか俺を養おうとブラック企業に勤め、過労死した。

 

 親戚の叔父さんに、仕送りをしてぎりぎり生活してきた。

 それでなんだかんだで17歳。

 運動はまぁまぁできていたが、部活には入らなかった。

 

 教室ではいつも一人でいた。誰も声をかけてくれないし、授業中先生にも指名されないほどだった。

 

 朝起きて、ご飯作って、授業受けて、飯食って、午後の授業受けて、家帰って、テレビ見て、寝る。

 そんなくだらない一日の繰り返し。


 でも、なんでこんなことに……


 「なんだよ、あの男は!?」


 「知らないって……」


 「ふざけるなっ!僕は見たんだ!お前があの男とキスしているところを!」


 「だから、知らないってば!」


 目の前で繰り出される昼ドラみたいな諍いに、俺は呆然としながら見ていた。

 はぁ、俺にどうしろってんだよ、このシチュエーションで……


 「僕はあんなに君のことを愛していたのに……なんでこんなことをするんだ!」


 「きゃっ、ちょっと何するのよ!」


 「このっ……阿婆擦れが!」


 「やめてってば……痛いっ、痛いよ!」


 男が女の後ろ髪を掴み、上に引っ張る。

 女は目に涙を浮かべていた。


 ……これは流石に止めた方がいいのでは?


 「ねぇ……落ち着いて話をしよ?」


 女が男の左頬に手を添える。


 「うるさい黙れ!僕に触るなっ!」


 男は女を思いっきり突き飛ばした。

 しかも、その先には俺がいたにも関わらず。


 「え、ちょっ――」


 女が俺にぶつかる。残念なことに、俺が通っている学校には、落下防止のフェンスがないため、俺の体はあっさり屋上から落下した。


 コツンッ! という鈍い落下音が響き、それを見たであろう誰かの悲鳴が上がる。


 視界が赤く染まる。意識が朦朧としてきた。


 「大丈夫ですか!? 誰か、救急車っ!」


 駆け付けた女子生徒が、俺の体を揺さぶりながら泣き叫ぶ。


 あれ、この子、どこかで―――――――










 俺の意識は、そこで途絶えた。

 

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