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それでは、ご飯にしましょうか!

ごっはんだ、ごっはんだー!

佃煮やさんの昆布ってなんであんなに美味しいんでしょうねえ。


ついついごはんを食べ過ぎちゃうんですよ!(汗

お風呂でホカホカになったゆーたんは、タロ兄ちゃんのお膝に載せて貰ってご飯タイムです。


タロ兄ちゃんと二人で、いただきますと小さな手をあわせてご挨拶。


お茶の間のちゃぶ台の上には、大皿に入った大ぶりの肉団子と白菜、キノコのトロトロ煮が湯気をあげている。

野菜の類が少ないかと拍子木状に切られたゆず大根が箸休めでだされており、お出汁であたためた豆腐には、ピリっと辛みのある生姜と昆布の佃煮がのせてある。

お味噌汁は、椎茸とふわふわ卵。今日の桑月家の夕飯は比較的柔らかいものが多くなった。


食卓には父が既に座っていて、豆腐をつまみに晩酌を開始中。

「あ、この生姜昆布、うめぇ・・・。にーちゃんおかわりっ!」


「はい、どうぞ。ゆーたんもお豆腐食べますか? ごはんに混ぜてあげましょうね」

父ちゃんの取り皿に生姜昆布を入れながら、ゆーたんに話かける。


小さな子供用のお茶碗は、健斗の小さい時のもの。

小さい時からよく食べる健斗は、程なく大人と同じお茶碗を使うようになってしまったので、子供用のお茶碗は未だに新品同様だ。


小さな茶碗にごはんをよそい、お出汁で炊いた豆腐を置いて混ぜ込んでいく。

柔らかな豆腐で口あたりがよくなり、小さい子や病人でも食べやすいのだ。夏は冷たい豆腐を載せて食べると、暑い時でも食が進んでしまう。


「はい、あーん、してごらん」

ぱっかりと口をあけるゆーたんのお口に、豆腐めしを少し入れてあげると、もむもむと咀嚼していく。

始めて食べたのだろう、ふんわりした食感にびっくりしながらも食べた後は笑顔になっている。


「気に入りましたか? はい、じゃあ今度は昆布も混ぜましょうね」

お出汁で使った昆布を佃煮にしたものを細かく刻んで針生姜と合わせて甘辛く炊き上げたものなのだが風邪の季節の桑月家の定番だ。


風邪の時のおかゆでも大活躍をするので毎週作っては足している。タロにーちゃんが。


豆腐ごはんに、昆布の佃煮が気に入ったのか、二口、三口と食べてくれてタロ兄ちゃんは一安心。


「あー、肉団子だー!僕、これ大好きっ! いっただっきまーーすっ!」

「コラまて、健斗! 髪の毛濡れたまんまだろうが!」

お風呂から上がって茶の間に駆け込んできた健斗は、食卓を見てテンションが上がり、髪を乾かすよりご飯に気をとられ、さっさとタオルを投げだした。


面倒見のいいジーくんが文句を言いながらも箸を掴んで離さない健斗の髪をブツブツ言いながらもタオルでかわかしてやる。

これも桑月家のいつもの風景なのだが、ゆーたんには、解らないことだらけのようだ。


目を丸くして周囲を見ている。


「ゆーたん、肉団子、食べてみる? おいっしーんだ、兄ちゃんの作る肉団子!」

お肉が大好きな健斗にしてみると、大きな肉団子はご馳走だ。このおいしさを知って欲しいと思ったんだろう。


「そうですね、ゆーたんが食べられるように小さく切ってあげてくれますか?」

「うん、待ってねー!」

タロ兄ちゃん特製の肉団子は、豚肉に卵に細かくしたネギや椎茸、ニンジン、レンコンも入ったものをよくこねて、お出汁に入れる前に一度揚げてあるボリューム満点のものだ。

齧りつくと中からじゅわーっと肉汁が出るのが、たまらない!


「にーちゃん、切れたよ! はい、ゆーたん、どーぞ♪」

差し出された肉団子に興味を持ちながらも、タロ兄ちゃんの方をうかがうゆーたん。


「ゆーたん、ぱくって食べられる?」

タロ兄ちゃんに言われて、こっくんと頷くと、健斗の差し出した肉団子のかけらをぱくりと食べてみる。

口の中にふんわりとお出汁とお肉のうまみが広がって、ゆーたんは美味しくってにっこり笑う。


「気に入ったのかな、ね、おいしーでしょ♪」

笑顔で話しかける健斗に、ゆーたんも笑顔でうなづく。


「ジーくんも、はいっ!」

先ほどまで自分の髪を乾かしていてくれていたジーくんに、肉団子を差し出す。


「お前は、ほんとーに調子がいいな。・・・ん、うまい」

タオルやドライヤーを片していたので両手がふさがっていたジーくんは、差し出された肉団子をぱくりと食べる。


「おや、ゆーたんは、もうおねむですね。お部屋でねんねしますか?」

眠くてフラフラしているところでタロ兄ちゃんにそう聞かれて、悠太は初めて首を横に振った。


イヤだと。一人で寝るのはイヤなのだと。


「一人はイヤかな? いいですよ、このまま抱っこしてあげますから、ここでねんねしていらっしゃい。

 あとでお布団に運んであげますからね。」

そう言われると、体から力が抜けたゆーたんは、タロ兄ちゃんに抱っこされたままで、ふわふわした眠りに包まれる。


「おなかいっぱいになったかなー。ゆーたん、あんまり食べないよね?」

健斗が心配したように、眠りを邪魔しないように小さな声で兄たちに聞いている。


「お前と一緒にするな、健斗。ゆーたんは、多分まだそんなに食べられないから。」

研司が、心配する健斗の頭をクリクリと撫でてやる。


そう、健斗は知らなくていい。

今まで食べていなかった子は、胃が小さくなっていて、急にたくさんは食べられないという事を。

無理に食べれば吐いてしまうか、満腹感を感じられず食べ続けると最悪、胃が割けてしまうことだってありえるのだ。


だから、ゆっくりと進めていかなければいけない。


それでも研司は、この連れて来られた仔犬が、元気に駆け回れる姿を一日も早く見られることを望まずにはいられなかった。



☆彡 ☆彡 ☆彡


兄たちの声を遠くで聞きながら、悠太はぼんやりと思う。


ぼく、ここに、いていいのかな・・・。


小さい悠太には、大きすぎる不安であった。


肉団子と白菜のトロトロ煮は、台湾料理のアレンジ。

和風だしでもなかなかいけるなぁ、と思ったので(笑


台湾の地震、早く終息をして普段通りの生活に一日でも早く戻れますように・・・。

暖かくて安心な夜を過ごせますように。心から祈ります。

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