外伝 運命の大戦Ⅰ
AD2420年 2月20日 島根県竹島沖
竹島。この地は古くからの日本と朝鮮半島の衝突の地だった。第2次世界大戦が終結した後、韓国が勝手に国境を決め、漁民を数多く殺し、日本から奪った土地である。2100年の第3次世界大戦時に、韓国は北朝鮮によって攻め滅ぼされ、その後、日本が、竹島を実行支配していた北朝鮮から取り返した土地である。その後も、日本と朝鮮半島はこの地で衝突を繰り返したそうだが、ここ50年は衝突していないようだ。
今、竹島沖では、竹島や隠岐諸島の他に、境港からも漁船が来ている。この地では、養殖が盛んで、養殖の規模は21世紀では考えられないぐらいのレベルである。竹島の西側には、縦横数キロの巨大養殖場があり、その中にいる魚を捕るために、沢山の漁船が来ているのである。
さらに、南側にはメタンハイドレードが豊富な地域があり、それを採る為の施設がある。北側には、自衛隊の基地があり、陸空海が揃っている。特に海上には、空母やイージス艦、魔導艦などが多数配置され、航空自衛隊や陸上自衛隊は、魔導部隊がいつでも出撃出来るように構えている。
隠岐諸島から来た漁船の乗組員が話をしている。
「いやー、今年も大漁じゃなぁ!毎年大漁じゃけん、わしらは大儲けじゃな!」
「当たり前じゃないですか。毎年ここでは決まった量の魚が生息するんですから」
「そうじゃな!ははは!」
乗組員たちは楽しそうに話をしている。だが、それは突然終わることになる。
乗組員の1人、一番目が良い人物が、異変に気付いた。
「船長、西から何か近づいてきます!よく分かりませんが、光る物体が数え切れないぐらい来てます」
「なに!?」
他の乗組員が確認する。確かに、光る物体が近付いて来てる。1人の乗組員が、それの正体に気付いた。
「あ、あれは、砲弾です!早く逃げましょう!!」
「なんじゃと!?分かった!お前は、竹島の自衛隊基地に連絡を取れ!」
「間に合いません!!」
「なっ……!?」
その船は、避ける間もなく、砲弾の餌食となる。砲弾は直撃し、船は大破し沈む。周りにある他の船も、次々と沈められる。
沢山の船が沈んだ海の上を沢山の軍艦が通り過ぎた。
◆◆◆◆
竹島にある自衛隊基地は、沢山の爆発音が聞こえたため、急遽スクランブルを行う。
『竹島第3航空部隊。離陸します!』
21世紀のF2戦闘機によく似たF12戦闘機が8機、現場に向かう。
現場には、粉砕した漁船の残骸と、元は人だったのであろう肉片が散らばっていた。海は血の色に染まり、普通の海だった場所が一瞬にして悲劇に襲われたのだと解る。
『こちら、被害状況を確認。民間人に多数の死傷者が出ている模様。』
『……了解……!』
管制官は、この現実を理解出来ないようだ。漁師の中には、仲の良い者も大勢いた。昨日、共に杯を交わした者もいた。そんな彼らの命が一瞬にして奪われたのだ。
だが、管制官はすぐに現実に引き戻された。
『こちら、国籍不明の船団を確認!その数、目視できるだけで100隻!砲塔やミサイルの発射口を確認!あの国旗はもしや……!国籍を確認、高麗帝国です!』
「くそっ!奴らめ、民間人を虐殺するとは……!今すぐ政府に連絡しろ!高麗帝国が侵略を開始したとな!」
竹島基地からは、戦闘機や爆撃機、航空魔導部隊が離陸し、イージス艦や魔導艦が出航した。この時、誰もがこれを一時的衝突になると思っていたが、後に大規模大戦に繋がるとは、誰も考えていなかった。
◆◆◆◆
「暇だ……」
「すること無いですね」
長崎県の対馬にある自衛隊対馬基地では、隊員2名がぼーっと海を眺めていた。彼らは緊急事態と言われて福岡の駐屯地から来たわけだが、呼ばれた理由が、案外あっけないものだった。
「非常事態と聞いていたのに、まさか反自衛隊団体を取り押さえるだけとはな。なんで俺たち陸上魔導部隊が送られてきたのか、まったく解らないな」
「彼らが手榴弾を持っていなければ、簡単に公務執行妨害で逮捕できるんですけどねぇ」
「まあ、連中が手榴弾を持ってるから取り押さえれたんだがな。持ってなければ、明日、一部の新聞の見出しは『権力の暴力』とかになるからな。連中が武器を持ってたから、武力勢力から住民を守ったという大義名分ができたわけだからな」
自衛隊の活動に反対する団体は、この時代にもいる。その数は年々減ってきているが、過激な団体が増えてきて、近隣住民に被害がでるケースも珍しくない。そのため、武器を持っていると確認された場合、問答無用で拘束可能なようになっている。
武器を持った連中は拘束されたが、その他の団体はまだ基地のゲート前にいる。
「旧憲法9条の復活をー!」
「人殺しのためにある自衛隊を潰せー!」
「権力は市民の声を聞けー!」
辺りでは、自称市民団体が抗議をしている。市民団体と聞けば、権力等に反発し、市民の声を聞くように訴えかける者達を思い浮かべるかもしれないが、実際はそうではない。ゴミをポイ捨てするわ、フェンスに穴開けたりゴミ引っ掛けたりするわ、市民の交通を妨げるわ、デカい声出すわで、逆に市民に迷惑をかける団体も多いのだ。自衛隊や警察にとっては、そんな市民団体と、厄介な連中を正義とするマスコミには手を焼いている。2100年に憲法を変えた時は、世論が右に傾いていたのでスムーズに進んだが、今それをしたら、それこそ抗議活動のオンパレードになるだろう。
「にしても、先ほどからやけに戦闘機が出て行ってますね。また高麗帝国の領空侵犯でしょうか?」
「まあそうだろうな。昔、中国も国力があった時代は、今の高麗帝国並みに領空侵犯をしてたらしいが、今の中国には無理だな。やるとしたら、高麗帝国ぐらいだな」
高麗帝国は、21世紀の中国並みに領空審判を繰り返しており、日本の一部保守派からは仮想敵国にしろと言われている。
さすがに仮想敵国にするのはやり過ぎだというのが一般的な意見だが、高麗帝国の息がかかった団体は要注意だろう。今抗議集会をしている自称市民団体も、よく見れば旗やプラカードにハングルが書かれている。
「にしても、うるさいですねぇ。ちょっとは音を抑えてほしいですよ」
「だが、あんな連中が表立って活動してるってことは、日本は自衛隊がいらないぐらい平和ってことさ。さて、宿舎に帰るぞ」
隊員2人が帰ろうとする。だが、この時点で彼らの運命は決まっていた。
ウゥゥゥゥゥー
「なっ……!!これは……!」
「国民保護サイレンか……!」
それと同時に、2人の隊員は部隊長に呼ばれたため、基地の司令部に入る。
途中、テレビがある部屋を通り、そこではアナウンサーが原稿を読んでいた。そのアナウンサーの顔には、焦りと恐怖の表情が見える。
『番組の途中ですが、ここで臨時ニュースです。高麗帝国の東倉里から、複数の飛翔体が発射されたとのことです!この飛翔体は現在、福岡市と熊本市、佐賀市、長崎市に向かっていると思われ、政府は自衛隊に破壊措置命令を出しました。なお現在、九州北部と山口県には避難指示が出されており、国は非常事態宣言を発表しました!
ゴニョゴニョ……
え、今入った情報です。竹島近海に高麗帝国の軍艦が多数押し寄せ、民間人に死傷者が出ている模様です。これに対し自衛隊竹島基地は応戦していますが、戦況は不利のようです。なお、政府が非常事態宣言を出したため、自衛隊の超法的な活動が可能となり、国民の不安を煽るような活動は取締りの対象となります。また、事態が大きくなれば、情報統制も行われるため、このニュースもいつまで放送できるか解りません。
この非常事態宣言は、2153年の国家存続戦争以来、約270年ぶりの宣言となります。
繰り返します。高麗帝国のミサイルが……』
「マジでマズいことになってますね」
「さっさと行くぞ!武器と魔素を取り込むためのあれも忘れないようにな」
暫くして、武器を持った10人ずつの部隊、合わせて5部隊が出撃した。そのうち3部隊は航空魔導部隊で、先程の隊員2人を含めた2部隊は陸上魔導部隊である。
航空魔導部隊は、長崎市と福岡市に向かうミサイルの迎撃にあたる。陸上魔導部隊は、対馬からでも狙える、佐賀市と熊本市に向かうミサイルを迎撃する。
「あと3分で敵のミサイルはこちらに来る!九州北部の市民の命と平和は君たちにかけられている!」
(そんな事言われたら集中できねーだろうが……)
隊員は内心そんな事を突っ込みながら、いずれミサイルが通るであろう空に銃口を向ける。
数分後、司令部から連絡が入った。
『現在、高麗帝国のミサイルは、もうまもなく対馬上空を通過する。目標地点まで、残り30秒』
「各員。術式用意!」
隊長がそう呼びかけると、他の隊員は銃口を上に向けながら、呪文を唱える。
「我々は、祖国を守り抜く礎となる者。いかなる不当な侵略からも、民を守り、国、家族の為に、敵を殲滅する加護を!第2階級魔法『空への反抗』」
そう言うと、それぞれの銃口から魔法陣が現れ、その中を銃弾が通る。この魔法陣は、銃弾の速度を上げ、正確に当たるように微調整をする働きがある。さらに、今回は爆裂式の魔法を使ったため、全て合わせて50トンの弾薬に匹敵する火力がミサイルへと向かう。
銃弾はその後、空を飛ぶミサイルに直撃し、九州北部に向かっていたミサイルは全て迎撃された。その情報は、すぐに高麗帝国のもとに辿り着いた。
◆◆◆◆
高麗帝国首都ソウル 独立機関『ミスラ』諜報部
ここには、高麗帝国に関する様々な情報が入ってくる。そして、政府や帝国軍とは別の組織であるため、彼らの諜報活動の範囲には政府や帝国軍も含む。
「ハンセ中尉。帝国と日本国の武力衝突に関する情報をまとめました」
ハンセと呼ばれた男は、部下から資料を受け取る。そこには、『帝国の日本国への侵攻に関して』と書かれている。
『事の始まりは、本日午後2時に、鬱陵島に停泊してあった100隻もの軍艦が、竹島に向けて出航した事。その後まもなく、帝国による砲撃により、日本国側の民間人に多数の死傷者が発生。独自のルートからの情報によれば、この時点での死者は200人超。その後、自衛隊竹島基地から爆撃機と魔導部隊が出撃したため、午後4時に帝国の艦隊は引き返したが、その過程で帝国の艦隊も7隻ほど撃沈された模様。
午後3時には、東倉里にある基地からミサイルが発射された。このミサイルは、日本国の福岡市、熊本市、佐賀市、長崎市に向かって飛んでいたが、対馬付近で全て撃ち落とされた。
この件で、高麗帝国側の後ろに何か大きな組織が絡んでいると推測される。その詳細は不明だが、恐らく国際規模のものと考えられます。
我が部署の試算によると、戦争は避けられない。通常なら日本国が有利だが、今回は高麗帝国の後ろに謎の組織が付いているため、予測不可能。
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基本情報
●高麗帝国
海軍
・イージス艦 200隻
駆逐艦 80隻
巡洋艦 90隻
その他 30隻
・航空母艦 30隻
・潜水艦 100隻
・新兵器(名称不明) 5隻
・その他 300隻
・兵力 50万3000人
・海軍基地 50箇所
空軍
・戦闘機 700機
・攻撃機 500機
・爆撃機 700機
内、戦略爆撃機 50機
・偵察機 200機
・輸送機 300機
・哨戒機 400機
・新兵器(名称不明) 50機
・その他 300機
・兵力 40万5000人
・空軍基地 80箇所
陸軍
・歩兵 30万人
・砲兵 20万人
・戦車 800台
・工兵 10万人
・その他兵力 80万人
・その他車両 800台
・基地 30箇所
・新兵器(名称不明) 10機
●日本国
海上自衛隊
・イージス艦 300隻
駆逐艦(護衛艦) 200隻
巡洋艦 50隻
その他 50隻
・航空母艦 30隻
・魔導艦隊 100隻
・大和型戦艦 40隻
・潜水艦 120隻
・その他 400隻
・兵力 40万人
・基地 50箇所
航空自衛隊
・戦闘機 400機
・爆撃機 300機
・偵察機 400機
・哨戒機 100機
・その他 200機
・兵力 20万4000人
・基地 30箇所
陸上自衛隊
・兵力 60万人
・戦車 500台
・その他車両 900台
・基地 80箇所
尚、日本国は陸海空合同の新兵器を製造中だが、その名称、機能ともに不明』
ざっと資料を読み終わったハンセは、テレビをつけた。ちょうど、政府による記者会見が始まったところだ。
『我が高麗帝国の海軍が、先程あの忌々しい日本への攻撃に成功しました。竹島に向かった100の艦隊は、鬱陵島に向かっていた日本人の小船を見事撃沈!竹島の基地を攻撃した後、一時撤退しました』
「こいつ嘘ばっかり言ってるな(笑)」
『我々の目的は、第2次、第3次世界大戦で日本人がしてきた愚行に罰を与え、我々の世界で最も優れた文化と5000年もの歴史を教え込むのです』
『ブブッ!』
「外国人記者の笑い声が聞こえるな」
『日本人よ。講和するのであれば、戦犯である日王一族(皇族、すなわち天皇陛下の一族)の処刑と、日本円にして500兆円の賠償金。さらには、西日本を高麗帝国に譲渡する。この条件を呑め。もし守れない場合は、我が軍の総力を使って、日本を火の海にする。以上だ』
帝国政府の者は、記者からの質問に応じず会場を後にした。
「あの官僚はいったい何をしたいのでしょうか?あんな条件を日本国が『はいはい解りました』って呑み込むわけ無いじゃないですか」
「政府がただの馬鹿か、もしくは……」
ハンセは嫌な予感がした。それは、的中する事となる。
◆◆◆◆
高麗帝国 政府庁舎 大統領室
「ミシウ大統領、あの条件を日本国か呑み込むとは思えませんが……」
大統領の秘書が大統領のミシウに聞く。今回、日本国に出した要求は余りに無茶苦茶で、こんな条件を呑むのは、それこそ国としてのプライドが無いものだろう。
だが、それを聞いたミシウは、不気味な笑みを浮かべた。秘書はその不気味さに脅え、尻餅をつく。
「良いんだよ。私も最初から日本がこの条件を呑むとは思ってないからな」
「じ、じゃあ、何故……!?」
「理由は簡単さ。日本と戦争をするためさ。近頃は、アメリカもロシアも中国も皆日本びいきになっている。あんな愚かな民族をな……。この戦争で世界各国に日本の愚かな面を見せ、世界が我が国の味方に着くようにする」
「日本が愚かですか……。どのような理由ですか?」
「日本は、1900年まで我々の属国であったにかかわらず(※お前ら中国の属国みたいな扱いだったよな)我々に従わない。日本で江戸時代と呼ばれる時代には、我々が素晴らしい文化を教えるために、日本に行き、道中では皆土下座するほど親しまれたらしいしな(※人の家の物を盗んだため、全然人気なかったという説がある。そもそも文化教えるの時点で間違い)。それが第2次世界大戦よりも前に起きた戦争で、日本は朝鮮半島を植民地にした。さらに、そこで大量の女性を取り、慰安婦にしたり(※某新聞社の捏造)竹島を盗んだり(※お前らが盗んだんだよなぁ)したんだ。さらに、日本と当時存在した韓国と呼ばれる国は、固い絆で結ばれていたにも関わらず、2100年の第3次世界大戦の時に竹島を奪いとり(※その時韓国は既に北朝鮮に取り込まれており、しかも取り返しただけなんだよなぁ)、民間の港(※海軍基地)や空港(※空軍基地)を無差別に爆撃し、民間人(※日本滅ぼすと躍起になってた軍事)に多数の死傷者が出た。その数は1億以上だ(※2100年の朝鮮半島の人口はおよそ8000万人)。さらに、日本の愚かな所は、文化にもある。魚を生で食い、神を身近な物だと間違ったことを広め、朝鮮半島の多数の文化を日本のものとしている(※韓国起源説って調べてみ)。さらに、アニメや漫画、ゲームといったオタク文化が、性犯罪を増加させている(※証拠ないし、むしろそっちの方が性犯罪多いんだよな)。他にも、考えるだけで虫ずが走る蛮行が山ほどある!」
(言いたい放題だな。この人。何行も使ってグダグダ話しすんなよ(メタ発言)。この人どんだけ日本嫌いなんだよ。同じ朝鮮人でもひくわ。しかも、アニメ好きとしてカチンとくる発言もあったし……。早くこの仕事辞めるか……)
秘書が大統領室から退室する。それを見送ったミシウは、執務用の椅子に座り、パソコンを操作する。そして、誰かと通信に入った。
「私だ」
『おせぇんだよ!てめえどんだけ俺様を待たす気だったんだぁ!』
「すまんな。いろいろ取り込み中でな」
『取り込み中だと。日本の悪口を言うのが俺様との話よりも重要とは。いやぁ、てめえの感性を疑うわ』
「どこかで監視してたんですか?いや、それよりも。今の所、計画は順調に進んでいます。日本はまんまとはめられるでしょう」
『ヒャハハハ!また運命は繰り返すのか……!…いや、何でもない。それじゃあ、また明日朝に連絡する』
「ええ。それでは、また明日。人壊さん」
そこで通話は途切れた。ミシウはパソコンを放置して、面倒な国会に臨む。
◆◆◆◆
ここは、この世のどこか。辺りには明るさや色なんて物はない、別世界のような空間。そこで、人壊は1人高笑いしていた。こいつが不気味な高笑いをしてるのはいつもの事だが、今回はいつもとは違う感情を含んだ高笑いをしている。
「さあ、日本。いや、創世者よ!3回目の戦いを始めようじゃねえかぁ!ヒャハハハ!」
2420年2月20日日本時間午後5時。高麗帝国は日本に宣戦布告をした。
この戦争が、日本や高麗帝国、さらには世界中を崩壊へと向かわせるとは、この時はまだ誰も考えていなかった。
続く……