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第1話 新しい地と新しい出会い

新世界スタートです

「おい、起きろタカオ!もうすぐ着くぞ!」


 タカオは誰かに肩を叩かれ、目を覚ました。


 夢か……。思い出せないけど、寒気がするな……。


 起こされたタカオは、ついさっきまで見ていた夢を思い出そうとした。だが、何か怖い夢を見たという事しか思い出せなかった。


「おいタカオ、なんかうなされてるから早めに起こしたが、今度は何を考え込んでいたんだ?」


 考え続けるタカオに、彼を叩き起こした少年が聞く。それに対してタカオは


「いやぁー、トモスケ聞いてよー。さっき怖い夢を見てねー。でも、その内容を思い出せなくてさ。なんかモヤモヤしちゃって」


 と話した。


 彼の本名は『松本 鷹男』。背は低く、小柄な体格に中性的な顔立ちをしており、料理や裁縫が得意なため、周りからは男として見られていないらしいが、タカオ本人は何故かそのことに気付いてないようだ。また、性格はかなり穏やかな方だが、アニメ関係の話になると別人のようなテンションになる重度のオタクだ。髪は大半が黒で、前髪の一部だけ白になっており、これは髪を染めたりしたものではなく、元からその色なのだ。目は水色で、それこそ女子っぽい目つきをしているため、彼が女子だと思われる理由の一つになる。彼は今年中学一年生になる。三つ子の真ん中で、体力は一番低いようだ。


 タカオを起こしたトモスケと呼ばれた少年は、本名『松本 友助』。彼もタカオと同様の小柄な体格で、顔は割とイケメンな方だ。だが、重度の女性恐怖症であるため、顔の割に彼女どころか女友達もいない『残念なイケメン』である。髪はタカオとは違い全部真っ黒で短めだ。彼はタカオの三つ子の兄で、大抵人前では見栄を張るが、学力は一番下である。


 そして、まだ一言もしゃべっていないが、タカオの前のイスに座ってるのが、タカオの三つ子の弟タカトモ、本名『松本 鷹友』。彼は他の2人よりも背は低く、小柄な人物だ。いつもメガネをかけており、髪はふわふわした茶髪で、これといった特徴はない。ただし、学力と体力は他の2人よりも上で、末っ子ながら三つ子の中で一番しっかりとしている。彼が今読んでいる本はオカルト系統の雑誌で、かなりのオカルト好きのようだ。因みに、彼はインターネットをデマ情報が多いとして、あまり信頼していない。


 タカオはこの2人にさっき見たばかりの悪夢を話そうとしたが、何故かその夢の記憶が残っていない。


 世の中には、夢を食べる伝説の生物がいるってタカトモが言ってたけど、夢の中での出来事ってほんと忘れやすいよね。


 タカオはそんな事を考えながら持って来た漫画を手にする。他の2人も自分なりの暇のつぶし方があるようだが、タカトモの隣にいる青年だけは執拗に外を眺めている。


「エンジ兄さんどうしたの、いくら暇だからって外をずっと眺めて。僕らはもう見飽きたのに凄いね」


「いやぁ、これから住む所にもうすぐ着くんだぞ。あぁ^~たまらねえぜ。何事も初めはワクワクするってはっきりわかんだね」


 この初っ端から問題発言を連発する青年は、タカオ達の兄兼保護者のエンジだ。本名は『松本 演』で、タカオ以上のオタクである。髪は全体的に白で、顔は平均レベルだ。性格は基本的に丸い方だが、重度の過保護+変態である。因みに、彼が使っている語録は『性なる夜の夢』という同性愛をテーマとしたアニメの語録だ。昔あったホモビテオの語録を使っているという噂があるが、誰一人としてその噂を信じていないようだ。


 タカオは持っていた漫画を置いて、エンジに話しかける。


「ねえ、エンジ兄さん。僕らが新しく住む所ってどんな所?」


「もう一度言うが、俺達は岡山県倉敷市にある『倉敷未来都市開発地区』、通称『クミライ地区』と呼ばれる場所に引っ越す事になる。因みに今岡山駅を出た所だ」


「倉敷かぁ……。途中で美観地区に寄ろうよ!」


「寄りたいのは山々だが、クミライ地区は水島の南だからなぁ。そこに一直線で向かうから、多分無理だな」


 それを聞いたタカオはショックを受けたようだが、前にもこの話を聞いてショックを受けた気がしたので、前に聞いた情報を頭の中で纏めてみることにした。


「おいタカオ。俺はこの話を194194回ぐらいした気がするゾ……。って聞いてないのか。悲しいなぁ……」


 エンジのツッコミを無視して。


 確かクミライ地区は2100年頃に起きた地殻変動により水島地区の南に出来た土地だと聞いた。確か地区全体の人口は40万人で、都市エリア、住宅地エリア、工業エリア、農業エリア、港エリア、そして、巨大な学園エリアがあるらしい。地区には備中ホールディングスと呼ばれる巨大な財閥があり、エンジ兄さんの会社がその傘下に入り、本社がクミライ地区に移転するから引っ越す事になったんだっけ。この地区の一番の特徴は巨大な学園で、直径2.5キロメートルの円形学園の中に、中等部から大学まであるらしい。どんな街なんだろうなぁ。


「(どうやら落ち着いたようだな……)お前たち、もうすぐ着くぞ」


 エンジがそう呼びかけた時、電車内にアナウンスが流れた。


『まもなく、クミライ中央駅です。お忘れ物のないよう……』


「よし、降りるぞ。付いて来い」


 エンジにそう言われた3人は、駅に着くとすぐに電車から出る。


「ここがクミライ中央駅か……。随分と大きな駅舎だな」


 トモスケは辺りを見渡しながらそう言う。この駅は、在来線と地下鉄の小規模なものだが、駅舎自体はかなり大きい。この街は企業や工場が多くあるため、通勤ラッシュ時には数万人規模で利用するらしい。そのため、クミライ中央駅にはレールが在来線だけで20本あり、駅から出た所でも、4本のレールがある。


「まさか東京以外でこんな光景を見るとは思わなかったよ」


「奇遇だなタカオ、俺も同じだ」


 タカオとトモスケはその光景に唖然としていたが、あまりここに留まり続けると他の2人を見失う恐れがあるため、エンジと共に歩き出した。


「ねえエンジ兄さん。僕らが暮らす家って、どんな感じなの?」


「それはよく分からないが、カイトがわざわざ一軒家を買ったとは聞いたからな。少なくとも、お前たちの部屋はあるだろ」


 カイトとは、エンジの弟であり、それと同時にタカオ達の兄でもある。タカオ達はここ数年会っていないが、彼の事をよく覚えているそうだ。彼の一番の特徴は、とにかく無表情という事だろう。タカオ達は彼の笑顔や怒った顔を見たことがないらしく、彼が笑うのは天変地異の前触れじゃないのかなんて言っている。


 そんな事を話してる内に、タカオ達はクミライ中央駅の外に出たようだ。外の景色を見て、タカオ達は目をキラキラと輝かせる。


 クミライ中央駅の外、南側は街の中心街があり、100メートル級のビルが建ち並び、中央には、学園に続く8車線の道路がある。道路の上にはビルとビルを繋ぐ空中通路があり、歩道に目をやると、地下街へと降りる階段がある。タカオは想像以上の街の姿に驚き、ワクワクした。


 これから、僕達もこの街に住むのかぁ!どんな出会いがあるだろうなぁ……。


「おーい、タカオ!早くしろ!置いていくぞー!」


 タカオが街を見て感慨に浸ってる間に、エンジ達は先に進んでいた。


 ヤバいヤバい、前みたいに見知らぬ街で迷うのだけは勘弁してほしいものだ。


 タカオは自然とそう思ったが、そこでタカオにはある疑問が出来た。


「前って、いつの話だ?この街に来たのはこれが初めてのはずなのに……!?」


 タカオは前にもこんな事を経験した気がした。だが、この街に来ることどころか、引っ越すのも初めてで、旅行にもめったに行かないため、こんな経験したことないのに……。


 タカオは暫く考え込んだが、気のせいだということにして、考えるのをやめた。





 中心街のビルの屋上、1人の少年が下を見下ろしていた。彼は何かを見つけ、それを後ろにいる人物に伝える。


「こちら、対象『松本タカオ』を確認。作戦を開始します」


 少年は頭の中で何かを念じ、そのまま立ち去った。


◆◆◆◆


 同時刻、何もない真っ白な空間に1人の青年が12個の人形の真ん中にいた。その人形は全て星座をモチーフにしたものだ。その人形は話すことができ、自らの意志で動く事ができる。

 真ん中に立つ少年は、人形に話し始める。


「それじゃあ、ちょいと報告しておく事があるから、俺様が伝えてやるよ」


『何だね。我々は、君のように時間を持て余す暇なんて無いのだよ。早く話したまえ。人壊ジンカイ


「(ケッ、人形どもが上から目線かよ。)俺様から話すことは、この世界が運命さだめ通りに動かない事だ」


 それを聞いた人形達は、『貴様等が油断してるからだ!』『お前たちは我々を裏切るのか!』と、口々に野次をとばす。


「てめえらは状況を把握すら出来ないのか?奴が動き出したんだよ!」


『奴…?…まさか!』


「そうだ!『創世者』だ!奴の動きは予想不可能だ。その上、既にこの世界では奴に運命さだめが変えられ始めている!」


『バカな……。奴め、前の『零』をどうやって乗り切ったというのだ……!』


「そんな事は知らねぇよ。だがな、俺様も既に手を打ってるからよ。てめえらはいつも通りに時が来るまで待ってれば良い。ヒャハハハ!」


 人壊ジンカイは高笑いをしながら白い空間から出る。空間を出てすぐ、モニターが敷き詰められている部屋に入る。

 モニターには、とある列島が映っていた。昔は竜のように見えたと言われた列島、日本。9年の大戦で国土の一部が沈み、その対戦国が作った生物兵器により、国土の7割では人が住めなくなり、人口の4割が戦死した国。むしろ、国が残っているのが不思議なぐらいである。他の国に目を向けても、日本と同じ様な被害を受けながらも、存続してる国が多い。

 人壊ジンカイはその大戦が起きた理由を知っており、国々が存続している理由も知っている。


「創世者のやつめ、わざわざ国側に付くとはな。だがな、今度こそ殺してやるよ!ヒャハハハ!」


 人壊ジンカイは口を歪ませながら、いつか来る創世者との戦いに備え、準備を始める。


 誰かに監視されている事に、気づかないまま……。



◆◆◆◆


「よし、着いたぞ!」


 エンジが家に着いた事をタカオに知らせる。因みに駅からここまで徒歩5分だ。


 カイト兄さんはよくこんな高そうな家を買ったなぁ。


 タカオ達はそう思った。


 この家は一軒家で、二階建ての少し広めの家だ。屋根は黒い瓦で覆われて、周りには少し大きな庭がある。


 タカオはこの家を見ながらドキドキしている。それはトモスケとタカトモも同じ事だ。だが、エンジだけは顔が青ざめている。


「エンジ兄さん、どうしたの?」


「いや、何でもない(暫くは節約生活になりそうだな……)」


 エンジは1人だけ自分の財布を気にしていた。後で数百万3年ローンだと知って1人気絶するのはまた別の話である。


 タカオ達は死んだ魚の目をしているエンジには気付かずに家に入ろうとする。だが、そこで見知った顔の青年が横から声をかけてきた。


「ようタカオ、トモスケ、タカトモ。そして、エンジ兄貴。何で1人だけ死んだ魚の目をしているんだ?」


「お前にだけは言われたくないんだゾ……」


 エンジがツッコミを返したのは、タカオ達の兄であり、エンジの弟の松本カイトだ。

 彼は昔と変わらない死んだ魚の目をしており、これでも喜んでいるそうだ。

 とりあえず、タカオ達はカイトが変わってない事にホッとする。もしカイトが異常なテンションになっていたら、それこそ天変地異の前触れだろうから。


「何その酷いこと考えてそうな顔。まあいい、とりあえず中に入るか」


 カイトはそんな事など気にせず、中に入ろうとする。これが大人の余裕というやつだろう。


「おっ、そうだな。じゃけん家行きましょうね^~」


 エンジよりカイトの方が頼れる人物だと、3人共思った。

 カイトは確認する事があると言い、先に家に入る。タカオ達は暫く待つことにした。

 暇を持て余しているエンジは、タカオ達に話しかける。


「あっ、そういえば。お前らは確か中学でアレがあるだろ。大変だな」


 エンジは笑ってはいたが、その声のトーンは、どこか心配そうだった。

 それにトモスケがダルそうに応える。


「あー、あれね。徴兵令ね。何であんなもんが在るんだろうな?」


「そうだな。正式には『兵士育成プログラム』だな。日本を含めた国々は9年前の大戦でかなりの兵力を失っている。そんな中一国でも徴兵を始めたら、他の国からすれば脅威だろ。日本もそりゃ徴兵令出すよ」


 この世界の殆どの国は徴兵令を出している。理由はエンジも言ったように、全ての国は兵力の殆どを失っているため、自衛のためそうすることになったのだ。


「でもさ、俺達中高生がわざわざ駆り出される意味なくね?」


 トモスケも言うように、この徴兵令には反対する意見が多い。人道的に子供を戦場に行かせるのは間違いだと言う意見はもっともだが、理由は他国の脅威以外にもあるのだ。それについては後々彼らも知ることになるであろう。


 トモスケが愚痴をこぼしてる間に、カイトが玄関から出てきた。だが、彼は顔色が悪く、何か厄介な事が起きたようだ。


 エンジは何が起きたのかカイトに聞く。


「どうしたカイト。まるで夏休み最終日まで宿題をしてなかった学生みたいな顔してるな」


「その例えはなんなんだ……。それより、兄貴も来てくれ。面倒な事になった」


 カイトに来るように言われたエンジは、家の中に入る。暫く経って、エンジが出てきた。その顔は先程のカイトと同じ様になっていた。


「どどど、どうしよう……。ま、まずは交番に行くか……?」


 あの脳天気なエンジが取り乱していることから、ただ事ではないとタカオ達は察した。エンジはたとえ全財産が無くなったとしても笑ってごまかすタイプだからだ。因みにエンジはかつて1ヶ月分の給料を全て騙し取られた事があるが、その時は「やっちまったZE☆」と言ってカイトに叱られていた。


 エンジとカイトがあたふたしていると、玄関のドアの開く音が聞こえた。


「何?何で誰もいない筈の家のドアが開くの!?」


「タカオ、その言い方はお化けか何かと間違うからやめろ!まあ、お化けなんて非科学的なもんこの世にいるわけないがな」


「トモスケ、足めちゃくちゃ震えてるよ。だがあれを見てみろ。お化けじゃないようだな」


 タカトモが玄関を見るように言う。

 タカオがそれを見ると、そこにいるのは1人の少女だった。年はだいたい10才辺りだと思われる、白の長い髪をした、金色の目の少女。タカオは何故か胸騒ぎがした。


 この少女、どこかで会った気がする。それに、これから何か嫌な事が起きそう。


 タカオの脳内には、夢で見たあの光景がフラッシュバックした。


 もしかしたら、あの光景は夢ではなく過去に経験したことではないのか……!?


 タカオの胸騒ぎの犯人はこれだ。そして、世界の運命さだめはこの光景に向かおうとしていた。




 だがそれと同時に、運命さだめに逆らおうとする者達もいた……。




















 A.D.2513 4月1日 土曜日 PM7:00

 運命さだめを変える決定的な連絡が、ある人物のもとに届いた。


『こちら※※※※、現在日本国東瀬戸内エリアの岡山県クミライ地区にいる。フェイズ7の成功を確認。ただちにフェイズ8の実行に移る』


「了解。フェイズ8の敵対勢力はあの人壊ジンカイだ。くれぐれも油断するな。



全ては、“創世者”の導く正しき世界の為に……」

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