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使用人は元最強の暗殺者!?  作者: 銀狐
第1章 暗殺者から使用人へ
7/20

第5話 珍事件

よろしくお願いいたします。

日間ランキンキング30位に入れました! 皆様には、心から感謝申し上げます!

「次は、どこだ? えっとーー2階の廊下の清掃だな。よし行くか」


本日もいつも通りに、使用人として働いている。ここに来て1ヶ月が過ぎ、この環境にも慣れてきたとこだ。


そういえば1週間前に、屋根の上で捕らえた刺客はどうなったのだろう? まぁーーよくて終身刑ってとこかな。大貴族の令嬢を狙ったんだ、普通なら即日死刑だからな。


そんなことを思いながら、2階に着き、雑巾で窓の縁を拭く。

その時、俺の後ろをある男が通り過ぎ、挨拶をしてきた。


「お疲れ様っす」

「お疲れさま・・・ん? ちょっと、待って」

「はい?」


俺は持っていた雑巾を落としてしまった。

なぜなら、その挨拶してきた男は、先ほど考えていた、刺客の男だったからだ。



◆◇◆◇



あたしは、クラリス・サーデント! シャムール侯爵邸に仕えるメイドにして、屋敷を守護する『蒼空騎士団』の主席騎士だよ!

いきなりだけど、この度あたしは、とある人の弟子になったんだ。


川辺で倒れていた変な奴が、ソフィーお嬢様に気に入られ、護衛を任されたらしい。

お嬢様の護衛は強い者にしかさせないのがここのルールだから、そいつの実力を知るために、騎士団長に命じられて手合わせをさせられたんだ。


自分で言うのもなんだけど、あたしって結構強いんだ! 半年前の騎士大会個人戦では第2位に輝く実力者。つまり、この帝国に数ある騎士団の中で、2番目に強いってことだね。


そんな私が、手合わせするに値しない相手だとは、正直思ったけど、命令だったら仕方ない。


だから、手合わせを受けることにしたんだ!

さっさと終わらせて、訓練に戻ればいいと思ったからさ!



・・・でも。


結果は、私の負け。いや、完敗だった。

どの角度からの攻撃も、簡単に防がれてしまった。

赤子の手をひねる様に、あたしは彼にコテンパンにされた。

というよりも、多分遊ばれていたんだと思う。


あたしはそれと同じ様な経験をしたことがあった。2年前、あたしがまだ田舎から出てきて間もない頃。帝都である男と戦ったんだ。


誰かって?

そう、あの最強の暗殺者として名高い、マスターリーパーだよ。


帝都の裏路地で、偶然にもあたしの前に降りてきたあいつに、あたしはいきなり切りかかった。

地元では負け知らずだった自分の腕を、この国で最強の人に通用するか知りたかったんだ。


でも、その時も適当にかわされ、腹にパンチをくらって失神してしまった。よく考えれば、あたしはあの時、死んでいてもおかしくはなかったね。バカだな〜、あたし。


その体験と、今回の手合わせはなんか似ている気がする。あたしは、彼がマスターリーパーに匹敵する強者だと、魂で理解した。

だから、弟子入りさしてもらったんだ。


彼といれば、もっと強くなれる気がする。あたしは、そう信じて疑わない。

いつか、あのマスターリーパーに雪辱を果たすために、あたしは強くなりたいんだ。


とまぁーー説明は長くなっちゃったけど、とにかくそういうこと!


それで、あたしは今2階の廊下に向かっている。

なぜかというと、今師匠が掃除をしているはずなので、早く終わる様に手伝って、稽古をつけてもらおうと思うんだ!


あたしは、階段を登り2階に着いた。すると、廊下の方から怒鳴り声が聞こえてくる。

あたしは、走ってその場所に行くと、なんかよくわからないことになっていた。


「なんで、てめぇがここで働いてんだよ! あれか? 脱走か? いい度胸だな、なら処刑人に変わって、俺が殺ってやる!」

「ひぃぃぃぃ! 違うんです! 僕はここで働くことを許されたんです! やめて下さい! 剣を近づけないでください!! 誰か助けてーー!!」

「なにが"僕"だ? てめぇ、一人称"俺様"だっただろうが! キャラが崩壊してんぞ、くそ野郎!」


師匠が男の胸倉を掴み、喉に黒い短剣を喉に突き立てている。それより、なんであの刺客の男、ここにいるの?


まぁいいやーーとりあえず、止めなきゃ!


「師匠! ダメでだって! せっかく掃除したのに、また血で汚れちゃうよ!」

「大丈夫だ、クラリス。少量の血で済むように、心臓を一刺しして、そのまま抜かなければ、大丈夫だ! 俺に任せろ」

「やめてくれ!!やだー! 助けてお嬢様!!」

「なにがお嬢様だ? てめぇ、1週間前にそのお嬢様を暗殺しようとしてただろうが! 今すぐ、ご先祖様に合わせてやるから、目をつぶれ!」


なんだか、収拾がつかなくなっちゃった。今にも師匠は、刺客の男を殺っちゃいそうだし、あたしじゃ、どうすることもできないし。


ーー誰かー!助けてー!


と、心の中で叫んだその時。


「待って下さい、イムさん! 私の話を聞いてください!」

「イスマイール君! 早まってはいけない! その気持ちは分かるが、とりあえず落ち着きたまえ!」


あたしの願いが通じたのか、廊下の向こうから、ソフィーお嬢様とデニス騎士団長がやってきた。

お嬢様を見た、今にも殺られそうな男は、大声を上げ助けを求める。


「お嬢様! 助けてください!! 頭のおかしい奴に殺されかけてます!!」

「オッケー、オッケー。お前は、心臓一刺しの刑から、四肢切断の刑に変更だ! よし、ここだと汚れるから、外に来い!」

「助けてぇぇぇ!! 殺されるーー!! お嬢様ぁぁぁ!!」

「うるっせ! さっと来るんだよ!!」


この場に到着したお嬢様と騎士団長は、師匠を諌め始める。


「イムさん!! 違うんです! この人の言ってることは、本当です!」

「そうだ! イスマイール君、この男は当屋敷で働くことになったんだ! だから、剣を収めてくれ!!」

「てめぇ! お嬢様と騎士団長を(たぶら)かしやがったな!! 腹割きの刑も追加だ!」


なんか、師匠の方がキャラ崩壊している気がしてきた。師匠って、あんなに喋るっけ?


その後、お嬢様と騎士団長、そしてなんか分かんないけど、あたしも混ざって師匠を落ち着かせる。


しばらく、深呼吸して落ち着きを取り戻した師匠は、その男を睨みつけている。


「それでーー説明してくれますか? お嬢様」

「えっとですねーーなんかこの方の尋問に参加したところ、頭を地面に擦り付けて、命乞いをしてきたので・・・」

「それで?」

「持っている裏組織の情報と引き換えに、当屋敷で雇うことになりまして・・・とまぁ、そんなとこです」


お人好しだよね、お嬢様って。あたしも、つくづく思ってたんだけど、雇う人ぐらいちゃんと選別したほうがいい気がする。


「そうですかーーなら先輩として、みっちり指導してやらなければですねーーふふふ」


師匠が不敵な笑みを浮かべる。

てか、師匠もここ来て1ヶ月しか経ってないよね?


そんなこんなで、この混乱は治った。

なんか、このことでまた一波乱おきる気が、しないでもないけど・・・。



◆◇◆◇



なに考えてんだか・・・。

折角、未然に暗殺を防いだのに、これでは全く意味がないじゃないか。


俺は、昼間に起きた珍事件に、向っ腹を立てながら、与えられた部屋のベットで横になる。


外は既に真っ暗で、虫たちの声が聞こえてくる。このシャムール侯爵邸は、ソフィーたちが住む本館と、使用人やメイドたちが住む別館に分かれている。

俺はソフィーの護衛という立場から、本館のほうに、1人部屋を用意してもらった。

使用人の部屋にしては豪華すぎると思ったが、シャムール侯爵家の力を考えると、このぐらいは当たり前なのだ、と理解した。


俺はベットから起き上がり、窓の方へと足を運ぶ。


月が綺麗だ。

血なまぐさい話ではあるが、月が出る時、それは暗殺に最も適した時間帯だ。

闇に紛れ対象を殺し、血を月が照らす。そんな日々を過ごしてきた、俺にとって、普通に月を見るのはなかなかに新鮮だ。


綺麗な月に、心が和むが、やはり昼間のことを思い出してしまう。


「本当に、お人好しだよなーーソフィーって」


悪口ではないが、それに近いものが、口から出てしまう。


自ら、危機を招いていると言っても過言ではない。でも、それをしてしまう彼女は、根っからの優しい人物なんだろう。


かく言う俺も、その人柄や志に魅せられ、暗殺を断念した1人だしな。


「あれ?・・・俺もその殺そうとしていた1人じゃん」


急激に、変な罪悪感に襲われる。


・・・ま、まぁあれだ・・・寝よ。




明日にでも、少し謝っておくか・・・。

不本意な謝罪をする事を決めた俺は、ゆっくりと夢の中に落ちていった。

ありがとうございました。

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