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使用人は元最強の暗殺者!?  作者: 銀狐
第2章 連続暗殺事件編
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第12話 珍事件再び

よろしくお願いいたします。

「おはようーーふわぁ〜」

「おはようございます、イムさん」

「おっはー! 師匠!」


ソフィーのおかげで、久方ぶりの快適な睡眠を得られた。

約束どうり、ソフィーは外には、出歩いてないみたいだ。それが分かり、心が安堵する。


「あれ? サイモンは?」

「なんか街に出てくるってさ」


あの野郎、護衛すっぽかしてなにしてんだ。後で、しばき倒してやる。


「さてーーイムさんも起きたことですし、外に行きましょう。イムさん、クラリスさん、護衛を頼みますよ」

「了解です、お嬢様」

「ほいほーい! 任せてお嬢様!」


さっさと支度を済ませ、都市長宅を出る。今日の行き先は、シャンデル中心部からやや離れた歓楽街の方だ。


今日も相も変わらず、ソフィーには尊敬の眼差しや黄色い声が寄せられている。

それにしても、こんだけの人に絡まれて、よく疲れないよな。俺なら鬱陶しくて、全力で逃走するだろう。


「おっ、歓楽街が見えてきたよ!」

「ん? おぉ、派手だなおい」


歓楽街の入り口に、セクシーな女性の絵が描いてある看板がある。まぁ、そういう場所だしな。そっこらじゅうに、ピンク色の店が立ち並んでおり、なんだか変な感じのところだ。


歓楽街に入ると、数多の客引きたちが、俺に話しかけてくる。


「お兄さん! 今なら、5銀ガルダ! いや、4銀ガルダだよ! やっすいよー!」

「にいちゃん、そんな店より、うちの店においでよ。今日は可愛い子がいっぱい揃ってるよぉ!」


「結構です」と跳ね除ける。護衛中に、そんな店に行く奴なんていない。そんな奴いるなら、よほどの馬鹿かアホだろう。


しかし、客引きたちは、俺だけではなくクラリスにも話しかけている。


「ねぇねぇ、君! うちの店で働かない? 君なら確実に1番になれるよ? 君可愛いし、スタイルも抜群じゃん! どう? ヤッてみない?」


ソフィーとクラリスの顔が赤くなっている。


ほぉ、さすがにソフィーにはそんなこと言わないんだな。よくわきまえてるじゃないか。


でも、万に一つでもそんなこと言ったら、もれなくぶっ殺して、魚の餌にしてやるところだ。


その点、ソフィーじゃなく、クラリスにしたのは賢い選択だ。

確かにクラリスは可愛い。金髪ショートヘアで、いかにも天真爛漫そうな顔は、多くの男性を虜にするだろう。


そんなことを考えていると、クラリスが俺に耳打ちしてきた。


「師匠・・・あいつ殺っていい?」

「・・・いいわけあるか、やめとけ」


殺害許可を求められたが、一蹴する。

流石の俺でも、「いいよ」なんて言えるわけがない。この男が一連の事件の犯人なら話は別だが。


でもまぁ、助けてやるか。


「すまない、俺の弟子に絡むのはやめてくれ。それに、こいつがこんなとこで働いたら、死人が出るぞ?」

「なに言ってんの、お兄さん? それはこの子が決めることだろ? ソフィーお嬢様の護衛だかなんだかしらねぇが、口を出してくるのは筋違いじゃないのかい?」


プチンっと、頭の中で何かが切れた音がした。


「・・・クラリス、殺っていいぞ」


「「「えっ!?」」」


なんかムカついたから、クラリスに殺害許可を出す。


「いやっ、あの・・・イムさん?」

「師匠、じょ、冗談だよ!!」

「殺るってなんだよ!? 殺れるならやってみろ! こ、こ、こ、怖くないんだよ!」


よしーー言質は取ったぞ。殺れるなら殺ってみろかーー任せとけ、そういうの大得意だ。

俺は短剣を1本だけ抜き放ち、そいつに向ける。


「ひ、ひぃぃぃ! 悪かったって! ご、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

「い、イムさん! この人も謝っています! だから、気を静めてください!」

「師匠! もう大丈夫、あたしなんにも感じてないからさ! ねっ? 剣を収めて!」


何故だか、ソフィーとクラリスがその男を庇い始めた。

これでは、俺が悪者みたいじゃないか。


まぁ、でもやり過ぎたかな? こんだけビビってるんだ、もう絡んではこないだろう。


そう思い、剣を収める。


「・・・シャムール家の使用人や騎士団の人たちは、ノリがいいって聞いたのに・・・嘘じゃないか」


腰を抜かしている、客引きの男はブツブツとそんなことを言っている。

そこで、俺はひとつの疑問が湧いた。


「そんなこと誰が言ってたんだ?」

「今、うちの店で遊んでいる人がそう言ってたんだよ・・・」

「・・・そうかーーお嬢様、クラリス、ちょっとこっちに」


俺はソフィーとクラリスを少し離れた場所に呼ぶ。


「お嬢様、先に謝っておきます。あの店に少し物理的な損害が出るかもしれません」

「え? それはどういう・・・」

「まぁ、じきにわかります。クラリス、俺はあの店に入ってくる、その間、お嬢様を頼んだぞ」

「師匠、店に行くの!? だめだよ! 護衛中だよ!?」

「心配するな、5分で戻ってくる」


そう言うと、その客引きに案内してもらい、店の中に入る。


「おい、1金ガルダだ、受け取れ」

「え、いや、そんなにもらうわけには・・・5銀ガルダで結構だよ?」

「俺はサービスを受けるつもりはない。その代わり、その男がいるとこまで連れて行け。店への入場料と案内してもらう手数料込みの1金ガルダだ」

「は、はぁ・・・」


客引きの男は恭しく金を受け取る。

そして、俺はその発言をした、クソッタレのところに案内してもらう。

その発言主のおおよその予想はついている。


店の中は、なんというか空気に色が付いているような感じだ。ピンクというか紫というか、とにかく妖艶な空気が漂う。

俺は部屋別に分かれている通路を案内される。扉でその先は見えないものの、姦しい声が聞こえてくる。

なんとなく、頭痛を覚えたが、とりあえず先に進む。


「ここだ。この部屋にいる」

「ご苦労だったーーちなみにこの扉の値段はわかるか?」

「え? 多分、4銀ガルダぐらいだと・・・」

「よし、受け取れ」


俺はポッケから4銀ガルダを客引きの男に手渡す。


「よし、しばき倒してやろう」


その扉を、俺は思いきり蹴り破り、中に入る。すると、そこには裸体の女性と戯れるサイモンの姿があった。


「きゃーーーーー!!!」

「お兄さん、なにしてるの!?」

「い、イム先輩!!??」


サービスを行っていた女性が叫び、客引きの男は驚きの声を上げ、サイモンは何が何だかわからない顔をしている。


「よぉ、サイモン。随分と楽しいことをしてるじゃねぇか」

「いやいやいやいや、なにしてるんっすか!? てか、なに普通にはいってきてるんっすか!」

「お前の性にだらしない、下の息子を殺しに来たんだよ」


即座にパンツを履くサイモン。まるで、自らの息子を守るように股間を押さえている。

女性と客引きの男は、その光景をただ呆然と見つめていることしかできなかった。


俺は、逃げようとするサイモンに躙り寄る。


「イム先輩! ちょっと落ち着きましょう! ねっ?」

「俺は至って冷静だ。そう、まるで獲物を狩る前の肉食獣みたいにな」


服とクロスボウを手に取るサイモン。ゆっくりと俺が近づくと、すごい勢いで扉の外へと出て行った。


俺は全力でサイモンを追いかける。


「まてこらぁぁ!! てめぇの息子を天に送ってやる!!!」

「勘弁してください!!! 僕が悪かったっす!!」

「使用人兼護衛のくせに、なに風俗行ってんだ、こらぁぉ!! てめぇご自慢の立派な息子を切り取ってやるから、大人しく捕まれ!!」

「いやぁぁぁぁぁ!! 助けてぇぇ!!!」


サイモンはパンツ一丁で、表に出て行く。俺も逃すまいと、あとを追った。


すると、正面に俺たちを待っているソフィーとクラリスの姿があった。


「あ、やっとでてき・・・っ!? ソフィーお嬢様、あたしの後ろにいて! てか、サイモンくん! なんでそんな格好なの!?!?」

「どうしたんでっ・・・きゃぁぁぁぁ!!」


「誤解っす! それよりも助けてください!! 僕の大事なナニがピンチなんですーー!」


無駄な弁明をするサイモンを後ろから取り押える。


「よし、捕まえたぞ! 覚悟しろ!」

「ひぃぃぃぃ! お嬢様ー! 助けてくださーい!」

「・・・こればかりは、弁護のしようが・・・」

「ないよーー諦めなサイモンくん」


「そんなぁぁぁぁ!!!」とサイモンの声が歓楽街に響き渡った。

切り取るのは、冗談としても、少しぐらいは痛い目にあってもらおう。




◆◇◆◇




「リーダー! 昨日の夜はデグリーが殺られました・・・ど、どうしましょう」


シャンデルのとある場所に、数十人の男たちが詰めていた。

その殺伐とした雰囲気の中で、一際嫌なオーラを放つ人物が、奥の椅子に踏ん反り返っている。


「心配するなぁよ、楽しくやろうぜぇ〜。なぁ〜に、仲間が何人死のぉが、俺たちゃあ殺しを楽しむだけよぉ」


顔に死神のタトゥーが彫ってあるその男は、不敵に笑った。


「そ、そうですよね! 一緒ついていきますサムさん!」

「おーいおいおい、サムはやめろぉって、俺のこたぁ、リーダーって呼べよぉ〜」

「は、はい! リーダー!!」

「よぉ〜し、なら今夜もいっちょ、殺しといこうかぁ〜。 よぉ〜し、てめぇら、行ってらっしゃーい。今日のノルマは3人滅多刺しだよぉ」


「はい!リーダー!」とその場にいた男たちが外へとでて行く。

そのリーダーと呼ばれていた男は、ゆっくりと立ち上がり、気持ちが悪いほどの笑顔を浮かべた。


「マスターリーパー先輩〜、やっと殺しあえますねぇ〜。俺、楽しみでちびっちまいそうですよぉ〜・・・ふふふ、はっはっはっは!!」


狂気とも思えるその笑い。

人知れず、その笑いはその場所にこだましていた。

ありがとうございました。

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