2話
リリ side
「此処が謁見の間です」
勇者召喚を成功した私は、勇者達をこの国の王で父のグライ・フォン・ローザに会わせる為に謁見の間に連れてきた。
それと、一緒に召喚したイナガキ様の事についても聞くためである。
鋼鉄で出来た重い扉を私と同様にあの場所に居た騎士団長であるジェリルに開けてもらう。
…私では到底開けれそうに無いです。
扉開けたその先は広く、200人以上普通に入れます。その奥の椅子に父が腰掛けていた。
「よく来てくれた勇者達よ!」
父が勇者達を見てすぐにそう声を掛けてきた。
「父様、此方にいる方がこの勇者のまとめ役をしているマコト様です」
「初めまして王様、この度勇者として召喚されたマコト・シンジョウと言います」
マコト様が前に出て跪いてそう挨拶をする。
「マコト言ったか、そんな畏まらなくてもいいぞ。楽にしなさい」
父様が微笑みながらそう言う。
…やはり、私の父ですね。そんな王とか王女とかどうでも良さそうだ。
ですが…
「へぇー、その人が勇者?そうは見えないなー」
そうケラケラと笑って父の横に居るのは私の姉であるジェシー姉様だ。
姉様は私たちと違って、「自分は王女なのよ?」と王女という肩書きを使って好き勝手にしている人だ。
それに、気にくわない人が居たらすぐに投獄か最悪処刑をしようともする。
…この両親からどうやったらあんな傲慢で高飛車な子が育つんだろう。これだけが不思議だ。
「こらジェシー、止めろ」
「だってぇ、本当のこと言っただけじゃん」
「余計悪いわ」
「なら、嘘でも強そうって言って下手に出ろって?嫌よ。私、嘘つけないし」
姉様、早速嘘をついてますよ。
私が7歳の時に父様が大切にしていたあの花瓶を割ったのはどこの誰でしたかな?
それに、知ってますよ?この城を抜け出して強そうで格好いい人を誘惑しているのを。
本当に、我が姉ながら残念な人だ。
あれで、この国の第一王女と言うのだから笑えてくる。
まぁ、そんな事より…
「父様、一つ聞きたいというか確認したいことがあるのですが…」
「ん?なんだ?」
「はい、勇者の中で一人だけその称号が無いか方が居まして」
「何?本当か?」
「本当です」
すると、父様は顎に手をやって考える素振りを見せる。
「では、その者を呼んでくれるか?」
「分かりました。それでは、イナガキ様前…に」
「どうしたんだ?リリ」
「イナガキ様が居ません」
「何?」
「イナガキ様、どこに行ったんですか?」
ーーーーー
翔 side
「あー、なんとか成功したな」
今俺は一人でこの城の中を歩いている。
どうやったのかというと、あの召喚された部屋から出て少ししてからスキルの【偽造】を使って自分の姿を変えて皆から離れただけだ。
「俺の推測が当たって良かった」
別にあのまま、リリについて行っても良かったが途中から気が変わったと言うか「偽造使って自分から出て行った方が早くね?」という事に気がつき、最後列まで下がって、偽造を使った。
「しっかし広いなー」
皆と離れてもうかれこれ20分位歩いているが一向に出口つうか玄関が見つからない。
もしかして…迷った?
いやいや、そんなはずは無い。確かにこんなに広い建物は初めてだが大丈夫な筈だ。…多分。
もう、まどろっこしいな。
窓から出て行こうかな?めんどくさくなったし。
「行くぜ!」
ということで、近くにあった窓から飛び出て、小鳥に偽造をし、出て行った。
…鳥にも姿を変えれるってすげー便利だな偽造。
(ハーハッハッハー!俺は飛んでいるんだ!)
…すまない。飛ぶなんて経験初めてしたんでテンションが上がってしまった。
スカイダイビングなら何度もしたことあるけどね。
ーーーー
気持ちよく空を飛んでいた俺はそろそろ降りることにして、路地裏に降り立った。
鳥の姿を解いた俺は何気ない顔で路地裏から出て行く。
「へぇー結構大きいな」
さっき、召喚されたばかりのため知らなかったが、この国は意外と大きい事を知った。
そんな事より…
「冒険者ギルドって何処だろう?」
と言うか、現在地も分からん。
…仕方無い。近くの人に聞くか。
聞いた結果、此処からは結構遠くて20分くらい歩く羽目になった。
「此処が冒険者ギルド…ね。」
初めて見た感想は、マジで異世界にきたんだなーと言うことと、意外と小さい事だった。
俺の推測だが、ギルドって日本で言う市役所みたいな所だろ?
日本でも市役所なんて入ったこと無いから少し緊張するな。
まぁ、こんな物騒な市役所なんて無いけどな。
中に入るか…
ギィィー
建て付けが悪いのか、扉を開けたら音が出てしまい、中にいる冒険者らしき人達が一斉にこっちを見てくる。
だが俺は、それを無視してそのまま空いている受付嬢の所に向かった。
「いらっしゃいませ、新規登録の方ですか?」
「はい、そうです」
「畏まりました。それではこの魔道具に手をかざして下さい」
そう言って取り出したのは、水晶みたいな形をした魔道具といわれる物。
言われたとおりに、右手を魔道具にかざす。
すると、少し光った。
「ありがとうございます。これで登録が終わりです」
「早いですね」
「はい、この魔道具が優秀な物なので。それでは、ギルドについて説明は要りますか?」
「お願いします」
「では手短に」
受付嬢から説明されたことは…
・ギルドカードにはランクがあり、F~SSSの9段階に分かれている。
・此処ではクエストを受けれるが、自分と同じランクかその一つ上か下のしか受けれない。(前までは自由に受けれていたが、実力が無いのに自分の上のランクのクエストを受けて冒険者が死にすぎたためにこれに変えたらしい。)
・クエストをこなしていくとポイントが貰えて、それが一定の量を貯めるとランクアップする。
・しかし、Dランクからはランクアップ試験があり、試験管と模擬戦をしてもらうこと。
・さらにAランクからはたまに緊急招集がかかることがあるらしい。どうしても無理な理由がある場合は仕方ないが、サボった場合はギルドカードの権利を剥奪する。
・ギルド内での私闘は禁止。
・ギルドカードを紛失したらすぐに言い、再発行をしてもらう。その時に再発行料として銀貨3枚要る。
「以上で説明は終わりますが何か質問はありますか?」
「いえ、無いです」
「そうですか、あなたの未来に幸あらんことを」
「ありがとうございます。では早速クエストを持って来ますね」
ギルドカードも渡された。
「こちらがギルドカードです。ギルドカードは念じれば現れて、消すときも同様に念じればいいです」
言われたとおり、出ろと念じる。
すると、手元にカードが現れた。
ネーム ショウ
種族 人間
ランク F
0GP
0ゼル
と、表示されていた。
ゼルは何なのかわからないがまた今度聞けばいいか。
登録が終わったから早速クエストが貼られている
所に向かう。
登録したばかりだから当然俺のランクはFだ。
で、Fランクで受けれるクエストはこれだ。
薬草採集 Fランク
薬草を10束持ってきて下さい。
報酬 300ゼル
家の草抜き Fランク
家の庭の草が伸びてきたので抜いてくれませんか?
依頼主 クレランの爺さん
報酬 500ゼル、お昼ご飯もあります。
廃屋の建て壊しの手伝い Fランク
力があるなら誰でもいいから手伝ってくれ!
報酬 500ゼル
「へぇーこの世界のお金って“ゼル”って言うんだ」
早速、謎が解けたぜ。
と言うか、何で俺文字読めてんだ?
…ま、いっか読めるんなら便利でいいし。
俺は、この3つの中で定番の薬草採集をする事にする。
「すみません、これを受けたいんですが」
「はい、薬草採集ですね。薬草はこの近くにある草原で採れます」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ、初めてのクエスト頑張って下さいね」
受付嬢に笑顔で送り出された俺は意気揚々とギルドを後にした。
…防具とか何もしていないけど、お金が無いし薬草を採るだけだから大丈夫だろう。
ーーーーー
あれから、また少し迷ったがすぐに門にたどり着けた。
門の前にいる、門番に挨拶をして外に出る。
「この門は夜の7時になったら閉まるからそれまでに帰って来いよ」
「分かりました。それで今何時ですか?」
「今は…5時30分だな」
「え?こんなに明るいのに?」
「お前…何も知らないのか?今はサラーマの7月だろう?だから日が長いのさ」
7月…と言うことはこっちの世界では夏なのか。因みに日本にいてこっちにくる前は10月で秋だった。
「すいません、ついでに一日は何時間か教えてくれませんか?」
「お前、記憶喪失か何かか?じゃないと一般常識を知らなさすぎるぞ?」
「えぇ、そうなんですよ」
「なら仕方ないか…それで一日は何時間かだったな」
「はい」
「1日は24時間で一年は365日。ついでに一ヶ月は31日だ。他に質問は?」
時間だけを教えてもらうつもりがたくさん教えてもらえた。
知っていて損は無いからいいだろう。でも、記憶喪失と勘違いされたのは少し納得いかないけどな。
まぁ、一般常識をしれたしいいか。
あ、お金の価値も教えてもらっておこう。
門番さんに聞いた所お金は…
銅貨1枚で100ゼル
小銀貨1枚で1000ゼル
銀貨1枚で10000ゼル
小金貨1枚で100000ゼル
金貨1枚で1000000ゼル
白金貨1枚で100000000ゼルらしい。
「銅貨より、小さいのは無いのか?」って聞いたら少し同情されて、「無い」と答えられた。
門番さんのせいで、「同情するなら金をくれ!」と言うセリフ思い出してしまったでは無いか。
門番の同情した目線が嫌になったのでそそくさとその場を離れて薬草を採りに草原へと走っていった。
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「いやー。調子に乗って採りすぎてしまった」
走ること10分。あの受付嬢が言っていた草原に着いた俺はスキルの【鑑定】を使って薬草を探した。
薬草は至る所にありブチブチと抜いていって、気がつくと150束くらい採っていた。
「まぁいいか、これで報酬が加算されるだろう」
薬草の値段は知らないが、報酬に加算されるのは間違いないだろう。
…十分採ったし帰ろうかな。
「それにしても、モンスターに会わなかったなー。一目どんなのが居るか見たかったのにー」
そう、何故かモンスターは居なくて、スキルの【索敵】を使ってもかすりもしなかったのだ。
…何か、異変でも起こっているのか?それともこの周辺はそんなもんなのか?
分からないな…
「考えていても仕方ないな。街に戻ろうか」
今、何時か分からないが走って帰ればギリギリ間に合うと思っている。
と言うわけで、ダッシュ!
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結果から言うと間に合いませんでした。
思いっきり門を閉められています。
ここまでくればどういう事か分かりますよね?
野宿することになりました♪