エディプスのラブストーリー/魔術師ルイスが失恋した話(ファンタジーRPG)
ジャスティスゲームズさま製作の同人RPG「ファンタジー世界で冒険者シミュレーションするゲーム」におけるエディプスイベントをノベライズしました!!ネタバレにつき特にまだエディプスと出会ってない!という人は注意です!!
オリジナル主人公は不在ですが、どろねむ(泥上の眠り亭)勢のルイスとハーヴェイのカップル、ヤールタ、ちょい役でミアファラちゃんが出てきます!!
メイン宿って言われてる群青勢より、こっちの面子のが好きだったりしますw
ではどうぞ↓↓↓↓↓↓↓
エディプスは山賊の子どもだった。彼の父とその配下たちは、灰色山脈を根城にし、周辺の村々や商人たちから恐れられていた。
エディプスの母親は、村からさらわれてきた娘だった。たぶん、同じように生まれた子どもたちが百人はいた。そのほとんどは生まれて数ヶ月で死んだろう。彼が生き残れたのは幸運だった。
汚物の中に生まれたエディプスに気まぐれに目をかけた男がいた。かつては帝都の象牙の塔で学生をしていた男で、痩せていて背が低かったが、ちょっとした魔術が使えること、読み書きと計算が出来たことで、“換金屋”として一派の中ではある程度の地位を得ていた。そいつが食事を与えてくれ、それ以上に重要なのは、エディプスは文字を学び、略奪した本をもらえたことだ。彼はその境遇と内側の常識に違和感を覚えることになった。男はそのうち首領の勘気に触れて殺されてしまうけれど、その頃にはエディプスは一人でその食い扶持を稼げるようになっていた――性処理の係として、だったが。
エディプスは十一歳になったとき、はじめて襲撃の部隊に加わった。山道を通る隊商を狙うものだ。襲撃は特に問題もなく成功した。いくつかある馬車のうちの一つ、その幌のなかに、ひとりの美しい少女がいた。エディプスと同じくらいの齢だろうか。班長は彼女を強姦することにし、エディプスもその遊びに加わり、そののち、彼女と略奪品を持ってアジトに戻った。
略奪した女も、いちど長に献上することになっていた。エディプスの父はその少女を気に入り、彼女はおもちゃの一つになった。すぐにエディプスの班が少女に手をつけたことが発覚し、班長は殺された。エディプスは殴られ、頬の骨が折れたが、それだけで済んだ。
しばらくしたある晩に、エディプスは少女のいる部屋に忍び込んだ。乱暴をされる、そう思った少女は叫びそうになったが、エディプスはナイフを突きつけて黙らせた。人を思うとおりに動かす方法として、説得というやり方があることを彼は知っていたが、重要な局面で実践できる自信はなかった。エディプスは少女を連れ、アジトを後にした。
二人は旅をはじめた。少女は何度か逃げ出したり、エディプスを殺そうと試みたが、結局できなかった。エディプスは強かったし、いま少女が頼れるのは彼しかいなかった。
一年半ほどの旅の末に辿りついたそれなりに大きな街で、エディプスは喧嘩に巻き込まれた。その際にたまたま助けた商家の男に招待され、滞在することになった。一ヶ月ほど過ごすうち、少女は商家のせがれに見初められ、婚約を申し込まれた。
「冷静に考えて、君はたぶん、この街に残ったほうがいいかなって思う」エディプスは言った。
「そうね」彼女はエディプスの顔を見ずに言った。「冷静に考えて、わたしもそう思うわ」エディプスは餞別に金を受け取り、少ししてから街を後にして、ひとり旅の末に自由都市に入り冒険者になった。
【オープニング】
四ヶ月くらい前の話だけど、俺と相棒のハーヴェイ、ヤールタとエディプスは、商人を護衛するっていうありがちな仕事で灰色山脈を通った。途中十人あまりの賊の襲撃があったけど、追い返すのは難しくはなかった。自分で言うのもなんだけど、俺とかハーヴェイは『はじめの六ヶ月』を終えてもう五年は経った――要するに腕利きなんだ。
で、俺たちは目的の街に着いた。片道だけの契約だったから、それで仕事は終わりだった。打ち上げとして普段よりちょっと良いような店で飲んでるとき、たまたま仲良くなった騎士の男から話を聞いた。灰色山脈の賊のある一派を、騎士団で叩く計画が持ち上がって来た、という。
「オレの彼女の家族もやられちゃってさ。憤るよね。っつか、これまで放置しすぎだったんだよ。余裕出てきたし、じゃあまあ、そろそろやらんとならんねって、んで」
「あの、ぼくも、その話に参加させてもらいたいんだけど、いいでしょうか?」
それまで黙っていたエディプスが口を挟んだ――奴はガキみたいな喋り方をする。
「あっほんと?構わないよ、むしろ歓迎するよ。たぶん。俺けっこうこの作戦においては偉い方だから。っていうか話を持ち上げたのが俺なんだけど、まあやっぱ人手が他にも欲しくてさ、だってよ――」
騎士は乗り気だったが、俺は嫌だった。騎士団の仕事なら金も入るだろうが、俺は必要以上に金を稼ぎたい人間ではないんだ。大掛かりな話になるだろうし、帰る街に恋人もいたからね。
「面倒くせえからやめろ、エディプス」
同じように黙っていたハーヴェイが言った。俺と同じ気持ちだった。
「なら皆は帰ればいいでしょ。ぼくが勝手にやるから」
その時の奴は強情だった。今思い返せば理屈はわかるけどな。
エディプスと俺たちは常に組んでた仲良しってわけでもないけど、一月前にいた奴がもういない、みたいな業界だ。何回か一緒に仕事してたら、とくに共に死線を潜り抜けたことがあるってなると情が湧くもんで――俺たちは結局、四人でその話に乗ることにした。
晩にエディプスの話を聞いて、ハーヴェイは「残ってよかった」と無表情に言った。あいつは良い奴なんだよ。見えねえけど。
【シティ・アドベンチャー・パート】
アジトの場所がよう分からんということで、エディプスが抜けた時と同じとこってこともなかろうし、結局それを俺たちが調べることになった。あいつらが動いてるの悟られてもしょうがねえし、そういう意味で「人手が要る」って話だったわけだよな。
つってもコミュ障のハーヴェイとエディプスは使えないから、実働してんのは俺とヤールタだけだったが、まあ結構簡単に“換金屋”――略奪品を取引しに来る、賊の仲間だ。そいつを見つけることはできた。
これを報告して後は騎士団と一緒にアジトを襲撃、でもよかったんだが、俺たちは、エディプスの意を汲んでやる事にした。
【シーフ・パート】
ヤールタは換金屋と順調に仲良くなって、一味に加わることができた。内情知らんとどうにもならんからね。仕込には二ヶ月弱かかった。その間俺は恋人と文通をしていた。長くなるけど報酬がだいぶ入るはずだから、君に指輪を買って帰るよってね。
ダムカは良くやったと思う。大規模な襲撃の日時と、しかも賊のアタマはそれに参加せず留守番するっていう、クリティカルな情報を掴んだのを伝えてくれた。
「やるぞ」
ハーヴェイがエディプスの背中を叩いた。
【潜入~クライマックス・バトル】
襲撃の日に合わせ、俺たちはヤールタの手引きでアジトに忍び込んだ。ヤールタはアジトの構造も番をする賊のことも把握していたから、ほとんど見つからずに動くことができたし、やり過ごし得ない番は一瞬で黙らせ、頭領の部屋まで順調に辿りつけた。
ドア番の賊が一人いたがハーヴェイが突撃して潰し、その勢いのまま扉を蹴破った。中には手下が二人と、ベッドの上にアタマの男が裸でいた。傍らには女があり、そいつが叫び声をあげた。
賊長は裸のまま大剣を掴んでこちらを睨みつけた。それだけで特に何も喋らなかったし、エディプスもまた何を話すつもりもないようだった。
少人数相手の奇襲戦なんて一瞬で決まるもんだ。ボスの体はハーヴェイより二回りもでかかったが、防具どころか服もなかったし、しょせんは人間だ。俺たちは人間相手の荒事が一番得意なのだ。俺が詠唱を始める。相棒が突っ込む。それに合わせて俺はボスの眼前に『daze』目くらましを叩きつける。象牙の塔で学んだもので一番役にたってる魔法だ。この黄金パターンで、目論見通りハーヴェイの剣はボスの腹に突き刺さった。初太刀で態勢は決した。
俺に向かってくる手下はエディプスが潰した。奴も腕は良いんだ。女は震えてるだけだった。賊のアタマはハーヴェイ相手に粘ってはいたが、ヤールタが投げた短剣と、俺の『shock』痺れ矢が直撃し、態勢を崩したところに、俺の相棒の斬撃がきれいに入ってぶっ倒れた。俺たちに被害は一切なかった。
倒れた大男は呻き、取り落とした武器に手を伸ばして立ち上がろうとしたが、その手にエディプスの剣が突き刺さった。右手から左手、足と、エディプスは末端から内側へとゆっくりと殺人を進めていった。賊長は呻くが、なかなか死なない。しばらく俺たちは奴の包丁さばきを見ていたが、そのうちハーヴェイが、大男の首に剣を振り下ろし、終わらせた。他の賊が集まってくるだろうしな。
「面白かったか、エディプス」
「そんなまさか。そういう義務があったから……そんな気がしただけだよ」
俺は違うけれど、象牙の塔に入れるような、恵まれた環境で育った奴ってのは、芸術作品を作りたがる性質を持ってる場合がある。たぶんね、エディプスを育てた男っていうのは、だいたいこんな事になるのを望んでたんじゃないかな。少しそう思う。
ヤールタの想定していた脱出ルートを通り、俺たちはつつがなく脱出した。
仕事自体はこれで終わり、というわけでもない。即日首尾を騎士団に報告し、彼らと合流して残党狩りを行った。カシラを潰したお陰で騎士団はだいぶ楽をしていたようだ。報酬はボーナスで二倍になり、そのうちの2/5はヤールタに譲ることにした。まあ、一番仕事をしたのは奴だ。異存はなかった。
【エンディング】
終わった後、俺たちは騎士団の打ち上げに招待された。彼らとコネを深めておくのは今後きわめて有用だろうし、俺たちはもう数日滞在することにしたが、
「行くところがある」とエディプスはそう言って別れようとした。そうするとだ。
「持ってけ」ハーヴェイが自分の分け前をエディプスに渡しやがった。ふざけろと俺は思った。おかげで俺は俺の報酬も奴に渡さざるを得なくなった。ヤールタは鼻くそをほじっていた。アイツはそういう奴だ。
仕事の話はこんなもんで終わり。あとはまあ、彼女に手紙で伝えてた指輪は結局買えなくなっちまったから、そのことを謝りに俺はあいつの部屋に行ったんだ。でそれがちょうど他の男とセックスしてる現場で、俺はとてつもなく落ち込んだ……ってくらいだ。
――ああ。そうだよ。俺はそれが言いたかったんだ。意を汲め。慰めろ。俺を。……オラアッ!
……エディプスは自由都市で冒険者になった。何の才能もないもの、職を失ったもの、荒くれ者、怠惰なものがそうなるように。命を賭けさえすれば金が入るような仕事がいくらでもある職だ。新入りの三分の二は半年で死ぬかその行方をくらませるが、彼には才能があった。半年もすれば彼は腕利きの一人として扱われたし、後輩からはちょっとした憧れの目で見られるくらいになった。
エディプスは一匹狼だったが、それは常に行動を共にする仲間を持たないというだけの話で、実際には利害の一致した他の冒険者数人と仕事をすることが多かった。
ある遠出の依頼をこなした際に、騎士団が灰色山脈の山賊を鎮圧するという話を聞き、たぶんそれは自分の古巣のことなのではないか、とエディプスは思った。彼と彼の仕事仲間は、その話に加わることにした。
エディプスは仲間と共に山賊のアジトに潜入し、やがて賊長と対峙した。はたしてその男はやはり彼の父親であり、エディプスは男を殺した。
山賊団を潰したあと、エディプスは仲間たちと別れて、とある街に向かった。そこはかつて少女と別れた街であり、エディプスは彼女に報告をする必要があった。
商家はもう無かったし、少女の行方はわからなかった。噂を聞くに、彼女は子どもが産めない体であることを理由に、商家が潰れるしばらく前に離縁されたらしかった。
エディプスは三週間かけて情報を集め、娼婦となった少女を探し当てた。彼女は未だ美しかったが、やつれていて、十七、八よりはずっと齢が上のように見えた。
賊長を殺したことを伝えると、そう、と彼女は言った。エディプスはその身を買い受け、二人でその街を出た。
それから二人はずっと一緒にいた。やがてどちらかが死に、もうしばらくして、もう一方も死んだ。
「たぶんね」エディプスは言った。「ぼくは君のことを愛しているんだと思う」
「わたしもそう」彼女は言った。「たぶん」と。
……まあ実際、最後のほうは俺の想像なんだけどな。あいつはその物語を完遂したってことになるわけだと思うんだよな。そこにやっぱ多少の憧れ、みたいなもんがあるだろ。俺にはあるんだよ。ミアファラ。でほら、俺たちの出会いっていうのは、君んとこのパーティが賊相手に壊滅しかかった、って時に俺とハーヴェイがたまたま駆けつけて助けた、っていうヤツだろ。起点としては全然悪くないと思うんだけど。思わない?……ハーヴェイがいい?いや、ミアファラ、お前な、あいつはな、胸毛がな、すっげえ濃いんだぞ!!
RPGなのでデータがあります。よろしくお願いします。
潜入パートで囚われている女性たちを助けるとさらにボーナス報酬が入りますが、時間をかけすぎると敵が集まって二連戦になり、奇襲からの目くらまし→(阿吽の呼吸→)渾身の一撃コンボを賊長に対して1ラウンド目に叩きつけられないのでかなり苦しい戦いになります。よろしくお願いします。また戦闘が合計で40ラウンドを超すと遠征部隊が帰ってきてゲームオーバーになり、アナグマ戦術も使えません。潜入するキャラが事前に集団戦対策の仕込みをすれば多少楽になりますが、AP(※怪しまれポイント)との両立が難しいと思います。よろしくお願いします。
主人公が育っていればもちろんどうにでもなりますが、イベント発生時期に育成を間に合わせるのは難しいでしょう。この時期の主人公はまだ仲間に負んぶに抱っこである場合がほとんどだと思います。初期CPが高ければいけるけど、作者が言うところでは、ライトユーザーにオススメする初期CPは25前後、より雰囲気を楽しみたい人(本来の難易度)は15とのことですし、そこから離れた時の話をしても仕方ない……最大の100CPにして邪法:死霊術(中級)と精神内儀式法、即時詠唱を取れば、それはまあ人間相手の集団戦は全て余裕でしょうが、はっきり言ってわたしはそういったプレイングは全く面白くないと思いますね。ヘビーゲーマーだからかなあ?(笑)
……で、高CPチート主人公も使わない、バグも使わない、エディプスには彼女と幸せになってほしい、となると通るルートはこうなるよな、となった次第です!
エディプスが賊長と戦うほうが美しいとは思ったんだけど、実プレイだとハーヴェイ(あとルイス)が強すぎてまあこうなるんですよねwエディプスは強敵と戦うより多数戦が強い性能だし。やっぱゲームのノベライズって自分のプレイルートも反映させるべきだと思うんだよな~。
ではではみなさま、よい「ふぁぼシミュ」ライフを!読んでくださりありがとうございました!
追記謝罪:ハーヴェイファンの皆さま(特に女性)はごめんなさいwwwwwww
ミアファラも実際には主人公が出会うキャラですけど、ルイスとの掛け合いが好きなので捏造しましたw浮気された話も捏造wごめんなさい。でも絶対ルイスはミアファラが好きだと思うw