僕だけがいない世界で
僕はある時死ななくなった。
冗談じゃないよ?なんでかわからないけど・・・・・・
病気にもならないし、ケガをしても直ぐに治るし、老いることもないしもう最高!!
これこそ人類最大の夢だよね♪
なんて思っていた時期が僕にはあった。
勿論食べなくても飢えは感じないし動いても疲れはするけれど気絶することもない。だけどね・・・・・・僕はだんだんとこの不老不死・・・とでもいうのかな?を憎むようになっていた。なんでかって?それはつい500年ぐらい前のこと、僕がまだ75歳で、死んでしまった友達の葬式に行ったときの事だった。高校の頃から仲が良くて、大学も同じだった。勿論僕はもう不老不死だからその時と姿も変わっていない。強いていうなら変わったのは着ている服くらいのものだろう。
それを運悪く高校の時の同級生に見られてしまった。最初は僕の息子かな?と思ったみたいだけど、ばれてからはとんでもないことになった。散々化け物扱いされ、あげくのはてには警察まで呼ばれたんだ。いったい僕が何をしたっていうのか?僕はただ、気づかないうちに不老不死になってしまっただけなのに。
その後警察から研究施設へと運ばれ僕は体を切り刻まれる日々へと変わってしまった。勿論麻酔も打ってはあるけど僕は体質のせいか直ぐにきれてしまうから痛みを感じてしまう。それを見た研究員達は麻酔を使うことをやめそのまま僕の体を切り始めた。「直ぐに治るから良いじゃないか」とか「どうせ死ぬことは無いんだろ?」と言いながら。その間も僕の体は切り刻まれる痛みに悲鳴をあげていた。喉がつぶれるかと思っても直ぐに治る。切り刻まれても直ぐに治ってしまうから細胞の一部を取ることが限界で臓器まで見ることは出来ないようだ。その時僕は悟った。「本当に恐ろしいのは死では無い。苦痛の方なのだ」と。「死は終わりでもうなにも考えなくても感じなくても良い。つまり逃げることができる場所だ」と。
しかしながら当然のように僕には死ぬことは出来ない。いくら研究員のやつらに切り刻まれたって、10階建てのビルから飛び降りたって、海に飛び込んだって、手首を切ったって。そんなことをしているうちに僕は気づいた。
「そっか、僕は死にたいんだ。」
人類の夢のはずの不老不死になり、これから幸せな日々を送ることを夢見ていたはずなのに不老不死になった僕は全く幸せじゃなかった。一度、結婚もした。その時は幸せだと思っていた。そう、思っていただけだった。妻が年老いて死に、息子も孫も死に、僕は新しい妻をとるきにはなれなかったし、ひ孫の顔を見ることすら拒んだ。これ以上悲しみを重ねたくなかったのだ。
「俺はなんで生きているんだ?」
なんで生まれてきたんだろう?なんで不老不死になったのだろう?わからなかった。仲のよい友達も皆死に、新しく仲良くなったやつも全員死んだ。俺を切り刻んでいたあの研究員達も全員死んだ。研究施設のやつらも俺を切り刻むことによって人類を不老不死にしようとしていた奴等ももう諦めたようだ。
死にたい。もう終わりにしたい。もう嫌なんだ。生きているのが苦しいんだよ。死なせてくれよ。
そう思っても死ぬことが出来ない。
そうだ!火の中にいれば死ぬことが出来るかな?
そう思って試してみたがただ暑いだけだった。
毒なら?
なにも起こらなかったな・・・・・・・
首切りなら?
まず、やろうにも出来ねえし。
首吊りは?
苦しいだけだ。
俺はどうやって死ねば良いんだ?
そう考えながら今日も俺は死ぬために生き続ける。




