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第一話 ブラック店長、異世界へ飛ばされる

この作品は「経営」「料理」「商売」「異文化交流」を軸に、笑いあり、成り上がりありの長編シリーズとして展開できます。第二話では、エルフの少女が「おにぎり」に衝撃を受け、口コミで店が一気に広まるところから物語が動き始めます。

第一話


ブラック店長、異世界へ飛ばされる


「店長、お客様がお呼びです!」


「店長! レジ応援お願いします!」


「店長! 惣菜が間に合いません!」


朝八時。


開店して、まだ三十分。


俺――佐藤悠斗は今日も店内を走り回っていた。


スーパー『ライフマート北町店』。


住宅街にある、ごく普通のローカルスーパー。


店長になって三年。


学生の頃は「店長ってかっこいいな」と思っていた。


売場を作り、従業員をまとめ、店を盛り上げる。


そんな仕事だと信じていた。


だが、現実は違った。


人手不足。


終わらない発注。


売場変更。


値札の貼り替え。


クレーム対応。


閉店後の事務作業。


翌日のシフト作成。


帰宅は毎日深夜。


休日でもスマホは鳴りっぱなし。


「店長、明日一人休みます。」


「店長、冷蔵ケース止まりました。」


「店長、値札間違ってます。」


「店長、お客様がお怒りです。」


気付けば誰かが困るたびに呼ばれる存在になっていた。


店長という肩書きは立派に聞こえる。


だが実際は違う。


店舗で一番働き、一番責任を負い、一番雑用をこなす。


それを少しだけ格好良く呼んだ肩書きが――店長だった。


「……はは。」


乾いた笑いしか出ない。


昔は仕事が好きだった。


売上が伸びれば嬉しかったし、お客様に「ありがとう」と言われると疲れも吹き飛んだ。


でも今は違う。


毎日をこなすだけ。


生きるためだけに働き、働くためだけに生きる。


そんな生活だった。


その日の閉店後。


ようやく最後の事務作業を終え、重たい身体を引きずるように店を出る。


夜風が少しだけ気持ちいい。


「もうスーパーなんて……二度と働きたくない……。」


そう呟いた、その瞬間だった。


眩しいヘッドライトが視界を埋め尽くす。


「……え?」


ドンッ――。


激しい衝撃。


身体が宙に浮く。


次の瞬間、世界が真っ白になった。


……


…………


意識があるのか、ないのかも分からない。


夢なのか。


現実なのか。


そんな狭間を、ただ漂っている感覚。


身体の感覚はない。


音もない。


時間だけがゆっくり流れていく。


――俺、死んだのかな。


ふと、そんな考えが頭をよぎる。


「結局、何も成し遂げられなかったな……。」


子どもの頃は夢があった。


社会人になれば何か変われると思っていた。


努力すれば報われると信じていた。


でも気付けば毎日会社に使われるだけの人生。


恋人もいない。


結婚もしていない。


趣味に使う時間すらない。


仕事だけで終わった二十八年。


「俺の人生……こんなもんだったのか。」


悔しさとも諦めともつかない感情が胸を締め付ける。


その時だった。


どこからともなく、不思議な声が響いた。


《あなたの人生、お疲れ様でした。》


「……え?」


《これより新たな世界で、あなたに新たな人生を授けます。》


声が聞こえた瞬間。


眩しい光が辺りを包み込む。


ゆっくりと目を開けると――


そこには、どこまでも続く青空が広がっていた。


「ここ……どこだ?」


見渡す限りの草原。


風に揺れる木々。


遠くには巨大な城が見える。


さらに森の向こうでは、ドラゴンのような巨大な生物が空を飛んでいた。


「夢……じゃないよな?」


その時、頭の中へ機械的な声が直接響く。


《異世界へようこそ。ユニークスキルを授与します。》


《スーパー経営 Lv.1》


「……スーパー?」


思わず笑ってしまう。


「いやいや……勇者とか剣聖じゃないのかよ!」


ツッコミを入れた瞬間、目の前に半透明の画面が現れた。


────────


【スーパー経営 Lv.1】


・店舗設置可能


・商品仕入れ可能


・在庫管理


・売上管理


・レジ機能


・店舗拡張(未解放)


────────


「レジ機能って何だよ……。」


恐る恐る「商品一覧」を開く。


そこに並んでいたのは、見覚えのある商品ばかりだった。


・おにぎり 120G


・食パン 180G


・牛乳 220G


・カップ麺 190G


・コーラ 150G


・醤油 380G


「えぇ!?」


完全に日本のスーパーじゃないか。


しかも値段までそのまま。


「どういうことだ……?」


半信半疑のまま、今度は「店舗設置」を押してみる。


すると――


ゴゴゴゴゴ……


地面が揺れ始める。


目の前の空き地がまばゆい光に包まれ、みるみる建物が形を作っていく。


数秒後。


そこには見慣れた木造の店舗が建っていた。


入口には自動ドア。


駐車場らしきスペース。


そして看板には、大きくこう書かれていた。


『スーパー ユウト』


「……本当にスーパーできちゃったよ。」


あまりにも現実離れした光景に、言葉を失う。


すると森の奥から、一人の少女が恐る恐る近付いてきた。


長い金髪。


透き通るような白い肌。


そして、人間より少し長い耳。


どう見ても――エルフだった。


少女は建物を見上げ、不思議そうに首を傾げる。


「ねぇ……ここは何のお店なの?」


「お、お店?」


「こんな建物、初めて見た。」


俺は苦笑しながら入口の前へ立つ。


「まぁ……入ってみる?」


ウィーン。


自動ドアが開いた瞬間――


エルフの少女は目を丸くして飛び上がった。


「ド、ドアが勝手に開いたぁぁぁっ!?」


その悲鳴が、静かな草原に響き渡る。


こうして――


異世界初のスーパーは、一人目のお客様を迎えることになった。


そして、この出会いが王国中を巻き込む伝説の始まりになることを、まだ誰も知らない。


(第二話へ続く)

第二話 あらすじ


「異世界初のお客様」


異世界で突然スーパーを開くことになった悠斗。

最初のお客様となったエルフの少女は、自動ドアが勝手に開くだけで大パニック。店内へ入ると、明るい照明や整然と並ぶ商品、見たこともない包装食品の数々に目を輝かせる。

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