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第十話 最終決戦

常闇との最終決戦、開始!

呪滅師、科学班、軍隊、そして岸本と御堂の言霊…。

すべてを懸けた総力戦に挑む。

悲しみを乗り越え、世界に希望の光を灯す!


挿絵(By みてみん)



第一章: 布陣


夜の鈴ヶ淵市の丘の上、御堂の本陣ーー。

呪滅師の精鋭たちが一堂に会し、御堂の前に整列していた。

彼らの瞳には決意と覚悟が宿り、闇夜に揺れる篝火がその顔を照らし出す。


「皆、今より決戦の布陣を告げる。心して聞いてくれ!」

御堂の声は、風を切り裂く刃の如く鋭く響いた。


「常闇は鈴ヶ淵市街地の北に潜み、眠っている。自衛隊が迎撃を試みるが、おそらく奴を止めることはできまい…。そこで我々は、三方向からの飽和攻撃で常闇を追い詰める!」

彼の指が地図を叩き、戦場を指し示す。


「北側は、神霊十将二位・天宮焔、四位・辻村炎翔、九位・炎堂赫が率いる三部隊。三人の最大火力で奴を焼き尽くす!」


「東側は、十将六位・常世美弥、八位・時雨龍雲の二部隊。美弥と龍雲の雷撃で体力を削ぎ、感電により動きを鈍らせる!」


「西側は、十将五位・屋島悠玄、十位・坂本震洋の二部隊。悠玄の氷の大結界で部隊を守りつつ、震洋の重砲で奴の逃げ道を断つ!」


「この七部隊が一斉に攻撃を仕掛け、科学班の援護射撃を加える。奴を市街地中心、巨大怪異の淵へと追い込むのだ!」

御堂の言葉に、呪滅師たちの間に緊張が走る。

彼は一瞬、目を閉じ、深く息を吐いた。


「私は前線指揮所に立ち、皆に渡した依代を通じて指示を出す。七部隊が常闇を弱らせた後、十将三位・真砂泰山、七位・神藤真琴と共に奴を更に追い詰め、怪異の淵へ沈める。最後に、ヴィクトル・岸本と共に常闇と怪異を同時に消滅させる!」

御堂の声はなお厳かに続いた。


「この戦いは、これまで我々が挑んだどの戦いよりも苛烈だ。命を落とす者も多いだろう。だが、常闇を今ここで葬らねば、世界は滅亡の淵に沈む。皆の命、皆の魂を懸け、我々は勝利を掴む!そして共に祝杯を掲げようではないか!」

精鋭たちの喉から、雷鳴のような鬨の声が轟いた。


「十将最強の火力を誇る焔を中心に常闇を追い詰め、十将最強の防御を誇る俺が奴を止めるって事だな…いい作戦じゃねえか」


「泰山さんも、圧倒的な力じゃないのか?この前の呪詛の時だって…」

岸本の疑問に、泰山は豪快に笑い、腕を鳴らした。


「力はオマケだ。土の神さんの本質は『圧倒的な防御』だよ。俺ぁ世界一、土の神さんに愛される男だぜぇ!」




第二章: 常闇


日本全土が深い闇に沈んだ夜。

突如、鈴ヶ淵の大地が裂け、轟音と共に夥しい邪気が噴き出した。

草木は一瞬で枯れ、大地は黒く澱み、その光景は、まるで地獄の釜の蓋が開いたかのようだった。


裂け目からゆっくりと這い出したのは、漆黒の巨腕。

続いて現れたのは、常闇――黒い呪詛の巨人だった。

人の形を歪に模した体躯からは邪気が溢れ、動くたびに空気さえも濁っていく。


自衛隊司令官・剣崎厳は攻撃ヘリに乗り込み、眼下の巨人に息を呑んだ。

「なんて…化け物だ…」


同乗した呪滅師が、依代で中継しながら叫ぶ。

「剣崎司令官、ご指示を!」


「前衛ヘリ4機・戦車10両、砲撃開始!目標、常闇頭部!」


剣崎の指令と共に攻撃ヘリの機銃が火を噴き、ミサイルが唸りを上げ、戦車の主砲が轟く。

爆音が夜を切り裂き、常闇の頭部に火花が散った。だが――


「目標健在!ミサイル、主砲の攻撃、効果なし!」


通信士の報告に、剣崎の顔が歪む。常闇の放つ邪気は、まるで不可視の壁のように全ての攻撃を弾き返していた。


次の瞬間、常闇の巨腕が横に薙ぎ払われた。

その一撃は空気を裂き、衝撃波が攻撃ヘリ7機を瞬時に粉砕。

続いて振り上げられた蹴りは大地を抉り、戦車8両を瓦礫の山に変えた。


「くそ、通常兵器では歯が立たん…このままでは全滅だ!」

剣崎の声に絶望が滲む。


「航空自衛隊に燃料気化爆弾の投下を要請する!爆風の範囲外まで、総員一時退却!」


自衛隊が退却する中、F-16戦闘機が轟音を響かせて飛来。

燃料気化爆弾が投下され、灼熱の爆風が常闇の邪気を焼き払う。

噴煙が空を覆い、視界が閉ざされる。


一瞬の間を突き、噴煙の中から現れた常闇本来の姿…。

一瞥して、剣崎は言葉を失った。


眼窩には闇を煮詰めたような空洞が二つ、鬼火のような光を放ち、口元は深く裂けた亀裂から熱を帯びた邪気が漏れ出す。

全身を覆う黒い硬質の皮膚は、正に漆黒の闇を体現していた。


オオオオオオン…!


その咆哮は、地の底から湧き上がるかの如く響き、まるで世界の終わりを告げる断末魔のようだった。



第三章: 焔の砲火


ついに、呪滅師の精鋭たちが常闇と激突した。

鈴ヶ淵は、炎と雷鳴、呪文と爆音が交錯する地獄の戦場と化した。


「怯むな!私に続け!奴に反撃の隙を与えるな!」


天宮焔の声が、戦場の喧騒を突き抜けた。

彼女の両手から放たれる火球は、風を纏い濃縮された炎の塊となり、常闇の巨体を焼き焦がす。


「辻村、炎堂!頭部を狙え!他の者は両脚に全火力を集中しろ!」

「了解!」

焔の号令の下、辻村炎翔と炎堂赫の部隊が一斉に動き出す。

炎翔の炎刃と赫の熱線が、常闇の頭部を直撃する。


東側では、常世美弥が微笑みながら呟いた。

「焔さんたち、派手にやってくれるわね…負けてられないわ」

「俺たちの連携、見せてやろうぜ。全力で仕留めるぞ!」

「言われるまでもないわ…行くわよ龍雲!」

二人が同時に手を翳すと、強烈な雷嵐が巻き起こり、常闇の側腹を焼き払う。


西側では、屋島悠玄が低く呟いた。

「老骨に鞭打ってでも、奴を淵まで運んでみせるわい…」

坂本震洋が豪快に笑う。

「おう!俺の重砲と悠玄さんの結界がありゃ無敵だぜ!」

「我が水の力……見せてやろうっ!」

悠玄が静かに微笑み、氷の大結界をさらに厚く重ね、部隊を守る。

続いて坂本震洋の重砲が火を噴き、常闇の巨体を揺さぶった。

科学班の援護射撃も加わり、VIC-03百台が放つ、眩い破邪の弾丸が常闇を貫く。


ドンドン!ズシュン!


凄まじい爆音が響き、常闇は腕を構えて防御に徹する。

超硬質の身体に僅かな亀裂が走り、金属が焼けるような焦臭が戦場に漂い始めた。

常闇の動きが鈍り、後退する。


だが、勝利の兆しは一瞬だった。

常闇の口から噴き出す邪気が突如勢いを増し、焔を正面に捉えた。


前線指揮所のヴィクトルに緊張が走る。

「御堂。常闇の頭部で圧縮された邪気を検知。異常な質量だ…更に急速に集束しているぞ」


「焔!辻村、炎堂!火力を極限まで絞り顔面に一点集中させろ!神霊十将、科学班も全火力で援護!…破られれば陣は壊滅する!」


御堂の指示が依代を経由し、瞬時に戦場へ伝達される。

全火力が常闇の顔面一点に集中した次の瞬間だった。

渦巻く邪気が、熱が、一気に集束して放たれた。


ギュオオオオオオオオオオオオォォォォォン!!!


空間そのものが引き裂かれるような轟音。

常闇の口から放たれた邪気の砲火は、黒い奔流となって焔を呑み込もうとする。


「はあああぁぁっ!」


焔は全霊力を振り絞り、極限まで圧縮した炎をぶつけた。

彼女の炎は他の十将の呪文と融合し、光の奔流となって炸裂する。

戦場が白熱に包まれる。


(私が…私が何としても食い止める!この身が尽きようとも!!)


焔の心の叫びが、炎の奔流に宿る。

だが、常闇の砲火の残滓が彼女を呑み込み、焔は力尽きた。


「御堂様…あとは…頼みます…」


依代を通じて届いた彼女の最後の言葉は、まるで風に消える吐息のようだった。

遠くの山が砲火の余波で吹き飛び、部隊は壊滅を免れた。

だが、焔という最強の火力を失った代償は、あまりにも大きかった。



第四章: 絶望の邪気


焔の消滅は、戦場に暗い影を落とした。

常闇から噴き出す高濃度の邪気は、次々と異形の呪詛を生み出し、上級呪滅師たちを薙ぎ倒していく。


「総員、神霊十将を中心に散開!包囲を維持しろ!呪詛は各隊と科学班の砲撃で対処!」


御堂の冷徹な指示が、混乱する戦場を繋ぎ止める。

焔を失いつつも、精鋭たちはまるで一つの生命体のように動き、常闇の死角を突き、足元を絡め取り、怪異の淵へと追い詰めていく。


常闇の動きが突如鈍った。

だがそれは、敗北の予兆ではなかった。

巨体を深く屈ませ、全身の邪気を体内に吸い込み、不気味な熱を放ち始める。


ヴィクトルの瞳に、焦りの色が浮かんだ。

「御堂。常闇の体内で高濃度の邪気を検知。先程の攻撃とは桁違いだ…推算されるエネルギー放出量は、核出力の50メガトン相当を上回る」


彼の声は冷静だが、その言葉は戦場に絶望をもたらすものだった。


「演算終了…。予測破壊範囲は半径五キロ圏内完全消滅、十キロ圏内全壊だ。発動まで、推定六分」


「そんな…部隊の撤退すら間に合わん…!」

御堂の声に、僅かな震えが混じる。


「……どうやら俺の出番だな」

重厚な声が、戦場の静寂を破った。真砂泰山が一歩前に進み出る。


「すまない、泰山。私が愚将なばかりに…」

「なあに、御堂さんは名将だったよ。それに、これは俺の花道だ!」


泰山の身体がみるみる膨れ上がり、金属の巨人と化す。その姿は、まるで大地そのものが立ち上がったかのようだった。


「真砂泰山、只今見参!いざ推して参る…なんつってな!」

彼の笑顔は、絶望に沈む戦場に一筋の光を灯した。




第五章: 泰山の光球


泰山の渾身の蹴りが大地を揺らし、突きが空気を裂く。

だが、常闇は沈黙を保ち、微動だにしない。


「ちっ!やっぱ小手先じゃダメか…なら見せてやるぜ!土の真髄、究極の防御をっ!」


泰山が咆哮し、その身体が急速に変形していく。

常闇の巨体を一瞬で包み込み、分厚い金属の球体となった。


「総員、打ち方止め!泰山に全霊力を注ぎ強化しろ!私も続く!」


御堂の号令の下、生き残った呪滅師たちが全霊力を注ぎ込む。

神霊十将の霊力、科学班のエネルギー、御堂自身の力が球体に流れ込み、金属は眩い光の塊と化した。


ドゴオオオォォン!


凄まじい衝撃波が戦場を揺らし、光の球体が辛うじて耐え抜く。

やがて、球体は黒い砂のように崩れ落ちた。


中から現れたのは、硬い外殻が崩れ落ち、赤い筋肉が露出した常闇の姿だった。

身体は強烈な衝撃波を全身に受けて大きく歪み、苦痛に呻き声をあげる。

焔と泰山の尊い犠牲は、他の十将たちの心に強く宿った。



第六章: 六つの光


満身創痍の常闇が立ち上がろうとした瞬間、六つの光が戦場を貫いた。


「焔さんの炎、確かに受け取った…!」

辻村炎翔と炎堂赫が背中合わせに立ち、両手を翳す。


ゴオオオオォォ…!!

焔の残り火が融合し、灼熱の炎龍となって常闇の片腕を焼き千切る。

「まだ終わらせねえ…赫、行くぞ!」

「任せろ! 焔さんの分まで燃やし尽くす!」



「もう限界じゃ…」

屋島悠玄の氷壁が崩れ落ちる。

「いや、まだ終われねぇ! 悠玄さんの全霊力を、俺の重砲に注いでくれ!」

坂本震洋が大地を踏みしめた。


「やれやれ、老骨には堪えるのう…参るぞ震洋!」

「おおっ! 土と水の力、見せてやるぜぇ!」


ドゴオオオオォォン…!

氷の巨砲が常闇の腹部を貫き、絶叫が闇夜に響く。悠玄と震洋は笑みを浮かべながら、ゆっくりと崩れ落ちていった。



常闇の背後には、時雨龍雲と常世美弥が立っていた。

「美弥。俺たちの腐れ縁も、今日が最後になるかもな…皆に続くぞ!」

「ええ、でもあなたとなら本望よ…私たちの力、見せてあげましょ」

美弥が穏やかに微笑む。


二人が最後の力を振り絞り、強烈な雷嵐を巻き起こす。常闇の背中を焼き払う。


バチバチバチバチィッ!


常闇は苦痛に身体を歪ませながら、巨大怪異の淵へと追い詰められていった。

「やった…龍雲やったよ…遂に…怪異へ…」

涙を浮かべながら、美弥は龍雲と折り重なって倒れた。



第七章:復讐と信頼


数万人の怨念が渦巻く闇の深淵が、常闇を呑み込もうと蠢く。


「呪滅師の霊力、科学班の弾薬、全て使い切りました…あとは御堂様、お任せします…」


常世美弥の最後の声が、依代を通じて弱々しく届いた。

常闇は怪異の渦に抗い、身体を捩って激しく抵抗する。


「遂にここまで来た…皆の犠牲を、決して無駄にはせん!」

「常闇…貴様だけは絶対に許さない!おばあちゃん、良輔、みんな…!」

前線指揮所で、御堂と真琴が目を合わせる。


「残りの全霊力を振り絞り、奴を叩く。行くぞ、真琴!」

「はいっ!」


真琴が一歩踏み出し、全身から霊力を迸らせる。

「水鏡の水神、千代の風神。切り結ぶ刃、雫の剣を顕現し給う!斬!!」


彼女の詠唱と共に、風で極限まで圧縮された水の刃が常闇を切り刻む。鋭い水流は、常闇の筋肉を裂き、黒い血を撒き散らした。


続いて、御堂が最後の呪文を紡ぐ。

「日輪の御光を賜る。天照大御神の万世の闇を断ち斬る神剣、顕現し給う!」

彼の手には、眩い光の大剣が現れる。

剣は太陽の輝きを宿し、戦場を昼のように照らした。

御堂は一気に跳躍し、常闇の頭上から剣を振り下ろす。


グオオオオオォォ…!!


光の大剣が常闇の巨躯を真っ二つに分断した。

全身の筋肉が吹き飛び、臓腑が剥き出しとなる。

だが、常闇はなおも抗った。

巨大怪異の力を吸収し、身体の復元を始めたのだ。

筋肉がうねり、黒い脈が広がる。


「馬鹿な…呪滅師の全霊力を以てしても倒せん…だと…?」

「もう…無理なの?常闇は倒せないの…?」


全てを出し切った御堂と真琴の顔に、絶望が広がる。


キサマラ…ミナゴロシダ…。


地の底から湧き上がるような声。

常闇の裂けた口元に、禍々しい笑みが浮かんだ。


その瞬間、突如として爆音が響き、爆煙が常闇を包む。

自衛隊の残存部隊――戦闘ヘリ5機が現れた。


「ヘルファイアミサイル、常闇の臓器部分へ全弾集中!再生を許すな!」

剣崎厳の声が、戦場に希望を呼び戻す。


ギャオオオオオォォォ!


常闇が激痛に絶叫する。

ミサイルが無防備な臓腑を貫き、次々と爆発していく。

再生する間もなく臓腑が吹き飛び、遂に常闇は抗う力すら失った。

次第に怪異の淵へと飲み込まれていく。


「人類の力、思い知ったか!あとは任せたぞ、御堂!」


剣崎の声に、御堂は力強く頷く。

「剣崎…礼を言うぞ。岸本くん、今だ!常闇と怪異を、この世から消し去る!」

「ああ、行こう、御堂さん!」


二人は、巨大な怪異の深淵へと踏み込んだ。その背中には、戦友たちの魂が宿っていた。



第八章: 常闇の記憶


怪異の内部は、果てしない暗黒の空間だった。

数万人の無念と常闇の邪気が渦巻き、岸本の心を締め付ける。

常闇が怪異に呑み込まれつつある中、その記憶の断片が岸本に流れ込んできた。


遥か昔、母の腕に抱かれ、穏やかに笑う子どもの姿。

無垢な笑顔が、岸本の胸を刺す。


お前も…かつては人間だったんじゃないか。

母に抱かれ笑う、普通の子どもだった…。


岸本の頬を、一筋の涙が伝う。

何故だ?何がお前をこんな歪な存在に変えたんだ?

どんな絶望がお前をここまで追い詰めてしまったんだ…?


彼の心は揺れる。

俺の選択は慈悲なのか?罪なのか?怪異と向き合うたび、答えのない問いが俺を苛むだろう。


だが、お前はあまりにも多くの人を傷つけ過ぎた…。俺は皆の心を救うため、お前の存在を否定しなければならない。


御堂と岸本は、互いの目を合わせ、

世界の根幹を決定づける重みで、心の底から言霊を発した。


「怪異なんて、いない!!」


その言葉は、闇を切り裂く光の剣のように、常闇の核を貫いた。




第九章: 終戦の光


前線指揮所。真琴が握る依代が、眩い光を放つ。

それは、岸本と御堂の「否定の確信」が常闇の核に到達した証だった。


「今よヴィクトル!言霊が響いたわ!」

真琴の叫びに、ヴィクトルが即座に応じる。

「了解。全機照射!」


科学班のMG-01六十台が放つエネルギーが、光の渦となって怪異を包み込む。

戦場が白熱に染まり、闇が溶けゆく。

ヴィクトルはデータ端末を見つめ、静かに呟く。


「科学班の役目は全て果たした。MG-01は全機最大出力で照射…あとは、二人に委ねられる」


真琴は依代を握りしめ、光の渦を見つめる。

彼女の瞳には、復讐の炎を超えた、確かな信頼が宿っていた。


「出来るわ、御堂様と岸本。あの二人なら…岸本は、必ずあの悲劇を否定してくれる!」


次の瞬間、ヴィクトルの端末のグラフが急落。

常闇の呪詛の核が、完全に崩壊したのを示していた。


「頭がっ…痛い!ヴィクトル…せん…せい…」

メンゲルが苦悶の声を上げ、倒れ込む。

常闇の邪気が彼女の肉体から剥離し、消滅したのだ。


「メンゲルッ!」

ヴィクトルが彼女を抱き上げる。

空には、数万人の霊が光の柱となって天へ昇る。


「お…お父…さま…」

メンゲルの目に光が戻り、微かな笑みが浮かぶ。

それは、まるで天使の微笑だった。


「メンゲル、父さんだよ…!助かった、今度こそ助かったんだ!」

ヴィクトルは咆哮し、娘を強く抱きしめた。


「終わった……」

真琴は一人立ち尽くして、眩く輝く空を見上げていた。

彼女の全身は、強い達成感と、十五年にわたる呪縛から解放された安堵に震えていた。


彼女は、光の柱が天高く消えていく様を、涙を流しながら瞳に焼き付ける。

「ようやく終わったよ、おばあちゃん……良輔……」


闇が光に呑み込まれる中、御堂と岸本は静かに意識を失った。

戦いの地平線に、夜明けが訪れようとしていた。

岸本は白みゆく空に目を開く。朝日が、静かな安堵を運んでくる。


「終わった…んだな、御堂さん、真琴…」

彼は依代を握り、綾香の笑顔を思い浮かべる。傷跡は残るが、希望の光が心に灯っていた。



第十章:エピローグ


決戦の日から二週間後、岸本は事務所のデスクで煙草をくゆらせながら、いつになく呆けていた。


(あの決戦の夜…今思い返しても現実感がない。しがない探偵の俺が、皆と力を合わせて世界を救った?まるでおとぎ話だ…)


「岸本!何ぼーっとしてんのよ。パンケーキ焼いたんだから、早く食べなよ!」

真琴の明るい声が響く。


「ああ悪ぃ、今行く…って、おいおい、相変わらず凄えな。胃もたれしないか?」

岸本は笑いながら席を立つ。


真琴は分厚いパンケーキを二枚重ねにし、メープルシロップと生クリームを溢れんばかりにかけて食べている。


「この美味しさが分からないなんて、あんたも不幸よねー。美味しっ!クリームとシロップ、最高!味変でアンコも乗せちゃおうかな!」

屈託なく笑う真琴を見ながら、岸本にも自然に笑みが湧く。


「ごちそうさま。…食後にコーヒーでも淹れるか」

「苦い飲み物嫌い!私は抹茶ラテ飲みたいなー。ごはん作ってあげたんだから、今度はあんたが淹れなさいよ!」


食後の一時を過ごしていると、電話のベルが鳴り響く。


「はい、岸本探偵事務所」

「岸本か、真琴くんも一緒だな。また依頼を頼みたい」

機械音ではない、御堂の声だった。


「また【ノイズ】からの電話かなぁ?」

真琴は悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「ああ、光が丘市にある廃墟の案件らしい。…行くか、真琴!」

「おうっ!今回も頼りにしてるわよ、相棒!」



岸本は真琴を助手席に乗せ、車を走らせた。

世界は灰色かもしれない。

俺も真琴も皆も、心に闇を、絶望を抱えて生きて来た。

だが、優しさの余地は確かにある。

皆が前を向き、笑いながら進んで行けるーーそれが、俺が選んでいく希望だ。

これにて、全話完結です!

長い間、お付き合い頂き、本当にありがとうございました。

世界は灰色でも、優しさの余地はある。

彼らの旅は、これからも続いていきます。


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