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カトゥオール シアンティフク 11  作者: 双鶴


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9話

春の終わり、むさ大の中庭。

結菜は、白いブラウスに身を包み、ベンチに座っていた。

陽の光が、彼女の輪郭を淡く縁取っていた。


湊斗は、少し離れた場所からその姿を見ていた。

風が吹くたびに、結菜の髪が揺れた。

そのたびに、彼女の存在がこの世界に確かにあることを、湊斗は感じていた。


結菜の顔立ちは、以前と変わらなかった。

でも、何かが違っていた。

目の奥にある光が、より澄んでいた。

言葉の選び方が、より静かだった。

そして、笑顔が、どこか天使のようだった。


「感覚が、研ぎ澄まされてる気がするの」

結菜が、空を見上げながら言った。


「風の温度とか、光の粒とか、

今まで気づかなかったものが、見えるようになったの」


湊斗は、隣に座った。

「それって、科学者としての進化かもな」


「ううん。たぶん、命の輪郭が見えてきただけ」

結菜は、微笑んだ。


---


碑文谷のアパート。

陽翔が、ホワイトボードに「プロジェクト再始動」と書いた。


「やろう。結菜のために、もう一度」

湊斗が、静かに言った。


「何を?」

陽翔が振り返る。


「作品をつくる。今度は、結菜の“目”で見る世界を」

湊斗の声は、揺れていなかった。


「科学部の頃みたいに?」

大翔が聞いた。


「いや、あの頃より、もっと静かに。もっと深く」

湊斗が答えた。


陽翔は、ホワイトボードに太字で書き加えた。

《Project: 光の輪郭》


3人は、黙って頷き合った。

その沈黙には、覚悟の重力が宿っていた。


---


奥沢のアパート。

結菜は、ノートの余白に言葉を綴っていた。


「感性が、研ぎ澄まされていく。

命の輪郭が、光のように浮かび上がる。

湊斗の沈黙は、たぶん祈りだった」


窓の外で、夕暮れが街を染めていた。

その光が、彼女の頬を優しく照らしていた。


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