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カトゥオール シアンティフク 11  作者: 双鶴


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8話

奥沢のアパート。

結菜は、カーテンを閉めたまま、机に向かっていた。

ノートの余白が、いつもより広く感じられた。


「悪性リンパ腫」

その言葉は、医学書の中では定義されていた。

でも、自分の中では、まだ輪郭が曖昧だった。


痛みは、観測されない粒子のように、時折ふっと現れては消えた。

誰にも見られていない。

だからこそ、静かに向き合うしかなかった。


結菜は、鏡を見た。

顔色は少しだけ薄くなっていた。

でも、目の奥には、まだ光が残っていた。


「科学って、希望の形だと思ってた」

声に出すと、少しだけ震えた。


「でも今は、証明じゃなくて、祈りに近い」

結菜は、ノートにペンを走らせた。


「観測されない痛み。沈黙の粒子。

それでも、私は生きている。

湊斗の頷きは、たぶん支えだった」


窓の外で、風が街路樹を揺らした。

その揺れが、結菜の決意をそっと包んだ。


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