4話
むさ大のキャンパスに、夕暮れが降りていた。
研究棟の窓に、茜色が滲む。
湊斗は、実験レポートを閉じて、結菜の方を見た。
結菜は、ノートの余白に何かを書いていた。
「何を書いてるの?」
湊斗が、声を落として聞いた。
「夢のこと」
結菜は、ペンを止めずに答えた。
「夢?」
湊斗は、少しだけ眉を動かした。
「誰かが言ってた。“夢は現実の始まり”って」
結菜の声は、夕焼けよりも柔らかかった。
湊斗は、窓の外を見た。
「俺たち、科学部の頃は夢ばっかりだったな」
「でも、今は違う。夢を現実にする方法を、少しずつ知ってきた」
結菜が、ノートを閉じた。
「それって、科学だよな」
湊斗が笑った。
「うん。科学って、夢を現実にする手段だと思う」
結菜が頷いた。
2人の間に、沈黙が流れた。
でも、その沈黙は、確かに未来に向かっていた。
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碑文谷のアパート。
陽翔が、ホワイトボードに「研究テーマ案」と書いていた。
「“夢は現実の始まり”って、結菜が言ってたらしいぞ」
大翔が、冷蔵庫から麦茶を取り出しながら言う。
「それ、俺たちの科学部の頃にぴったりじゃん」
陽翔が笑う。
「今は、現実の中で夢を見てる感じだな」
大翔が、コップに麦茶を注いだ。
「それ、悪くないよな」
陽翔が、ホワイトボードを見つめた。
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奥沢のアパート。
結菜は、ノートの最後のページに書き込んだ。
「夢は現実の始まり。科学は、その橋になる。湊斗の笑顔は、たぶん肯定だった」
窓の外で、星がひとつだけ瞬いていた。




