14話
数日後、結菜は静かに息を引き取った。
誰にも告げず、風のように。
湊斗、陽翔、大翔は、病室の前で立ち尽くしていた。
言葉はなかった。
ただ、結菜の残した“光”が、胸の奥で揺れていた。
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葬儀の翌日、奥沢のアパートに一通の封筒が届いた。
宛名は「湊斗くんへ」
中には、結菜の手書きの手紙が入っていた。
湊斗くんへあなたと出会って、私は“科学”が好きになりました。
でも、それ以上に、“人”が好きになりました。私の命は、ここで終わるけれど、
あなたたちの中で、きっと続いていくと信じています。私の見た光を、どうか、誰かに届けてください。ありがとう。結菜
湊斗は、手紙を胸に抱いた。
その重さが、彼女の“今”だった。
むさ大・講堂。
「Project: 命の輪郭」の上映会が始まった。
スクリーンに映るのは、結菜の視点で描かれた世界。
風の音。光の粒。沈黙の重さ。
そして、結菜の声。
「命って、思ってたより柔らかい。
でも、思ってたより強い」
観客の誰もが、息を呑んでいた。
涙を流す者もいた。
でも、誰も言葉を発さなかった。
その沈黙が、彼女の声を包んでいた。
春。
碑文谷のアパートのベランダで、湊斗が空を見上げていた。
風が、ノートのページをめくった。
そこには、結菜の筆跡が残っていた。
「私の青春は、あなたたちの中で生きていく」
湊斗は、そっとページを閉じた。
風が、彼の頬を撫でた。
その風は、たしかに結菜の記憶だった。




