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カトゥオール シアンティフク 11  作者: 双鶴


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12/14

12話

むさ大・研究棟の屋上。

4人は、完成間近の映像をノートPCで確認していた。

スクリーンには、結菜の視点で描かれた世界が広がっていた。


風が静かに吹いていた。

星が、遠くで瞬いていた。

誰も言葉を発さなかった。

でも、その沈黙は、確かに共有されていた。


「これで、ほぼ完成だね」

結菜が、微笑んだ。


「うん。あとは、君のナレーションだけ」

湊斗が、画面を見つめながら言った。


「私の声、ちゃんと届くかな」

結菜の声は、風よりも細かった。


「届くよ。きっと、誰かの心に」

陽翔が、缶コーヒーを差し出した。


「科学って、こんなに優しかったっけ」

結菜が、缶を受け取りながら言った。


「優しさも、科学の一部だよ」

大翔が、静かに答えた。


その夜、4人は何も決めずに、ただ空を見上げていた。

それだけで、十分だった。


---


翌朝。

湊斗は、研究室に結菜の姿がないことに気づいた。

スマホに、結菜の母親からの着信が入っていた。


「結菜が、今朝早く…容体が急変して、緊急入院しました」


その言葉は、湊斗の耳の奥で、何度も反響した。

手に持っていたUSBメモリが、床に落ちた。


---


碑文谷のアパート。

陽翔と大翔は、湊斗の報せを聞いて、言葉を失った。


「…昨日、あんなに元気だったのに」

陽翔が呟いた。


「命って、こんなに急に揺れるのか」

大翔が、ホワイトボードの「Project: 命の輪郭」を見つめた。


「でも、俺たちが創ったものは、結菜の“今”を残してる」

湊斗が、USBメモリを握りしめた。


「だったら、届けよう。彼女に。今すぐ」

陽翔が立ち上がった。


---


病室。

結菜は、酸素マスクをつけていた。

目を閉じていたが、眉間に少しだけ力が入っていた。


湊斗は、ノートPCをベッド脇に置いた。

スクリーンに、結菜の世界が映し出された。


風の音。光の粒。沈黙の重さ。

それらが、病室の静けさに溶けていった。


結菜のまぶたが、わずかに震えた。

その震えが、命の輪郭を描いていた。


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