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カトゥオール シアンティフク 11  作者: 双鶴


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11/14

11話

むさ大・メディア工学研究室。

スクリーンには、結菜が描いた光のスケッチが映っていた。

その光は、どこか不安定で、でも確かに美しかった。


湊斗は、編集ソフトの前で手を止めていた。

「この光の揺れ、どこまで“現実”に近づけるべきか…」

彼の声は、誰にも聞こえないほど小さかった。


科学者としての自分は、正確さを求めた。

でも、今はそれだけでは足りなかった。

結菜の“感覚”を、どうすれば映像にできるのか。

その問いが、彼の中で揺れていた。


---


陽翔は、音響設計の波形を見つめていた。

「鼓動の音を、どこまで“静か”にできるか」

彼は、結菜の心音を録音したファイルを何度も再生していた。


「これは、命の音だ」

そう思うたびに、胸が締めつけられた。

でも、涙は流さなかった。

代わりに、音を削り、重ね、包み込んだ。


---


大翔は、ナレーション原稿の前でペンを止めていた。

「言葉が、軽くなってはいけない」

彼は、何度も書いては消した。


「命の重さを、言葉で伝えるなんて、おこがましいかもしれない」

でも、伝えなければ、結菜の“今”は誰にも届かない。

その葛藤が、彼の手を震わせた。


---


奥沢のアパート。

結菜は、4人の作業ログを静かに読んでいた。

湊斗の迷い、陽翔の沈黙、大翔の言葉の重さ。

すべてが、彼女の胸に届いていた。


「みんな、私のために、こんなにも…」

結菜は、ノートの余白にそっと書いた。


「私は、彼らの“創る勇気”に支えられている。

だから、私は“生きる勇気”を返したい」


---


翌日、研究室。

結菜が、そっと湊斗の肩に手を置いた。


「ねえ、湊斗。光の揺れは、揺れてていいと思う」

湊斗は、驚いたように彼女を見た。


「私の命も、揺れてるから。

でも、それでも綺麗だって、思ってほしいの」


湊斗は、ゆっくりと頷いた。

その頷きは、たぶん赦しだった。


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