10話
むさ大のメディア工学研究室。
スクリーンに、結菜のスケッチが映し出されていた。
光の粒子が、風に揺れる木々の間を通り抜けていた。
「これが、結菜の“見えている世界”」
湊斗が、プロジェクターの前に立って言った。
「命の大切さを、どう伝える?」
陽翔が、ホワイトボードに問いを書いた。
「病と向き合う勇気。寄り添う覚悟。
そして、これからの医療への決意」
大翔が、静かに答えた。
結菜は、椅子に座りながら、4人のやりとりを見つめていた。
「私の病は、たぶん“観測された痛み”になった。
でも、それを“共有された希望”に変えたい」
湊斗は、頷いた。
「科学は、命を測るだけじゃない。
命を守るために、創ることもできる」
陽翔が、プロジェクト名を書き直した。
《Project: 命の輪郭》
4人は、黙ってスクリーンを見つめた。
そこには、結菜の視点で描かれた世界が広がっていた。
風の音、光の粒、沈黙の重さ。
すべてが、命の証だった。
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奥沢のアパート。
結菜は、ノートの余白に言葉を綴っていた。
「命の輪郭。創造の始まり。
私の病は、たぶん誰かの希望になる。
湊斗の沈黙は、たぶん未来だった」
窓の外で、風が優しく吹いていた。
その風が、スクリーンの中の世界と、現実をつないでいた。




