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カトゥオール シアンティフク 11  作者: 双鶴


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1話

春の風が、むさしの科学大学の銀杏並木を揺らしていた。

風は西から吹いていた。偏西風。季節の境目を、静かに告げる風。


湊斗は、研究棟の階段に腰掛けていた。

隣には結菜。ノートを閉じる音が、風に溶けた。


「今日の風、偏西風だね」

結菜が、空を見上げながら言った。


「どうしてわかるの?」

湊斗は、問いながらも答えを知っていた。


「空の色が、少しだけ西に傾いてる」

結菜の声は、風よりも静かだった。


湊斗は、何も言わずに頷いた。

2人の間に、風だけが通り過ぎていった。


---


碑文谷のアパートでは、陽翔がコーヒーを淹れていた。

「湊斗、今日も結菜と昼休みか?」

大翔が、論文のPDFをスクロールしながら聞く。


「たぶん。あいつら、言葉少ないけど、通じ合ってるよな」

陽翔が笑う。


「お似合いの2人だ」

大翔が呟く。


「俺らは兄弟か」

陽翔が肩をすくめる。


「それ、悪くないと思う」

大翔が静かに言った。


---


奥沢のアパートでは、結菜がノートの余白に言葉を綴っていた。

「偏西風。春の境目。湊斗の沈黙は、たぶん肯定だった」


窓の外で、風がカーテンを揺らした。


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