7話
東雲由紀殺人未遂事件から早2年
東雲零は4歳になっていた。
「……」
とある日の明るい朝、空を見上げていた幼き子供の姿が縁側にいた。
輝く銀髪、満月のような目。それは神々しい外見を持つ幼児、東雲零。
現在、彼は1人だけではなく、自分より小さい子供と一緒にいた。
「しゅごい〜!あかる〜い」
黒髪黒目と一般的な日本人の外見を持つ男の子は零の横に座っていた。
彼の名前は東雲優。零の二つ下の弟であり、実の兄弟。外見が零に似ていないのは優の外見の遺伝は父親である当主の両親の外見から遺伝している。
突然変異のアルビノである当主の両親、彼らの祖父母は日本人らしい黒髪黒目の外見だった。
祖父母に遺伝しているとは優もおろか零ですら知らない話である。
自分とは違う外見をしている弟、零は自分たちと違う優の外見に抵抗はなかった。
凶星に出会っている。凶星は黒髪の男であるため、兄に似たんだなとしか優の外見に対して感じたことはそれしかなかった。
「ああ、そうだな」
弟の頭を撫ぜて微笑ましく笑う零。
2人は空を見上げていた。
(あれから2年か……)
当時の記憶はまだ幼い零ですら覚えているほどの厄災だった。
未だに彼女ーー東雲由紀は目を覚ましていない。何年も経った今でもその姿は当時と違って成長をしている。
それでもなお、目を覚ましていないのは彼女の体に刃物が刺さったことによるダメージが大きすぎたこと。
内臓や神経がひどく損傷していたことも影響していた。完全に回復しても血などは戻ることはない。
(……由紀姉ちゃん、今どんな夢を見てるんだろう。目を覚ましたら、またあの庭を一緒に歩けるだろうか……)
あと、何年起きるのかはまだ不明だが母ーーエリー・東雲からの言葉を信じて前に進んでいる。
「あっ!零ちゃんいた!」
零に似た外見を持つ少女ー東雲愛香。零の二つ上の姉だ。
「ゲッ!姉さん」
顔を顰め、逃げようとする零を一瞬にして捕まえる。能力による力なのか零が逃げようとしてもすぐに捕まえられる。
「零ちゃん〜」
「ええい!抱きつくな!」
対抗しようと力づくに離れようとするが愛香の力に負ける。
2年の時間で零は成長していたが流石に体が自分より大きい姉には負ける。逃げようとして暴れても無駄なのだ。
「わお〜しゅごい」
「何がすごいだ。いい加減離れてくれ」
「嫌!一生離れたくない!」
「ざけんな。離れろって!ええい」
一瞬にして消えた零。零が消えたことに愛香は不満な顔をする。
「瞬間移動、ずるい!」
「いなくなっちゃった……どこにいっちゃんたん?」
優は首を傾げた。
_____
その頃、別の場所では
「久しぶりだね。兄さん」
「ああ、久しぶりだな」
東雲家の屋敷とは別の屋敷で2人は会っていた。
1人は黒髪目を閉じている男ー東雲凶星ーいや、婿入りを果たしているため
御影凶星
そんな彼の話し相手になってくれる人物は少ない。その中で実の家族と呼べる人物は零たち以外にいる。
紫髪に少し緑が入り、金眼の女性
「由良奈」
東雲由良奈ーいや、結婚し、嫁入りしているため名前は氷室由良奈と改名している。
彼女は凶星の妹であり、零たちの姉。凶星とは一つ下で年の近い兄妹。
「ふふっ…最近は元気よ。娘がようやく、猪を倒したの。嬉しいわ」
「……なっ何を言っているんだ…猪を倒した?まだ、お前の子は4歳だろう?それなのに、猪を倒しただと?何か能力でも使用したのか?」
由良奈の娘が猪を倒したことに凶星は驚く。何を言っているんだと言っているように由良奈からの話はあまりにも想像つかないこと。
いくらなんでも4歳の幼い子供が猪を倒すことなんてできない
能力を得たからと猪を倒すことは普通にできない。いや、出来ない方が正しい。
ただ、由良奈は能力を使わずとも熊を倒す力を持っているパワー系女子。
美しく、美女と呼べる外見とは想像つかない力を持っているのは事実。彼女の"娘"ならばできてもおかしくない。
「予想以上に成長しているようだな……俺の双子たちはそんなことはできん。ギフデットの息子は頭はかなりいいが娘は力が強い」
ギフテッドとは、平均より著しく高い知的能力を指す。
彼の息子はそのギフデットの特性を持つ男の子。
娘の方は平均的な知能能力ではあるが力の成長が著しく高い。
「あら、あなたの双子の姉弟もいい感じに成長しているのね。」
「ああ、姉の方はすでに俺を半殺しするくらいには成長している」
「…嘘でしょ?」
凶星の口から自分を半殺しすることができると言う言葉を聞いて真実なのか疑いたくなる。
彼の強さを知っている由良奈だからこそ、疑いの目を凶星に対してすることができる。
「お前の娘でも猪を倒すことができるんだ。俺を半殺しできる娘がいても不思議ではないだろう?」
「そんなわけがないじゃない…いくらなんでも貴方を半殺しできる子供が存在するだけでも恐ろしいわよ。貴方、鈍ったの?」
「いや、衰えてはいない。まだ、24だぞ。あのクソ野郎ならまだしも俺は衰えない」
「人間に衰えは存在するわよ。それにあのクソの話はしないでくれるかしら?単語だけでも吐き気するわ…あんな存在、ささっと居なくなればいいのに……」
「……今でもできるが今やるべきことではない。零も愛香も能力を発現した」
「!愛香も?」
17歳下の妹が能力を発現していることに驚く。19歳下の零が能力を発現していることは2年前に聞いているから驚くことではないが愛香も能力を発現しているならば
「あいつがまた命を狙うわよ。双葉たちのように殺されるわけにはいかない。なんとかしないと……やっぱり私が「お前がその業を背負わせるわけにはいかない」!でも…!」
由良奈は凶星の方を掴み、力強く握る。
「あんなことを何度も体験したくない。あんな幼い子供たちが恐怖で寝ることなんてできない空間に居させる訳にはいかないのよ!」
「ああ、分かっている」
「何が「ああ、分かっている」なのよ!何度も救えなかった貴方がそんなことを言える立場じゃない!」
「……」
由良奈は涙を溢す。目から涙が溢れ、凶星を睨む。
「これ以上…家族を失いたくないの…!」
「由良奈…」
彼女、由良奈は既に最愛の旦那を亡くしている。3年前にとある事件で亡くしていた。
それは27年前、彼らの父親が目の前で両親と兄弟、自分以外の家族を失った最悪な事件と同じように
由良奈の旦那は何者かによって殺されてしまった。愛する家族を、愛する人を失ってしまった。
愛する人を失った経験のない凶星が愛する人を失った由良奈に反論することはできない。
失った残された人間の悲しみを知る凶星でも愛し合い、共に歩む人を失ったことはない。
「だから、もう、あの子たちに何も失わせないで」
「ああ、俺がやる」
その言葉には覚悟があった。
だが、あの日交わした約束が、果たせなかったことを
数週間後、また、地獄を連れてくることになるとも知らずに。
どうも、ヨウです。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、評価(☆☆☆☆☆)やブックマークをしてもらえると励みになります。
感想も大歓迎です! いただいた声が、今後の創作の大きな力になります。
次回も楽しんでいただけるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!
それではまた次回で!