23話
「……猫?」
帰ってきたエリーを見た愛香はなぜか猫がいたことに困惑していた。
「猫じゃないわ。私の実家のペットで聖獣――神の加護を持つ存在、普通の動物とは違うのよ」
聖獣なんて聞いたこともない愛香は、まるで宇宙猫のようにきょとんとした顔で首を傾げた。
聖獣とは何か分かっていない愛香を見て微笑むエリー。
ただ、彼女も困惑しているところがある。それはどうして日本にいるってことだ。
この猫は日本にはいないはず、エリーの実家は日本ではなく、フランスであり、フランスから日本に来ていたことになる。
「どうやってここに来たの?」
『む?普通に飛んできただけだわ』
「しゃっ喋った!?」
愛香は驚愕していると猫は呆れる。
『私が話すくらい普通よ。聖獣を知らないなんてどう言う教育をしているの?エリー』
「ふふっ…日本に染まっているからかな…それにこの家に来るのは初めてじゃない。貴女」
『ふ〜ん、そうなのね』
猫は飛んで愛香に近づく。
『確かにこの子は貴女の子ね。貴女に似ている子。でも、性格はマシね』
「ちょっと、マシって何よ。マシって」
思ったより子供らしいと猫は笑っていると頬を膨らませるエリー。まるで親子の会話みたいな微笑ましい会話だった。
『貴女の子はこの子だけ?』
「違うわ、この子含めた8人がいて、上2人は結婚していて家から出ているの。孫もいるわ」
『……随分、子供が多いわね…あの2人の子なの?』
「何か文句を言いたげそうな顔をしているけど普通よ」
『普通じゃないわよ』
2人が会話していると愛香は屋敷の中に戻った。内容が分からないため着いて来れないので諦めた。愛香は零のところにでも行こうと考え、どこかへ行った。
『貴女の子は可愛いわね』
「?突然、褒めるなんて珍しいわね」
『ふん、貴女がおかしいだけよ。それに…大人になったわね』
「……」
猫から言われた言葉を聞いて無言になるエリー。その言葉には嬉しいと気持ちが溢れるがその反面、助けられなかった子供たちの顔を思い出してしまう。
「…大人…ね…」
自分ではなく、愛する子どもに救われた命。
自分は母親でありながら、ただ守られるだけの存在だった。
それが悔しくて、申し訳なくて、胸の奥がずっと冷たいままだった――。
『…何かあったようね。話聞くわよ』
何か察したのか猫は降りてどこかへ歩く。エリーも着いて来て、自分の部屋へ向かった。
そして、彼女は語った。日本に来てからの話を
たくさんの人を失い、愛する人は洗脳されていることを
犯人を捕まえようとしてもなかなか見つけることもできず、自分の家だけではなく、ほかの家でもたくさんの被害を出していることを
35年の分の過去を話した。
「……これが、私が35年、日本で歩んできた道なの……」
エリーは猫に話した。
『頑張ったわね、貴女は良くやったわ』
「よくやった…なんて思えないわよ…愛する子供たちを奪われた私が…こんなにも…」
嫌だった。頑張ったと認められることに
自分が好きな人を守れなかったことを
ようやく、失わなかった子供は自分ではなく、愛する子供のおかげで助かった。
でも、自分は何もできなかった。もっと、警戒したらよかった。もっと、近くで守れたらよかった。
こんなことになるならーたくさんの後悔を持って生活をしていた彼女にとって平和に幸せな家庭を過ごすことはできなかった。
幸せな家庭なのは何なのか分からなくなってしまった。
『理想を現実に作り上げることなんてできないわよ』
「……」
『できないと言っているんじゃない。でも、必ずしもできるなんてことはないのよ。』
『現実に理想を言っていても口だけになってできないのはあの子たちも同じ、貴女の両親は幸せな家庭を築くまでに多くの出来事があったわ。』
「……そうなの?」
両親の過去はあんまり知らない。
2人の仲の良い夫婦生活を見てきたエリーは羨ましいと思った。でも、その生活は簡単に手に入れられなかったんだと知る。
両親にどんな試練があったのかどんな過酷な出来事があったのかも知らない。知らないことばかり…
『何度も苦難を乗り換えて手に入れた。それは貴女にもできることじゃない?』
「そうかな……」
不安になるも、きっと大丈夫と心を落ち着かせる。
「…そうね、まだ、終わってなんかいないもの」
エリーはそっと、猫の毛並みに触れながら、小さく笑った。
_____
とある屋敷の部屋では
「……」
女の子が本を読んでいた。その本には恋愛についての内容が書かれていた。お見合い話からの結婚という流れで幸せになっていく話。
女の子は天井を見上げる。
「お見合い…」
床を見て紙を見る。その紙に書いてある内容には東雲家の次期当主とのお見合い話について書かれていた。
「東雲家…」
彼女は東雲家についてそこまで詳しくない。だが、お見合いする話という話は3年前から聞いていた。
「次期当主…どんな人なんだろう…」
彼女と同い年の子とのお見合い。どんな人なのかと妄想を膨らませながら恋愛の本を読むであった。
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