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怪々呪殺  作者: ヨウ
第二章 新たな厄災と出会い
14/58

14話 妹子天獄の過去

今回はいつもより長いです。

「親友になったわけだがどうして俺と親友になりたがっていたんだ?」


親友になった日、零はゴロゴロと日向ごっこをして同じく、ゴロゴロと横になっている天獄に質問した。


どうして自分を親友として呼ぼうと考えたのか、彼には理解できなかった。


彼の疑問を答えるように天獄は少し黙るも答える。


「……そうだね、どうして親友になりたかったのか…」


天獄は悲しい目をして零を見る。


天獄は少し微笑む。


「ふっ…親友(ブラザー)、君は俺と似ているからさ」


「似ている?」


零は首を傾げると天獄は続ける。


「君は誰かに期待を寄せられている。次期当主としての宿命を生まれながら背負う運命として生まれた。そうだろ?」


「……知っているのか」


自分が次期当主として育てられていることを天獄が知っていることに特に驚くようなことはなかった。


生まれながら次期当主は零だ!と当主が言っているため、東雲家の次期当主の噂は広まっている。


だから、天獄が知っていても不思議ではない。


だが、未来の当主として育てられている零が天獄と同じと言うことは彼もまた、投手として育てられているのに近い環境で育ってきたことになる。


「俺も同じなんだ。一族に期待され、神人として扱われる。そういう存在として俺は生まれた」


「……俺と…同じか…神人?」


零は神人という言葉に首を傾げる。


次期当主として育てられただけではないのは些細な違いであるが立場は同じ、神人と言えば生まれながらにして神に近い存在と崇められるとして扱われる。


零はそこまで詳しくないが妹子家というのは神に使える一族というより、妹子家の男子が神に近い存在として生まれたことによって崇拝されるような一族に変わったと言われている。


その原因こそが妹子天獄なんだろう。


「今から話すのは実際に起きた俺の”過去”の話。長いかもしれないけど聞いてくれ。……本当は誰にも話すつもりなかったけど、君になら話してもいい気がするんだ」


天獄は話す。


自分の過去を


_____


――妹子天獄。

生まれながらにして「神人」と呼ばれ、世界の異端として育てられた少年。


「おおっ……百合香…生まれたぞ…!」


「ああ…なんて美しい…!」


彼が生まれた時、彼の両親は驚愕した。それと同時に彼の姿に魅了した。


彼の外見が両親に似ていないーそんなことはなかった。


彼の両親は彼とそっくりな外見をしている。


彼らが驚いたのは彼の外見ではない。


彼から感じる溢れんばかりに濃厚な神聖力と霊力。


それは普通の人間では制御できないほどに多く、神か?と人外と呼べるレベルに多くエネルギーを保有していた。


彼らは自分たちでは制御できない溢れんばかりの力を前に魅了した。


人ではなく、神なのでは?と見惚れる。


「ああ…なんて…素晴らしい…!なんて力!我が妹子家が神に祝福されている!こんな素晴らしいことがあるか?いや、ない!」


父親は叫び、赤ん坊を持ち上げる。


「お前の力は天国にも地獄にも存在できる神のような力だ…!お前の名前は天獄。天国と地獄でも縛られない神人の名だ!」


「……素晴らしいわ…!(いや、天獄って何よ)」


母親は天獄と言う名前に対して呆れた顔をすると微笑ましい顔をして赤ん坊とその父親の姿を見ていた。


それから、彼の存在は妹子一族にとって大きな希望として扱われた。


神のような存在として育てられた彼にとって何をしても手に入れられる素晴らしい環境だった。


赤ん坊から少しずつ少しずつ毎日成長していく彼は僅か2歳の幼稚な肉体となった頃、思うようなことがあった。


欲しいものがあった。


何か物に対して欲しいわけではない。


いつでも手に入れられるような物でもない。


それは自分と同じ立場として話し合える人。


彼は精神的な成長が早すぎた。


それ故に、欲しいモノに対して何が欲しいのかはすぐに飽きてしまった。


物を与えられても、新たな使用人を与えられても続かない。


好奇心が高いが飽きるのが早すぎたのだ。


「……」


欲しい物に対する閃きと好奇心は高い。


何日も何ヶ月も大事にしている物はある。


だが、それでも新しく手に入れた物に対して使い続けることはなかった。


そんな彼にある出来事が起きてしまう。


それは彼の人生にとって大きく狂わせることになる。


彼の運命を大きく狂わせる最悪な日が来てしまったのだ。


_____


天獄が誕生してから2年過ぎたある日のこと


「ママが来たわよ〜」


「うん」


天獄は母と一緒歩いていた。庭で歩いているだけだったが母が楽しそうな顔をしているため、天獄も楽しそうな顔をしている。


「なんとも笑顔のない顔ね」


「…笑顔じゃないと駄目?」


天獄は首を傾げる。自分が笑顔になったことは数えきれないほどにあるが母がどうして笑顔のない顔なのかと言われるのか分からなかった。


「うっうん〜…笑顔の方が私は嬉しいって言っても天獄ちゃんにはまだ分からないか」


「分からない?」


何故、笑顔の方が嬉しいのか彼には分からなかった。

無表情で過ごしているわけではない。


表情が豊かな方がいいのか?と疑問を抱く。


「天獄ちゃん。人はね、笑った方が人生楽しくなるものなんだよ。」


「どんなに理不尽な現実があろうと、どんなに残酷な現実が待っているとしても楽しく笑ったら皆、前に進むことができる。"笑顔"は誰かを前に押すことができる愛なの」


「……ふ〜ん、そうなんだ…」


天獄はよく分からなかった。同世代よりも精神が早く成長しても理解できないことがまた一つ生まれた。


笑顔こそが愛なんて彼には分からなかった。


「だからね、天獄ちゃんには誰かを導くような人になって欲しいの」


「そんなことできるとは思えない」


天獄はできないと思った。なんでも物を手に入れられる彼にとって誰かを導くような人にはなれない。


相手との立場が違いすぎるのだ。実の両親ですら目の前には壁があるように見える。


家族ですら壁があるように見える天獄が他者を導くような存在にならなんてできないと諦めている。


「諦めるのは早いね…でも、今じゃなくてもいいんだよ?いつかその時までに待っていればいいの。必ず、自分が導いて正しい道を歩もうとする人はいる。それまでに待てばいいの」


「……」


「お母さんとの約束よ」


天獄は母と約束した。


そんな時だった。後ろに何か嫌な予感がした。


天獄はほんのわずかに、頬をかすめる冷たい風を感じた。


気のせいか、母の笑顔が一瞬揺らいだようにも見えた。


母は何かに気づいて咄嗟に天獄を抱き寄せ、自身を守るように"後ろ"に背中を見せた。


その時ーー


母は刃物に刺された


「……え?」


天獄は何が起きたのか理解できなかった。何故、突然母が自分を抱いたのかも理解できなかった。


血のにおい。温かいはずの腕が急に重く、冷たくなっていく。

天獄は、心が固まっていくのを感じた。


「チックソが」


聞いたことのない声が母にもう一度刃物で刺す。


母親の血が天獄の顔に付着する。

母の血が付着したことで何が起きたのか理解できた。

それは今、自分と母が誰かに襲われていることを


思わず叫びそうになった。怖かったからではない。誰かに助けを求めたかった。



だが、次、彼が見たのは



自分が侵入者を殺した後だった。


突然、場所が変わったと困惑しそうになったがどうしてこうなったのか全く記憶はなかった。


覚えていない一瞬の時間で侵入者を殺した。

初めてだった。誰かを殺そうと動いたことを


怒りが露わにして何かをしたことを


この時、彼は知らなかった。


自身の能力が発動していたことを


自身の能力が『慈愛幻滅』という力であることを


自身の能力が発現したことを


…天獄は知らなかった。


その力は“愛する者の死”と引き換えに発動する――

皮肉なまでに、母の愛が引き金だったことを。


「……」


何も考えられなかった。自分がどうしてこうなったのかも分からなかった。


「…て…天獄…ちゃん…」


母は天獄を抱きつく。自身が限界を迎えるのが近くても天獄を優先した。


「ママ…?」


「…ごめんね。貴方のことを…もう…ママは…一緒に居られない…」


「……なんで…なんで…?」


母の容態が危険であることを天獄は気づいた。背中からどんどん血が流れて血の池ができていることを


気づきたくなかった。これが"最後"であることを


「貴方が…どれほど…落ちても…堕ちても…私は天獄ちゃんを…ずっと…"愛している"……」


目を閉じる母。


この時、天獄が見える世界が狭くなった。


_____


母の葬式後、天獄は笑うようになった。


母の残した言葉通りにするために笑うようになった。


天獄が変化したことを周りの大人たちは気色悪いとは思わなかった。


それは彼の母が彼にそう教えたから


母の性格を知っている大人たちは彼を批判しなかった。


だが、1人、1人だけ、ただ、1人だけ


彼の変化をよく思わない人がいた。



_____


葬式から時間が過ぎた。


何日、何週間過ぎたのか分からない


「……クソ…!」


酒の瓶に入っている酒を全て飲み干し、新しい酒を飲むのは天獄の父親だった。


「当主様、これ以上はお体に…」


使用人たちは当主を心配していた。


彼の最愛の妻である天獄の母の死後から天国の父は普段飲まないお酒を飲むようになった。


原因は妻の死。


彼にとって妻は大事な大事な愛する人だった。


「うるせえ!酒を飲まないとやってられねえ…!」


ふらふらと体が倒れそうになるほどに飲んでいる彼は人が変わったように堕ちていった。


顔は死んでいるような人みたいな生気のない。顔は赤いがそれは酒を飲んだ影響に過ぎない。


「…百合香……なんでお前が死んで、俺が残して置いてしまったんだ…!」


「アイツに…アイツ(天獄)にどう顔向けすりゃいいんだよ……」


『……』


使用人たちは何も言えなかった。家族を失った妹子家当主の気持ちは痛いほどに理解できる。


「俺はもう天獄には会わない。今の俺を見てもあいつを心痛めるようなことしかできない…当主命令だ。天獄のことを"お前ら"に任せる。」


「それは…!親の責務から逃げるのですか!」


使用人の1人が叫ぶと当主は笑う。あまりにも身勝手。

使用人たちは当主の"最後の命令"に反対した。


だが、既に遅かった…


「俺はこの先、長くない。元々アルコールに弱いからな…それに、天獄が1人にならないようにするのが親の責務と言ってもあいつには必ず、いつか心から話せる友人はできる。その時まで生きられるのかは分からん」


『……』


顔色の悪い当主。彼の顔は生気のない顔から意思強い顔へと変わった。


「……あいつのことを頼む……」


倒れる当主。


『当主様!?』


使用人たちはすぐに運んで治療を受けるために急ぎでやったが後に死亡した。


妹子家当主の死因は急性アルコール中毒だった。



こうして妹子天獄は僅か2歳で両親を失う。


2人が願った遺言通りにするため、2年、家族がいないこの屋敷で暮らした。


彼を襲い、母を殺した侵入者については"誰"かに支配されているような残骸が残っていたことから外部の人間が天獄を排除するために洗脳したと考えられる。


その"誰"かは別の家で当主を洗脳しているのは言うまでもない…


それが“誰か”の仕業であることに、妹子家の者たちはすでに気づいていた。

だがその名前を出す者は、誰一人としていなかった。


______


現在


「ーーってことがあったのさ。似ているでしょ?俺たち」


「…選択の間違いでお前と同じ道に辿っていたかもな」


零は天獄の過去を聞いてなんとも言えない顔になった。


姉たちを父によって殺されたのならば同じ道に辿っていたかもしれない。


天獄の精神(メンタル)が高いから今でも笑うようにできている。


だが、自分だったできなかっただろうと零は考える。

自分が天獄のようなことをできるのか、それはできない。できないと考えてからの結論でそれだ。


天獄がいかに凄いのか分かる。


「どう?俺は君にとって仲良くなれる存在?」


仲良くなれるのか、今の過去を聞いて逃げるのか。


その答えはーーー


「なれる。どんな過去があろうとお前は悪くない。今と過去で毛嫌いするようなことじゃないだろ」


「…!」


「お前の場合はな」


零はそう言うと空を見上げた。


「俺とお前は同じなんだろう?親友」


「ふふっ…あはは!いいね!流石、親友(ブラザー)だよ」


2人は笑い合った。


「過去ごと受け止めるのが、親友(ブラザー)だろ」

どうも、ヨウです。

ここまで読んでくださりありがとうございます!


今回で第2章が終了し、次回からはいよいよ第3章に突入します!

物語もさらに深く、激しく、そしてドラマチックになっていきますので、引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。


少しでも面白いと思っていただけたら、評価(☆☆☆☆☆)やブックマークをしてもらえると励みになります。


感想も大歓迎です! いただいた声が、今後の創作の大きな力になります。


次回も楽しんでいただけるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!


それではまた次回で!

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