黒猫ツバキとタイムマシン(エイプリルフール・ネタ)
登場キャラ紹介
コンデッサ……ボロノナーレ王国に住む、有能な魔女。20代。赤い髪の美人さん。
ツバキ……コンデッサの使い魔。言葉を話せる、メスの黒猫。まだ成猫ではない。ツッコミが鋭い。コンデッサを「ご主人様」と呼ぶ。
チリーナ……伯爵令嬢にして魔女高等学校2年生。コンデッサの元教え子。青い髪をツインテールにしている。コンデッサのことを「お姉様」と呼び、過剰に慕っている。
※注――コンデッサたちが暮らしている世界は、現代より数億年経ったあとの地球です。現代の地球は、コンデッサたちの時代の人々からは「古代世界」または「旧世界」と言われています。
ここは、魔女コンデッサのお家。
ツバキとチリーナへ、コンデッサは威張りながら宣言した。
「タイムマシンを発明することに成功したぞ!」
「お姉様、すごいですわ!」
「……タイムマシンって、ニャニ?」
「《未来や過去へ行ける乗り物》を、そのように呼ぶのさ。ツバキ」
「さすがは、お姉様ですわ! 〝時間を自由に移動できる魔法〟は、未だに、どの魔女も実現できてはいませんでしたのに」
「私がチョット頑張ったら、タイムマシンなど、あっという間に完成してしまったぞ」
「ご主人様、調子に乗りすぎニャ」
「ただ1つ残念なのは、過去へ行くのは不可能で、未来にしか行けないことなんだが……」
「それでも、充分に偉大な発明ですわ!」
「まぁな」
「ご主人様。肝心のタイムマシンは何処にあるニョ?」
「え? 何を言っているんだ、ツバキ。タイムマシンは、お前の目の前にあるじゃないか?」
「……ただの大きい箱に見えるニャン」
「そうだ。この箱が、タイムマシンなのさ」
「にゅ?」
「この箱の中に入って1分経つと、1分後の未来に行けるんだ」
「……にゃん?」
「更に箱の中に1時間居て、外に出ると、そこは1時間後の未来になっているんだ。どうだ? これこそ、まさにタイムマシン! 納得したか? ツバキ」
「ニャ~。そんなの当たり前ニャン。冗談を口にするのは、ホドホドにするニャ。ご主人様」
「はっはっは。スマナイ。今日は4月1日だろ? 旧世界では《エイプリルフール》と言って『嘘をついても許される日』とされていたんだよ。それで、悪ふざけをしてしまった。私のジョーク、楽しんでもらえたかな?」
「ニャン。それなりに面白くはあったけど……チリーニャさんは、さっきから、どうして黙っているニョ?」
「そうだぞ、チリーナ。ちょっとした冗談のつもりだったんだ。気を悪くしたのなら、謝るよ」
「…………素晴らしいですわ!」
「え?」
「ニャ?」
「1分経ったら1分後の未来へ行けて、1時間経ったら1時間後の未来へ行ける。正真正銘の《時間移動装置》! お姉様にしか出来ない、天才的な発明ですわ!」
「え? え?」
「ニャン?」
「私、このお姉様の偉業を、魔女の皆様に伝えてきます! 大々的に!」
「あ、待て! チリーナ!」
「チリーニャさん、家の外へ飛び出していってしまったニャ」
「ど、どうしよう? ツバキ。あのままチリーナが話をしたら、まるで私が馬鹿みたいじゃないか!」
「これが本当の《4月馬鹿》ニャンね」
「そのオチは嬉しくない~!」
エイプリルフールで嘘をついたり、ジョークを口にするときは、信じやすい人を相手にする場合、気を付けましょう……。
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