表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/400

 ぼくは気分転換に窓の外に目を向けた。窓の外には雪が降っていた。どうやらこの世界では冬はまだ終わっていないらしい。先ほど廊下で考えたぼくの予想はもしかしたら当たっているのかもしれなかった。ぼくはそれを確認すると丸い瞳を細めてから、深いため息をついて、それからぼくは再び死体のような風の寝顔に視線を戻した。

 ……ふう。ふうか。この女の子はふうという名前なのか。ぼくは風という言葉を頭の中で何回か声に出して繰り返した。

 それからぼくは風がちゃんと生きているのか確かめてみるために風の頬をぴしぴしと前足で叩いてみた。するとかすかにだけど、風はきちんと反応を示した。風はちゃんと生きていた。死体のように見えるだけで、本当の死体ではなかったのだ。

 ぼくはそれから死体のような風の寝顔を眺めて、それに飽きると窓の外に降る雪を見る、という作業を始めた。すると初めはろうそくのようだと思った風の白い顔は、窓の外に降る雪と交互に眺めていたせいか、だんだんとろうそくというよりは雪に似ているように思えてきた。外に降る雪と風の白い顔がぼくの意識の中で重なり合って、それは次第にぼくの中で溶け出した。雪はいつまでも窓の外で降り続いていた。そして風も、そのまま一度も目覚めることなく、その夜の間は、ずっと眠り続けたままだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ