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なんの行動もとることができなくなって、まるで魔法で石になったみたいに固まっているぼくを見て、その綺麗な女の人はくすっと笑った。綺麗な女の人が笑うと、ただそれだけで世界に光が灯されたように見えた。その光に照らされて、ぼくにかかっていた魔法が解けたようだった。いや、もしかしたらこの瞬間に魔法にかかったのかもしれなかった。とにかくぼくの体はその瞬間、金縛りから解放されて、意思と熱を取り戻し、その結果、やがて自分の顔が熱くほてり、ほほの色が赤くなることをぼくは感じた。
綺麗な女の人はぼくの目をじっと見つめた。ぼくもその綺麗な女の人の顔をじっと見つめ返した。失礼だとは思ったのだけど、どうしても目をそらすことができなかった。綺麗な女の人はぼくの言葉を待っているように見えた。だけどぼくはなにも言葉を話せなかった。
古風な客車の天井にある小さなランプの明かりがちかちかと点滅した。その光に綺麗な女の人の白い顔が照らされていた。綺麗な女の人の足が一歩、前に出た。それからもう一歩、もう一歩。綺麗な女の人はぼくの目の前までそんな風にゆっくりと移動した。ぼくはなにもすることができなかった。その綺麗な女の人から逃れることができなかった。……、心臓がとてもどきどきしていた。
「きみはどこから来たの?」と綺麗な女の人が言った。ぼくは綺麗な女の人になにも言葉を返すことができなかった。緊張しているぼくを見て綺麗な女の人はくすっと小さく上品な仕草で笑った。




